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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
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7.なっぴを救え(前)

なっぴを救え(前)


「まるでなっぴがまったく別の人格になってしまった。これも、メタモルフォーゼなの?」

「そうだな最も原始的な、初期のものだ」

「初期?」

「ああ、マルマが再誕させた最初のメシナ。ルノクスの女王に似ている」

「その女王って、まさか」

「リリナさ」


ラグナ族の記憶に残るメシナの姿に、ダーマはそう叫んだ。しかしマイの目にはその姿は、闇の化身としか映らない。その瞳に、なっぴの輝きは少しも見えなかった。


それは再びこう叫んだ。

「これより、この星の知的生命体を抹殺する」


 かつてラグナ・マルマは「メシナ」としてその女王の再誕(メタモルフォーゼ)を終えた。レムリアの女王「リリナ」は滅びゆく「ムシビト」にむけて体に溢れる「マナ」の力を注ぎ込んだ。しかし、ムシビトたちの再誕は叶わなかった。一方「ヨミ」の力は「ゴラゾム」に伝えられ、細胞を合一することが可能になったのである。そしてゴラゾムとリカーナの娘「マンジュ」、のちのマンジュリカーナの誕生となった。


 その再誕の力はレムリア王国に残る。「メタモルフォーゼ」として「フローレス」の血をひく「ラベンデュラ」「スカーレット」「バイオレット」に伝えられたのだ。一方ラグナ・マルマはそれとは別に「ラグナ・ノア」を用い再誕・分裂を繰り返していた。その中からやがて次の「メシア」が現れた。そのメシアは「カグマ・サクヤ」の意思を持つ「ヒドラジンア」。シルティはアガルタの「エスメラーダ人魚」によく似た存在だった。


 ナナのおかげでマイはヒドランジアとして覚醒した。しかしそれにより、レムリア王国にはある異変が起こりつあった。


 王宮の地中深く眠る「ルノクス」の誇る星間航行船「レムリア」のメインコンピュータに青緑のインジケーター・ライトが不意にともった。それに気づいたのは、ひと足早く王国に戻った「ゲンチアーナ」ことリンリンだった。


「何故、『レムリア』が再び動き始めたの?」

そうリンリンはシルティに尋ねた。しかし彼女にもその意味することはわからない。少しの沈黙の後、メイン・パネルの「インジケーター・ライト」がひとつまたひとつ光り始めた。その輝きは優しく、シルティに流れる「サクヤ」の記臆とシンクロをしはじめた。


「なんということ、そんなことが……。あなたたちが乗って来た『レムリア』もまた『ノア』だったなんて……」

「えええっ!」

リンリンはシルティの言葉に驚きを隠せなかった。今、目の間に見える星間飛行船はあまりにも小さい。確かに虫人たちを乗せて、地球に到着したということは不思議な事だった。


「ルノクス」の滅びゆく生命体は「ダーマ」が「カンブリア」族として原子生命体「ノア」にまとめたように、ムシビトたちもまた数種類に「まとまり」地球に向ったのだ。

「シルティ、ダーマと同じ力を一体誰がもっていたの?  私たち虫人を救ったのはいったい誰なの?」

「それは……」


二人にそれがわかるはずはない。リンリンは人間界に残ったままの、姉のテンテンにもう一度、念波で問いかけた。

「姉さん、『レムリア』で虫人を移住させるために、虫人たちを融合させたのはいったい誰だったの?」


しかし、新たな「シュラ」と化したなっぴに引きちぎられた、コマンダーの中でテンテンはまだ気を失ったままだ。姉からの返事がない事にリンリンの頭を不安がよぎった。

「何かが、またなっびたちにおこっている……」

目を見合わせた二人の頬に、原色の「インジケーター・ランプ」の明滅が反射する。その二人に声をかけたのは、筆頭巫女「ラベンデュラ」だった。


「私たち、ムシビトを救った『レムリア』がなっぴを救うために、再び飛び立とうとしている。二人とも王宮の庭を見なさい」

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