130.「その後、お前は・・・」
「その後、お前は、
すぐさま、再び病院に預け返された。
このまま家に置いておくのは危険だ・・・と、判断してのことだった。
そして、
母さんの弔問に来た人たちには、先程の父さんのことは伏せたままにして、
通夜と葬式を、何とか無事に済ませた」
「日暮れどき。
タクシーに乗り込み、帰っていく坊さんを、
門の前で、みんなでお見送りした。
家に戻ると、父さんには寝室に籠ってもらって、
じいちゃんたちは、座敷にある座卓の周りに集まった。
向こうのご両親が、
座卓の向かい側で、じいちゃんたちに頭を下げ、
父さんのしたことを改めて詫びたあと、
お前を、
今後、誰がどうやって育てていくか・・・、
5人で、そういう話を始めた。
誰が・・・という部分は、
すぐに、じいちゃんたちに決まった。
今の父さんの近くには、とてもじゃないが住まわせられない・・・、
向こうのご両親も、こちらも、
そういった結論で、
それで、ウチが引き取ることになった。
続いて、お前の養育費に話が及んだ。
向こうのご両親が、
全額、父さんに面倒を見させる・・・と言ってきた。
じいちゃんたちは、
しかし、
3人で少し話し合った上で、その申し出を断った。
必要ない、と言った。
向こうのご両親は、すぐに察した。
そんなこと言わんでくれ!、出させてやってくれ!。
あの子も、
突然、自分の奥さんに死なれちまって、
気が相当に滅入っちまって、ちょっとおかしくなっちまって、
それで、
きっと何かの間違いで、つい魔が差してやってしまっただけなんだ!。
本当は、あんな子じゃないんだ!。
信じてくれ!。
優しい、良い子なんだ!。
じいちゃんは、
でも、
父さんのやった行為を、絶対に許したくなかった。
お前を父さんの子ではなく、
母さんと、じいちゃんたちの子として育てるつもりだった。
お前を父さんの元に戻すつもりは、
そのときは、全く無かった」




