71.浄化の火炎
浄化の火炎
その火炎は、なっぴの立っていた地面に当たる。それは雨水が染み込むようにやがて地面に吸い込まれていった。火炎は不思議なことにその地面を次第に白色に変えていった。
「なんてこと……」
テンテンは、スサノヒドラが吐いた火炎が何なのかを分析した、そして虹のブローチにこう念じた。
「なっぴ、その火炎は触れるものを浄化していく、色を失うとともに別のものに、ううん一つの同じものに変わっていく……」
虹のブローチにそう念じるテンテンに、なっぴの返事がやっと届いた。
「テンテン、だめよここに来ては」
なっぴは攻撃もせず、その「浄化の火炎」をかわすだけだ。しかし、彼女が次第に追い詰められていくのは誰の目にも明らかだった。結界の中のマイもそれを理解した。
「スサノヒドラの火炎に浄化されれば、原始生命体に戻っていくということなのね」
「アガルタの海底にラグナが残した『ノア』と同じ。でも変ね、どうしてなっぴだけを狙うのかしら?」
「そうねおかしいわ、でもなっぴはそれをすでに知っているように思える」
テンテンとセイレの話を聞き、シルティが頷いた。
「スサノヒドラは、あなたたちの言う通り、なっぴを浄化しようとしている」
「なっぴを浄化しようとしている、それは何のために?」
セイレには全く見当がつかなかった。
「どうしたらいいの、何が私にできるの」
なっぴから、動くなと言われたテンテンは、香奈に向かって訴えるように言った。
「テンテン、私がラベンデュラに伝えたメタモルフォーゼ・プログラムのコマンドをあなたは完璧になっぴに書き込んでいた。あなたとなっぴとのシンクロナイズは99.9%。どういうことかわかるわね」
「なっぴとのシンクロナイズは99.9%……」
「マンジュリカーナは同じ次元に二人は存在してはならない。なっぴのもう一つの姿は、虹の戦士。テンテンこれが答えです」
「香奈様、私がメタモルフォーゼした時は、決まってなっぴのいない時だった」
「あなたはリンリンと双子の姉妹として生まれた。あなたに与えられたメタモルフォーゼ・プログラムはナナの再誕の力を使い、昆虫王国で虹の戦士となることだった。そのためにまずは人間界にいるなっぴを覚醒させる必要があったということなの」
「私を虹の戦士にするために、なっぴを覚醒させたということなのですか」
「そう、全てはあなたたちのためのプログラムだったのよ」
「私たちのプログラムのために、なっぴを何度もこんな危険な目に合わせていたなんて……」
テンテンは自分たちに戦うすべがないため、遠い人間界のなっぴに助けを求めたのだとずっと思っていた。しかしそれはテンテンの思い違いだった。彼女はラグナに寄生された後の虫人の言葉を思い出した。
「ラグナの戦士たちが、こう言っていた。『ラグナは寄生したものの記憶を全て共有できる』と」
「テンテン、彼らの言ったことに間違いはない。虫人は原始生命体に戻り、そしてまた生まれる。その際、邪魔になるものは前世の記憶……」
「その前世の記憶の受け皿として存在していたのが、リリナ・スカーレット」
テンテンの言葉にセイレがこう続いた。
「エスメラーダ人魚たち、ルシナ、ダルナ、マーラもそうだった」
マイがポツリとこう締めくくった。
「そして、シルティあなたもきっとそうなのね……」