50.ヒドラの物語
ヒドラの物語
「マナ」と「ヨミ」そして「マルマ」、「アマテラス」「ツクヨミ」そして「アマオロス」
「サクヤ」と「シュラ」そして「ヒドラ」。「光」と「闇」「生殺与奪」の神々は全て始まりのもの「タオ」から生まれた。「神の子」とは「タオ」が「実体」を得た姿に過ぎない。「アマオロス」から生まれた「邪神」「ヤマタノオロチ」が「里香」と「ラナ・ポポローナ」に浄化されたように、「ヒドラ」と「マルマ」を「なっぴ」は「浄化」しようとしている。
「マンジュリカーナよ、おまえはわしが「ヒドラ」と「マルマ」の二人を遠ざけた理由を知っていよう。それでもおまえは『それ』を乗り越えようというのか」
「ヒドラ」には幼稚だが、はっきりとした「感情」があった。「マルマ」に共鳴したのは「生殺与奪」の力を持つもの同士だからに違いない。「マルマ」の元へ向かった「ひからびたヨミの手首」それがルノクスに着いた時、すでにそこには「マルマ」はいなかった。深い悲しみと「リリナ」への「嫉妬」から生まれたのが最初の「ヒドラ」だった。そして「ヒドラ」はその矛先をすでに消滅した「リリナ」から、「ムシビト」に変えたのである。
これは、ラベンデュラが王女「マイ」に伝えた「ヒドラ」の物語である。
マナとヨミから生じた「ヒドラ」はタオの捨てた「マルマ=ラグナ」を追ってやがてルノクスへ着く。しかし「マルマ」と会うことは叶わなかった。マルマは「バジェスとノア」に分離して既に消滅していたのだ。ルノクスには、もうマルマの姿はなかった。ヒドラの目に映るのはうごめく虫人たちの姿だった。
「こんな虫ケラを生むために、マルマは消えてしまった。おのれ、虫人ども、根絶やしにしてくれよう」
激昂したヒドラは虫人の生命力を奪おうとする。最初のイブ、リリナは再誕術を封印し「ヒドラ」の「マルマ」への思いにそれでも応えようとしていた。それは「嫉妬」とも言える。ヒドラの八本の触手には虫人を噛み砕くための、巨大な口が開いた。
それがルノクスに新たな虫人が生まれなくなった原因だった。
新たな虫人は次第にルノクスには生まれなくなっていく。それを見かねたマナとヨミは虫人に救いの手を差し伸べる。遂に、虫人は母星を脱出する。「キャステリア」そして「レムリア」を率いたのが「ゴリアンクス」の王子「ゴラゾム」と「ルノクス」の王女「リカーナ」であった。やがて地球に虫人は移り住む。その異次元空間を作ったのが「マルマの力」を封印された王女リカーナ、つまりマンジュとアロマの母である。
ヒドラは地球に向かう「キャステリア」にすでに乗り込んでいた。星間を航行する途中キャステリアは放棄される。その時、多くの虫人は「レムリア」に移りゴラゾムたちと分かれた。ヒドラは「キャステリア」で出芽し身軽になると、早速「レムリア」を追った。古い身体は不要のモノだ。ヒドラから出芽した分身は「レムリア」に吸着し、共に地球に到着したのだ。親のヒドラは放棄された「キャステリア」ごとヨミに吸収され、少しづつヨミを変えていってしまう。そのヨミがビートラに倒された時、ヒドラはナツメの石に変わり、深い闇を残し消滅する。そのナツメの石はのちに赤い翡翠となり、それに操られたイトが、「カブト」により倒された。
一方「レムリア」とともに地球に到着した新しいヒドラはこの星にいるはずの虫人を探し続ける。星の中をくまなく探すうちに、ヒドラは力尽きてしまう。「リリナ」の作った堅固な結界から虫人は一歩たりとも出る事が能わなかったからだった。「ナナ」は地球に到着したヒドラから出芽した最後の「陽の精」、そして「シャングリラ」の正体はアガルタの深い海底でついに力尽きた「親ヒドラ」の外骨格だったのである。