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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
78/141

78.コマンド発動

コマンド発動


「どうして、いったいなぜなの?」

テンテンも不思議だった、由美子とのシンクロは99%はうまくいっている。メタモルフォーゼが発動しない訳はないはずだ。その様子を見たヒドラがこう言って笑う。

「愚かな、虫人こそお前たちよりも先に生まれた神の子の子孫。思い上がるなよ、サル型生命体の分際で虫人の持つ力を容易(たやす)く手にできるとでも思っているのか」

一方、テンテンはラベンデュラの言葉を思い出した。


「虹の戦士もマンジュリカーナも同じ次元に同時に現れない。人間界でのあなたは、なっぴに着床するしか虹の戦士として戦えないの……」

由美子はもうろうとする意識の中でその原因を探した。

「テンテン、そういえば、このコマンド、パピィのコマンドとはベクトルが反対よ」

さすがに由美子だ、コマンドのエラーに気付いた。

「私の頭がなんだかすっきりしなかったのは、きっとそのせいよ」

「ベクトルの向き?」

それは着床先の指定ベクトルのことだ。そう思ったテンテンはもう一度由美子の耳に飛び込んだ。


「えーと、これだっ!」

テンテンが見つけたコマンド・エラーはテンテンから由美子へ向くベクトルだ。

「この向きを反対にするということは、そうか、ラベンデュラ様わかりました」

由美子の耳から小さなテントウ虫が這い出すと、とうとう由美子が崩れた。

「ごめん、由美子。やはりあなたではメタモルフォーゼは発動しなかった……」

テントウ虫の姿で現れたテンテンが七色のさやバネの星を輝かせた。なっぴの首のブローチが反応しひとつ、またひとつと輝き始めた。


「メタモルフォーゼ・プログラムは私のためのコマンドだったのですね、ラベンデュラ様」

人間界で動けるのは、限られた時間だったテンテンは、もう一度ラベンデュラの言葉を口にした。

「私が虹の戦士となるため、なっぴに着床した……」

テンテンは由美子の生体エネルギーを借り、亜硫酸ガスから身を守ることが出来ることを確かめた。

「よし、これならいけるわ」

テンテンは由美子から離脱すると由美子をそっと寝かせ、なっぴのブローチに向かって大声で叫んだ。


「なっぴ、由美子のおかげで、私は結界の外でも平気よ。さあメタモルフォーゼよ!」

こくりとなっぴがうなずき、右手を上げた。


「テンテン着床、メタモルフォーゼ!」

しかし、メタモルフォーゼは発動しない。クスッとテンテンは笑った。

「違うわ、最後のメタモルフォーゼのときは、こう言わなきゃ」

テンテンの声がブローチからなっぴの耳元へ響く。

「なっぴ着床、メタモルフォーゼ・レインボー!」

なっぴが小さな虹色テントウに吸い込まれるようにスサノヒドラの前から消えた。


「おのれ、お前は何をした。マンジュリカーナをどこへやった?」

小さなテントウ虫が人型に変わる、その人型はスサノヒドラに向ってこう叫んだ。

「マンジュリカーナは虫人たちの命とともに、私の体にある。お前の力は私が制御しよう、浄化は必要ない。さあこの星を立ち去れ、スサノヒドラよ!」

「正気か、あのリリナでさえ出来なかった事なのだぞ」

その言葉はヒドラの本意だった。リリナは再誕のプロセスで生じる、闇を制御できずに消え去った。

「おお、リリナ・スカーレット・サクヤ……」

リリナの夫の人型を得たマルマはダーマとして暮らすうちに、リリナを愛してしまっていたのだ。


「名を聞いておこう、虫人よ」

すでに、ヒドラは浄化を諦めた、おそらくあの原始生命体はルノクスに向ったのだろう。そして、この星の運命は変えれないだろう、この者達をここで消してやるのがせめてもの償いだとヒドラは意を決した。


「虹の戦士、レインボー!」


最後の戦士がそう名乗った。ヒドラが攻撃用の触手をゆらゆらと伸ばし始めた。

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