表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
88/141

88.悪態(あくたい)

悪態(あくたい)


アマトはルノクスに向う。その船内では虫人の過去の歴史がハニカムモニターに映し出されていた。しかしそれを見るものはいない、サクヤが目を閉じたマイの頭をそっと撫でた。

「このハニカムモニターに映るものは、直接あなたたちのシナプスに映し出されている、しばらく眠りなさい、私の記憶を枕にして」

その記憶は、マルマの記憶だった。ノアの生命力が枯渇し、マルマはサクヤを再誕するかそれとも消滅させるかの決断を迎えていた。カグマ・アグル・サクヤはインセクトロイドとして「再誕」していた。サクヤの記憶とともに。


「お前はイブでは無い、それを承知でわしの力をお前の体に集めろと言うのか?」

カグマは深く頷いた。サクヤを苦しめる「再誕」はもう必要ない、彼はもう一度語気を強めて言った。

「出芽を終えたサクヤには、再誕の力はもはや必要ないのです」

「出芽して生まれた王子のことは知っている、だがそれは雌雄異体だ」


「ルノクスにも王女が出芽致しました、これはマナもヨミもご存知です」

「リリナ、そうかバジェスからも出芽したか……」

「この体に再誕の力を留めてください、リリナがリカーナの体に封印した様にお願いいたします」

マルマは迷い、こう思った。

「この虫人は限りなく雄に近い、繰り返す再誕のうち、虫人たちも遂に雌雄異体に近づいたということか。しかしこの男の体が大いなる再誕の力を内に込め、それで封印できるとは思わぬが……」

(もうそれほど、時間がない)

マルマの決断を促すために、カグマはひとつ「悪態(あくたい)」をついた。


「マルマ、私がタオに近づくのがそんなに恐ろしいのかっ!」

半ば呆れて、マルマがカグマの体に入り込んだ。

「愚か者めが、その体で試してみるがいい!」


案の定、カグマは粉々に砕け散った。イブとしてのサクヤもまた消え去り、カグマ・アグル・サクヤは自分が「作られた虫人」だと知らぬまま、インセクトロイドの研究をカグマから引き継ぐ。そして、新たな虫人はゴリアンクスにも生まれなくなった。サクヤはその寸前で「シュラ」を完成させた。


「間にあった、ゴラゾム様……」


それは「虫人」の移住先を一刻も早く探せ、と若き王子がサクヤに命じたからだった。サクヤにはゴラゾムに対して、この頃淡い気持ちが芽生え始めていた。しかし、ゴラゾムはそれに全く気付いてはいなかった。その後、移住先を探査するために出発した「三体のシュラ」は「回収」される事に決まった。コマンドにあった「その星にすでに知的生命体がいる場合はそれを(せん)滅せよ」というくだりによって「シュラ」はたちまち「火星」の先住民「ラグナ」を滅ぼしてしまったのだ。


「コホン、コホン……」

またいやな咳が止まらない。覚醒前の別の一体を回収、改造し火星のシュラを破壊したサクヤは体の不調に気づく。もう一体を追うため一度母星に戻ろうとしたサクヤは、その途中、ダーマが再誕させた魂のないリリナの体を発見した。


「……なんて美しい人、何故こんな場所に捨てられているの?」

きっと彼女は最初そう思ったに違いない。その体は回収したシュラに早速使われた。そしてカグマ・アグル・サクヤは自身が作られた虫人と気づかないまま、次のサクヤを作り出すこととなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ