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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
127/292

127.「小学校1年か、もしかしたら2年のときだった」

「小学校1年か、もしかしたら2年のときだった」


「2月11日」


「母さんの命日」


「午前中に、親戚の人たちとお墓参りをした僕は、

 じいちゃんやばあちゃんと別れ、

 夜は、カシナ市にある叔父さんの家にいた」


「叔父さんは、母さんの弟で、

 お墓参りのあと、

 僕は、その叔父さんの車に乗せてもらって、

 叔父さんの家族と一緒に、カシナまで連れていってもらっていた」


「母さんの命日の日は、昔からずっとそうだった」


「夜は、叔父さんの家で過ごさせてもらって、

 そのまま1泊して、

 次の日、

 迎えに来てくれた僕のばあちゃんと一緒に、

 イナミ町にある僕の家へ、電車と新幹線で帰っていた」


「毎年、僕を叔父さんの家に預ける理由は、

 命日の午後になると大勢の人がウチに来て、色々とゴタゴタして騒がしいから・・・、

 ってことだった」




「それで、

 小学1年か2年の頃の、母さんの命日の夜、

 叔父さんの家に預けられていた僕は、ひとりで折り紙をしていたんだ」


「でも、

 途中で飽きてしまって、それでテレビを点けた」


「何かのドラマがやっていた」


「僕よりちょっと大きい、小学生くらいの男の子が、

 砂浜で、膝を抱えて泣いていた」


「どうして泣いてるのか、よく分からなかった。

 でも、

 そのまま観ているうちに、何となく分かってきた」


「どうやら、その子は、

 赤ん坊の頃、

 自分の母親に捨てられてしまったようだった」


「少し前に、それが分かってしまって、

 それで、

 砂浜で膝を抱えて、泣いているみたいだった」



「不意に、

 僕の胸の奥が、ギュウウ・・・って(しぼ)んだ」


「その、

 何て言ったら良いか、ちょっと難しいんだけど・・・、

 僕の心の中を、

 寒い風が、ヒュウウ・・・って吹き始めた」


「いつの間にか息が荒くなっていて、心臓もドキドキしていて、

 段々と苦しくなってきて、

 頭の中がグルグルしてきて、体がグラグラして、

 何が何だかよく分からなくなって、

 それで、

 僕、

 急いでリモコンを掴んで、テレビを消した」


「折り紙を適当に片付け、部屋を暗くして、

 すぐにお布団の中に潜り込んで、体を丸めた」


「もう、何も考えたくなかった」

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