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Summer Echo  作者: イワオウギ
III
108/304

106.夜

(よる)

(くら)(うみ)(そこ)を、月の(ひかり)(やさ)しく()らしています。


岩場(いわば)のカゲの、小さな赤い魚は、

いつの()にか、

スヤスヤと(ねむ)っていました。

無理(むり)もありません。

(たし)かに、

きょうは、

(ひる)ごろまで、ゆっくりと()ていましたが、

その(まえ)は、

何日(なんにち)もの(あいだ)(ねむ)っていなかったのです。

(あさ)(ひる)(よる)も、

ずうっと、ずうっと、()いていたのです。

(つか)れていました。

赤い魚は、(いわ)()りかかったまま、

スースーと小さな寝息(ねいき)をたてて、ぐっすり(ねむ)っていました。



ふいに、

(ちか)くが、ぽおっと(あか)るくなりました。


(うーん、むにゃむにゃ・・・。

 (あさ)かぁ。

 でも、まだ(ねむ)い・・・。

 もうちょっとだけ・・・)


赤い魚は、

そのまま、ウトウトしていましたが、

しかし、

やがて、自分(じぶん)見張(みは)っていたことを(おも)い出し、

(いそ)いで目を()けました。


(しまった、

 いつの()にか()ちゃって・・・え?)


赤い魚の正面(しょうめん)には、

()かりの()しこむ、(よる)(うみ)(ひろ)がっていました。

(あさ)ではありません。


赤い魚は、目をパチクリさせました。

そのまま、

うす(ぐら)(うみ)を、ぼーっと(なが)めていましたが、

しばらくして、ハッと気づきました。

海底(かいてい)の、この(あた)りだけ、

ほんのりと(あか)るくなっています。


そう()えば・・・と、赤い魚は(おも)い出してみます。

目をつぶって、ウトウトしていたときは、

(たし)か、もっと(あか)るかったはずです。

でも、

目を()けた瞬間(しゅんかん)(きゅう)(くら)くなりました。

すぐ目の(まえ)にいた、(あか)るい(なに)かが、

サッ・・・と、あわてて上に()げていったような、

そんな(かん)じでした。

赤い魚は、

(すこ)()()いて、自分(じぶん)の気を()()けてから、

(かお)を、ゆっくりと上へ()けていきました。



まっ白に(ひか)(かがや)く1ぴきの魚が、そこにいました。

(からだ)の大きさは、赤い魚と(おな)じくらい。

(たか)いところから、

海底(かいてい)にいる赤い魚を、じぃっと見ています。

いや、

正確(せいかく)には、本当(ほんとう)に見ているかはわかりません。

そのヒカリの魚(・・・・・)には、目が()いていませんでした。

でも、

目の()い、のっぺらぼうの(かお)を、

赤い魚の(ほう)に、まっすぐ()けていました。

赤い魚の様子(ようす)を、

上から、

用心(ようじん)(ぶか)く、うかがっているようでした。


(うみ)(そこ)にいる赤い魚も、

ヒカリの魚を、

そのまま(だま)って見上げていました。

2ひきの魚たちは、

そうして、

(すこ)しの(あいだ)(しず)かに()()っていました。

()かりの()しこむ(よる)(うみ)の、(たか)いところと(ひく)いところで、

おたがいに一言(ひとこと)もしゃべらず、

しばらくの(あいだ)

ただ、じぃっと()()っていました。



「あの・・・、ワタシ、

 きのう、ここで(たお)れてたんだけど、

 だれかが、海草(かいそう)()(とど)けてくれたみたいなの。

 あなた、

 それがだれか、()らないかしら?」

赤い魚は、勇気(ゆうき)を出して(たず)ねてみました。


ヒカリの魚は、それを()いた途端(とたん)

(かお)を、ぴょこっと小さく上げました。

それから、左にクルリと(まわ)り、

その(いきお)いのまま、

海底(かいてい)にいる赤い魚めがけて、一直線(いっちょくせん)に下りてきました。


赤い魚の、目の(まえ)()たヒカリの魚は、

その、

ぽおっと(あか)るい、のっぺらぼうの(かお)(ちか)づけ、

赤い魚の様子(ようす)を、

じぃっと、うかがっています。


赤い魚も、

自分(じぶん)のすぐ正面(しょうめん)の、ヒカリの魚の(かお)を、

(なに)()わずに見つめます。

ヒカリの魚は、

(すべ)てが、まっ白に(かがや)いていました。

(なに)もかもが、まっ白でした。

でも、ふしぎです。

ちっとも、まぶしくないのです。

(おだ)やかで、

とても(やさ)しい(ひかり)でした。


そうして、

ヒカリの魚の、まっ白な(かお)をぼーっと見ていると、

上の(ほう)から、

(くろ)くて(まる)い小さな(つぶ)が、ひとつ()ってきました。

(つぶ)は、

()かい()う2ひきの(かお)(あいだ)を、

音もなく、ゆっくりゆっくりと(しず)んでいき、

やがて、

海底(かいてい)の、サラサラとした(すな)の上に、

ポトリと()ちました。


「あ!、海草(かいそう)()!。

 あなたが()ってきてくれたの?」

赤い魚が、

(きゅう)に大きな(こえ)を出して、そう()うと、

ヒカリの魚は、(かお)をビクッと上げました。

すぐさま(うし)ろを()(かえ)り、大あわてで()げていき、

そのまま、岩場(いわば)のカゲに(かく)れてしまいました。


「あ、ごめんなさい・・・。

 ビックリさせるつもりはなかったんだけど、

 その、うれしくて・・・」

赤い魚が(あやま)ると、

ヒカリの魚は、

(いわ)カゲから、まっ白い(かお)だけを、

そうっと、のぞかせました。

そして、

しばらくの(あいだ)、じぃっと様子(ようす)をうかがって、

それから、

また赤い魚の(ちか)くに、ソロリソロリと(もど)ってきました。

赤い魚は、

今度(こんど)(おどろ)かせないよう、小さな(こえ)(たず)ねました。

「あの・・・、

 きのう、ワタシに海草(かいそう)()(とど)けてくれたのは、

 あなたなの?」


ヒカリの魚は、

(かお)をタテに()り、うなずきました。


「まぁ!、そうなの!。

 ありが・・・あ、ごめんなさい、

 また、大きな(こえ)を出しちゃった・・・。

 本当(ほんとう)に、ごめんなさい・・・」


(いわ)カゲから、まっ白い(かお)半分(はんぶん)だけ出し、

そうっと様子(ようす)をうかがっているヒカリの魚を見て、赤い魚は(あやま)りました。

ヒカリの魚は、

(すこ)ししてから、

ソロリソロリと、ふたたび(もど)ってきました。



「これ、

 ワタシのために、また()ってきてくれたの?」

砂地(すなち)の上に(ころ)がっている、ひと(つぶ)海草(かいそう)()を見て、

そう()いてみると、

ヒカリの魚は、

こくん・・・と、うなずきました。


「まぁ、ありがとう。

 さっそく()べさせてもらうね」

赤い魚は、そう()ってから、

口を海草(かいそう)()(ちか)づけていき、パクッと()べました。


「あぁ、おいしかった。

 ごちそうさま。どうもありがとう」

(れい)をあらためて()うと、

ヒカリの魚は、(かお)をちょっと上げて、

それから、

その()で左に、クルリと(まわ)りました。


「あなた、しゃべれないの?」

赤い魚が(たず)ねてみると、

ヒカリの魚は、口をパクパクと(うご)かし(はじ)めました。

でも、(なに)()こえませんでした。


「えっと、(こえ)が小さいのかなぁ・・・。

 ワタシには()こえないわ。

 もっと大きな(こえ)を出してみて」

赤い魚が、そう()うと、

ヒカリの魚は、

口を、よりいっそう大きく()けて、

よりいっそう(はげ)しく、パクパクと(うご)かしました。

でも、

やっぱり(なに)()こえません。


「ごめんなさい、

 あなたの(こえ)、ワタシには()こえないみたいなの・・・」


それを()いたヒカリの魚は、口を(うご)かすのをやめ、

(かお)を下に()けて、うなだれました。

ガッカリしたみたいです。


「あ、でもでも、

 あなたが()ってきてくれた海草(かいそう)()のおかげで、

 ワタシ、こんなに元気(げんき)になったの。

 ほら、見て見て」

そう()った赤い魚は、

()ビレで砂地(すなち)を、ポンポン・・・と、けとばしながら、

(あた)りをせっせと(およ)(まわ)りました。

ヒカリの魚は、

それを見ると(かお)(すこ)し上げ、

左に小さくクルリと(まわ)りました。

そして、

海底(かいてい)元気(げんき)よく(およ)(まわ)っている赤い魚のもとに、(いそ)いで(ちか)づいていき、

自分(じぶん)も、

その(まわ)りを、クルクルと(およ)(はじ)めました。


赤い魚は、(うれ)しくなりました。

サラサラとした白い砂地(すなち)を、よりいっそう(つよ)くけとばし、

ピョンピョンと()ねるようにして、(およ)(まわ)ります。

ヒカリの魚も、

赤い魚が()ねるのに()わせて、()いたり(しず)んだりをくり(かえ)し、

その(まわ)りを、

クルクル、クルクルと(およ)ぎました。



そうやって、

()かりの()しこむ、(うみ)(そこ)を、

しばらくの(あいだ)、2ひきで(およ)(まわ)っていると、

ヒカリの魚が、

ふいに、上の(ほう)(およ)いでいきました。

すぐに()まって、

それから、赤い魚の(ほう)()(かえ)ります。


()ねるのをやめ、(うご)きを()めていた赤い魚は、

そのヒカリの魚を、

(なに)()わずに、

(うみ)(そこ)で、じぃっと見上げています。


ヒカリの魚は、

やがて、

左に、クルリと小さく(まわ)りました。

そして、

()こうを()いて、ちょっとだけ(およ)いでいくと、

また、

赤い魚の(ほう)を、()(かえ)りました。

そのまま、

(たか)いところから、赤い魚の様子(ようす)をうかがっています。

赤い魚は、

(すこ)ししてから、口を(ひら)きました。

「あの・・・、

 ワタシ、あなたみたいに自由(じゆう)(およ)げないの・・・。

 ()ビレが、

 その・・・、ちょっと()けているから・・・」

(こえ)を小さくしていきながら、そう()った赤い魚は、

(かお)を下へ()けました。


ヒカリの魚は、(たか)いところで、

その赤い魚の様子(ようす)を、

じっと、うかがっていましたが、

しばらくすると、ふたたび海底(かいてい)へ下りていきました。

うなだれている赤い魚の、(からだ)(よこ)(およ)いでいくと、

その()ビレに、

自分(じぶん)のまっ白い(かお)(ちか)づけていきます。


ヒカリの魚は、

(すこ)ししてから、今度(こんど)()ビレの反対側(はんたいがわ)(まわ)りこみました。

また、(かお)(ちか)づけていきます。

熱心(ねっしん)に、(なに)かを(たし)かめています。


「せっかく、(およ)ぎに(さそ)ってくれたのに・・・。

 ごめんね・・・」

赤い魚が、小さな(こえ)(あやま)ると、

ヒカリの魚は、(かお)を上げました。

左にクルリと(まわ)ります。

そうして、

口をパクパクと(うご)かし(はじ)めて、

(つぎ)に、

サッと、(うし)ろに宙返(ちゅうがえ)りしました。


そのときです。

赤い魚の()ビレが、

突然(とつぜん)

まっ白いまぶしい(ひかり)に、すっぽりと(つつ)まれてしまったのです。


ビックリした赤い魚が、その大きな目をパチクリさせて、

まぶしい(ひかり)(つつ)まれた自分(じぶん)()ビレを、ぼう(ぜん)とした様子(ようす)で見ていると、

(ひかり)は、だんだんと(よわ)まっていき、

やがて、中から、

また、自分(じぶん)の赤い()ビレが(あらわ)れました。


うまく(およ)げない、()けてしまった()ビレ。


でも、その()けてしまった部分(ぶぶん)には、

ぽおっと(あか)るい、(ひかり)のマクが()いていました。



赤い魚は、

()ビレを、おそるおそる(うご)かしてみます。

(ひかり)のマクは、

しかし、

()えたり、()れたりしませんでした。

しっかりと、くっついたままでした。


赤い魚は、(およ)いでみることにしました。

海底(かいてい)をけとばし、(すこ)しだけ()き上がると、

()ビレを、

そのまま左右(さゆう)に、すばやく()ってみます。

(からだ)が、ちょっとだけ(まえ)(すす)みました。

もう一度(いちど)()ってみます。

(からだ)が、

また、ちょっとだけ(まえ)(すす)みました。


赤い魚は、

(つづ)けて、何度(なんど)何度(なんど)()ビレを()りました。

そのたびに、

(からだ)が、ちゃんと(まえ)(すす)みます。

(へん)(ほう)()ったり、(しず)んだりしませんでした。

ちゃんと(およ)げています。


赤い魚は、

(ひかり)のマク()きの()ビレをいっしょうけんめい()って、

(あた)りの(うみ)(およ)(まわ)りました。


左に()ったり、右に()ったり・・・。

()いたり、(しず)んだり・・・。

()こうへ()き、

すぐに、また(もど)ってきて・・・。

(いわ)(まわ)りを、(もう)スピードでグルグルと(まわ)り、

(つぎ)は、宙返(ちゅうがえ)りをくり(かえ)して・・・。

いっきに水面(すいめん)まで上がっていき、

また、いっきに(うみ)(そこ)まで(もど)ってきて・・・。


赤い魚は、

ひさし()りに、(うみ)自由(じゆう)(およ)(まわ)りました。

時間(じかん)(わす)れて、夢中(むちゅう)になって(およ)(まわ)りました。


そうして、(およ)ぐのに満足(まんぞく)すると、

(いそ)いでヒカリの魚のもとに(もど)ってきて、

その(まわ)りを、

すばやくクルクルと(およ)ぎながら、()いました。

「すごい、すごい!。

 あなた、(うみ)(あるじ)さまみたいに魔法(まほう)使(つか)えるのね!。

 すごい、すごい!。

 ありがとう!」


ヒカリの魚は、(かお)(ほこ)らしげに上へ()けて、

左にクルリと、小さく()(えが)きました。

赤い魚も、(おな)じように(かお)を上へ()けて、

左にクルリと、小さく()(えが)きました。



ヒカリの魚は、

(からだ)()きを()え、()こうへ(およ)ぎ出しました。

そして、

(すこ)(はな)れたところで(およ)ぐのをやめると、

赤い魚の(ほう)を、あらためて()(かえ)りました。

そのまま、じっとしています。


赤い魚は、()ビレを()って、

ヒカリの魚の(ほう)へと、元気(げんき)よく(およ)ぎ出しました。

でも、

途中(とちゅう)で、ハッとした(かお)をして、

(およ)ぐのをやめてしまいました。

()()んだ表情(ひょうじょう)になり、その(かお)をうつむけていきます。

ヒカリの魚は、

まっ白い(かお)を、ちょっとだけ(よこ)(かたむ)けました。

赤い魚は、

やがて、元気(げんき)のない(こえ)()いました。

「あの・・・、

 ワタシ、目が大きくてヘンでしょ?。

 だから、

 その、あなただって・・・」


それを()いたヒカリの魚は、

(かたむ)けていた(かお)を、

(すこ)ししてから、ゆっくりと()こしました。

口をパクパクと(うご)かし、

サッと、(うし)ろに宙返(ちゅうがえ)りをして、

そうして、

自分(じぶん)(かお)に、

赤い魚と(おな)じくらい大きな、まっ(くろ)い目を(つく)ると、

ヒカリの魚は、

(すこ)(はな)れたところの、1ぴきでうつむいている赤い魚を、

その(つく)ったばかりの大きな(くろ)い目で、まっすぐに見つめました。


赤い魚は、(かお)を上げました。

ヒカリの魚を見て、(おどろ)いた表情(ひょうじょう)になって、

そして、ちょっとしてから、

ふたたび、()()んだ表情(ひょうじょう)(もど)って、

その(かお)を、

(しず)かに、うつむけていきました。

「あなたも、ワタシみたいにイジメられちゃうよ・・・。

 だから、もとに・・・」

赤い魚は、そう()いました。

ヒカリの魚は、

けれども、ピクリとも(うご)きませんでした。

まっ白い自分(じぶん)(かお)に、大きな(くろ)い目を()けたまま、

赤い魚を見ています。

まっすぐに、じっと見ています。


赤い魚は、

しばらくして、うつむけていた(かお)()こしました。

(すこ)しの(あいだ)、ヒカリの魚を見て、

それから、

そちらの(ほう)へ、ゆっくりと(およ)いでいきました。


「・・・こんなワタシでも、いいの?」

(ちか)くに()ってから、おそるおそる(たず)ねてみると、

ヒカリの魚は(かお)を上げ、

左にクルリと、小さく(まわ)りました。

そして、

そのまま(からだ)()きを()えて、(およ)(はじ)めました。


でも、

すぐに()まってしまいました。

赤い魚が、ついてきていなかったのです。


ヒカリの魚は、(うし)ろを()(かえ)りました。

赤い魚を、

また、まっすぐ見つめました。

宇宙(うちゅう)のような、まっ(くろ)いきれいな目で、

(しず)かに、じぃっと見つめています。


赤い魚は、やがて、

ヒカリの魚の(ほう)へ、

ふたたび、ゆっくりと(およ)ぎ出しました。

それを見たヒカリの魚は、(かお)を上げました。

ふたたび、左にクルリと小さく(まわ)ります。

そして、そのまま()こうを()くと、

まっ白い()ビレを、気分(きぶん)()さそうに左右(さゆう)()って、

さっそうと(およ)(はじ)めました。


赤い魚は、

(すこ)ししてから、(およ)ぐスピードをちょっとだけ上げました。

ヒカリの魚の(となり)(なら)ぼうとしたのです。

すると、ヒカリの魚も、

すぐさま、スピードをちょっとだけ上げました。

赤い魚が、

()ビレを(つよ)()って、さらにスピードを上げると、

ヒカリの魚も、

()ビレを(つよ)()って、さらにスピードを上げました。


「ちょっと()ってー。おいてかないでよー」

そう()いながら、赤い魚が全速力(ぜんそくりょく)()(はじ)めると、

ヒカリの魚も、それに()けじと、

全速力(ぜんそくりょく)()(はじ)めました。


「あ、こらぁ。()()てー」


()かりの()しこむ、(しず)かな(よる)(うみ)で、

そうして突然(とつぜん)

2ひきの魚たちによる、しれつな()いかけっこが(はじ)まったのです。



ヒカリの魚と赤い魚は、

(うみ)の中を、ビュンビュンと(およ)(まわ)ります。

海面(かいめん)まで上がったかと(おも)うと、

(つぎ)瞬間(しゅんかん)、いっきに下まで(もぐ)っていき、

(うみ)(そこ)のスレスレを、(もう)スピードで(およ)いでいき、

(あた)りの白い(すな)()き上げつつ、

(ねむ)っているヒトデたちのすぐ上を、一瞬(いっしゅん)(とお)()ぎていき、

そのまま、その先にある岩場(いわば)へと突進(とっしん)し、

そこの(せま)いすき()を、

2ひきとも、

目にも()まらぬ(はや)さで、(つぎ)から(つぎ)へと(とお)()けていきます。


やがて、赤い魚は、

ヒカリの魚に、だんだんと()(はな)されていきました。

(つか)れてきたのです。

ヒカリの魚は、チラリと(うし)ろを見ると、

すぐさま(かお)正面(しょうめん)(もど)し、

前方(ぜんぽう)にある、ピンク色をしたサンゴの森に()っこんでいきました。

そうして、森に入ると、

()(かく)しつつ、サンゴの下を(しず)かに移動(いどう)していき、

(すこ)ししてから、

(うご)きをピタッと()めました。

物音(ものおと)を立てぬよう、おとなしくしています。



(おく)れてやって()た赤い魚は、

サンゴの森を、上からキョロキョロと見(まわ)しました。

かすかな(ほし)()かりが()らす、海底(かいてい)のサンゴの森。

でも、1()(しょ)

(すこ)しだけ、

ぽおっと(あか)るく、白く(ひか)っています。


「あれー?、どこに()ったのかなぁ。

 おかしいなぁ・・・」

赤い魚は、気づいていないフリをしながら、

ピンク色をしたサンゴたちの上を、ウロウロと(およ)(まわ)ります。


「こっちかなぁ?」

そう()いながら、(ひか)っている場所(ばしょ)(ちか)づいてみると、

ぽおっとした()かりは、

ちょっとずつ、(よこ)へと()げていきました。


「うーん、なかなか見つからないなぁ。

 どこに(かく)れているんだろう・・・」

赤い魚は、

()らん(かお)をして、()かりの上を(とお)()ぎていきます。

そして、じゅうぶん(はな)れたところで、

あらためて、(うし)ろを()(かえ)りました。

(ひか)っている場所(ばしょ)を、もう一度(いちど)しっかりと(たし)かめてから、

サンゴの森に、(しず)かに入っていきます。

ヒカリの魚にバレないよう注意(ちゅうい)しながら、

森の中を、コソコソと(すす)んでいきます。


サンゴたちの()こうに、

やがて、

ヒカリの魚の()ビレが見えてきました。

ぽおっと、わずかに(あか)るく(ひか)っています。

赤い魚は、さらにスピードを()としました。

そおっと、そおっと、

(すこ)しずつ(すこ)しずつ(ちか)づいていきます。



ヒカリの魚の、ちょうど()(うし)ろに()ました。

まだ、気づかれていないようです。

赤い魚は、口を大きく()けていきます。


わっ!・・・と(さけ)んで、(おどろ)かせようとしましたが、

でも、ちょっとしてから、

その大きく()けた口を、(すこ)しだけ()じました。

そうして、小さな(こえ)で、

「みーつけた」

と、ささやきました。


ヒカリの魚は、(からだ)をビクッとさせました。

すぐさま、(うし)ろを()(かえ)ります。

赤い魚は、

その、()(かえ)ったヒカリの魚の(かお)を見て、

クスクスと(わら)いました。

「目、()えちゃってるよ」


ヒカリの魚は、ハッと(かお)を上げました。

口をパクパクと(うご)かしてから、(うし)ろに宙返(ちゅうがえ)りして、

ふたたび、大きな目を(つく)りました。

そして、

その(つく)(なお)した目で、赤い魚をじぃっと見つめて、

(つぎ)に、

自分(じぶん)の上を(あつ)くおおっている、サンゴの(えだ)(たし)かめ、

今度(こんど)は、

(まわ)りを(かこ)っているサンゴたちを、グルっと見(わた)して、

最後(さいご)に、

また、赤い魚の(ほう)へと()(なお)しました。

(かお)を、ちょっとだけ(よこ)(かたむ)けます。


「どうして、ここがわかったか・・・、

 ()りたい?」

赤い魚が、

いたずらっぽい表情(ひょうじょう)で、そう(たず)ねると、

ヒカリの魚は、

(かお)をタテに()って、うなずきました。


「だって、

 あなたの(まわ)りだけ、ちょっと(あか)るいんだもの。

 すぐにわかったわ」

赤い魚が、笑顔(えがお)(おし)えてあげると、

ヒカリの魚は、ハッと(かお)を上げ、

それから下を()いて、

しゅーん・・・と、うなだれました。


「ねぇねぇ、(つぎ)はワタシが(かく)れる(ばん)でしょ?。

 ちょっとだけ()こうを()いててよ。

 (いま)からワタシ、(かく)れ・・・、」

赤い魚は、そこまで口にして(はな)すのをやめてしまいました。

大きな目で、ヒカリの魚をじぃっと見ています。

「ねぇ。

 気のせいかもしれないけど、

 あなたの(からだ)、すけてきてない?」


ヒカリの魚の(からだ)()こうに、

ピンク色のサンゴが、

(すこ)しだけ、すけて見えていました。

そう()えば、

(あた)りを()らしている、

ヒカリの魚の、ぽおっとした白い()かりも、

だいぶ(よわ)まっています。


ヒカリの魚は、(かお)をパッと上げました。

すぐに、自分(じぶん)()ビレの(ほう)()(かえ)り、

(からだ)がすけてきていることを(たし)かめると、

上を()き、

サンゴの森を、(いきお)()()び出していきました。

そのまま、海中(かいちゅう)(もう)スピードで上がっていきます。


「ちょ、ちょっと、(きゅう)にどうしたのー?。

 おいてかないでよー」

赤い魚も、あわててサンゴの森を()び出しました。

()いかけようとします。

でも、スピードがちっとも出ません。

()ビレをいくら(つよ)()っても、

ほんの(すこ)ししか、(まえ)(すす)んでくれません。

見る見るうちに(はな)されていきます。


赤い魚は、

(からだ)をひねって()(かえ)り、自分(じぶん)()ビレに目を()けました。

()けた部分(ぶぶん)()いている(ひかり)のマクが、すけてきていました。

()えかかっています。


赤い魚は、

ふたたび、(かお)を上に()けると、

いっしょうけんめい、()ビレを()りました。

何度(なんど)何度(なんど)(つよ)()りました。

でも、

()っても()っても、(まえ)には(すす)んでくれませんでした。

そればかりか、しばらくすると、

(からだ)が、

(うみ)(そこ)へと、ちょっとずつ(しず)(はじ)めました。


赤い魚は、それでも()ビレを()(つづ)けます。

ヒカリの魚の、どんどん小さくなっていく(うし)姿(すがた)見失(みうしな)わないよう、

必死(ひっし)に見つめて、必死(ひっし)()ビレを()(つづ)けます。


ヒカリの魚は、

海面(かいめん)まで(もう)スピードで上がっていくと、そのまま(うみ)()び出しました。

そうして、

空中(くうちゅう)()をひるがえして、(からだ)()きを()えると、

()ビレを()って、空を(いそ)いで(およ)いでいきました。


赤い魚は、

(くら)(うみ)(そこ)へと、(すこ)しずつ(しず)んでいきながら、

その、ヒカリの魚の()き先へ、

なんとか目を()けました。

(ほし)いっぱいの夜空(よぞら)(とお)()こう、(ひく)いところに、

(しず)みかけの、まん(まる)い白い月が、

ぽおっと(あか)るく、(かがや)いていました。

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