67.役目を終えたリンリン
役目を終えたリンリン
漆黒の戦士がなっぴに戻った。その傍らには気を失ったリンリンがいた。
「リンリン、あの姿は……」
テンテンが驚いたのも無理はない。その姿は人間界に初めて現れた頃の姿だったのだ。転校生「黒崎マイ」と名乗っていた頃のリンリンだった。
「しっかりして、リンリン}
なっぴに揺り動かされ、少女はようやく気づいた。そして目を丸くしてなっぴに尋ねた。
「お姉ちゃん誰?」
なっぴは微笑む。
「万寿小夏、なっぴって呼んでね。あなたは危ないからしばらくは隠れていて」
なっぴは少女を丈夫な耐圧殻に覆われている『amato2』に連れて行った。ハッチを閉めようとするなっぴに少女は尋ねた。
「お姉ちゃんは?」
「すぐに戻るからね、いい、出ちゃダメだよ」
ハッチを閉めると、ようやく動きを止めたヒドラに向き直り、なっぴは歩いていった。
ヒドラはその時、実は体に異変が起こり始めていた。無数の稲妻が身体中を駆け巡りそして次々と光を生んでいく。そしてそれが苞に集まっていくのだ。尽きるともないその反応は「核分裂」に酷似している。
「見るがいい、ヒドラの体に残った闇が七色の光を生んでいく。ヒドラの体に七色の苞が生まれ、それぞれが成長を始める。それはしばらく続くだろう」
そうタオの声が響いた。
「でも、まだ終わりじゃない……」
「そうだ、テンテン。マナとヨミは表裏一体、そのバランスに生命は置かれている」
「ヨミの次になっぴが向かうのは、マナ……」
「かつて、マナを制御できたものはいない。マナを宇宙中に分散させたのは、それほどの力があるからなのだ」
「タオ様、ご心配には及びません。なっぴはヒドラを救います。ヒドラこそ救われなければならないのです」
「香奈、お前も里香も同じことを言うか、お前たちが言ったイブと言うのがあの娘か」
「はい、なっぴがヒドラに向かっていくのが何よりの証拠です」
「わかった、ヒドラがこの星に受け入れられるところを見せてくれ」
「香奈様、リンリンはいったい?」
「テンテン、リンリンは一時的に再誕してしまった。あの娘が人間界に現れた時の姿でね」
「ラベンテュラ様、いったい誰が?」
「なっぴではないことは確か、それが誰のものなのかはわかりません」
なっぴにそんな力は残っていない。とりあえず安堵したテンテンは、稲光もやっと治まりつつあるヒドラをスキャンしてみた。
「ヒドラのダメージは88パーセント。なっぴ、リンリンよくやったわ、ん?」
「どうしたのテンテン」
「由美子、変よ、ダメージが回復を始めた。60、40、10、こんなことがあるの……」
「なんだあれは、ヒドラがさらに巨大になっていく」
ヒドラはその体を変えつつあった。一度は闇を浄化され、七色に美しく輝いたヒドラ。しかし再び巨大な胴体の苞を輝かせ、次々と無数の触手を伸ばし始めた。
「なんて、巨大なヒドラ」
由美子がぶるっと身震いした。
「無茶よ、生身のままヒドラを相手にするなんて……」
「そうだ、邪神ヤマタノオロチを越えるやもしれん、あの巨大なヒドラを相手にするのは」
タオの声が結界の中に響いた。




