6.闇に落ちたなっぴ
闇に落ちたなっぴ
「カプセルからその汚い足をどけなさい!」彼女が瞬間移動をしたことさえ、シュラは気が付かなかった。なっぴが人差し指を振った。その一瞬でシュラの右足が消えた。
「ギ……」
その機械音声が最後だった。シュラは次の一瞬で首をもぎ取られた。緑色の人口血液がその首から噴き出した。
「汚すんじゃあないよ!」
なっぴの左の正拳があれほど固かったシュラの胸をいともたやすく突き抜ける。
「こんながらくたに、手こずるなんてね。どれ役にも立たない巫女どもも片付けようね、一匹ずつ。アハハハッ」
「ダーマ、なっぴはどうなってしまったの」
マイがたまらず、凝視を続けるダーマに問うた。
「なっぴはもういない、あれは新たなシュラ、ヨミそのものだ。急激になっぴのもつヨミの力が溢れ出したのに違いない。俺はこれを恐れていた」
赤い目のなっぴの唇が動く。
「ゴラム、ゾデル」
『amato2』の周りの岩が黒い霧に包まれ、分子にまで砕かれた。『amato2』は上空に浮かび上がる。
「ズドル、ギラム」
猛加速をして落下する『amato2』ごと、巫女たちは岩盤にめり込む。
「ズガガーン」
その反動でハッチが壊れた。脳しんとうでも起こしたのか誰一人動かない。
「なんともろい、せっかくあのとき見逃してやったのに、まるで進歩もしていないのか。愚かな生命体たち、バジェスの生き残りどもめ……」
やがて「amato」から放り出された巫女たちが気を取り直した。最初に立ち上がったのは、由美子だった。彼女は大声でなっぴに問う。
「なっぴ、私が解る?」
「フフフッ、解る?」
なっぴの指先から閃光が一つ放たれた。由美子は胸を貫かれ、うつぶすと動かなくなった。
「ご存知ですか、そう口をきくものさ」
「マイ、既にあれはなっぴなんかじゃない。あれは……」
コマンダーからナナの声が響いた、それを聞くと闇のなっぴがにたりと笑った。
「おや? その声には、聞き覚えがあるぞ。リリナの一人娘『リカーナ』だろう……。深い闇により、わしはこの星に再び『種の選別』に現れた」
ナナの事をリカーナと呼ぶ「それ」に向かってマイは強気にこう言った。
「由美子まで……、あなたはなっぴなんかじゃあない、その正体を現しなさい」
「アハハハハッ、残念だがこの娘から出る事はできないのさ。俺は寄り代がなければ移動すらできないものでな」
「まさか、その声はラグナ・マルマ……」
ダーマがそう言った。それを聞き「それ」が笑った。
「ほほう、お前はわしの子孫か、そんなものに捕らえられているとは、間抜けなものよ。まあいい、わしとともに再びこの星に住む者の選別をしようぞ……」
そう誘われたダーマは「ブルー・ストゥール」に包まれたマユの中から答えた。
「俺は捕らえられているのではない、なっぴたちにこの中で守られているのだ」
「守られている? 馬鹿をいうな、われらラグナをムシビトが守るだと。なんと嘆かわしい。それほどおまえは進化に乗り遅れているというのか、わしの血をひくものが」