48.石棺の謎
石棺の謎
ギラファは高鳴る胸を押さえ、かつてヨミの戦士が眠っていた次元の谷を訪れた。その場所は先住民「カンブリア族」とも呼ばれたラグナの子孫たちの墓場だった。
「ここか」
ギラファは静かな次元の谷に入ると背筋をピンと伸ばし、一礼をした。ザラム、ゾラムそしてゴラム、恐るべき生命力を持つヨミの戦士らがこの石棺から甦ったのは、もう随分昔のことのように彼には思えた。
「古文書には石棺は五つだと記されていた。一つは常に死を覚悟していたダゴスのもの、そして戦士たちの石棺が三つ、見つからない石棺はすでに壊されてしまったのだろう、皆そう思っていた。しかし、果たしてそうなのだろうか。いや、そんなヤワな石棺のはずがない。わしはそれを確かめに来た。きっとこの谷のどこかにその石棺の手がかりがあるはずに違いない」
彼は一つの石棺を覗いた。その中は空っぽだった。彼以外の目で見ても、行方不明の石棺の手がかりなど全くありそうもない。彼は側の岩に腰を掛け深くため息をつくと、次元の谷に残る石棺をぼんやり眺めた。
「ダゴスはここでカイリュウの生き残り、ギバハチに初めて会ったのか。アガルタからよくここまで来られたものだ。他のシャングリラはそのほとんどが既に使い物にならなかったと聞いている。次元の谷までのシャングリラはよほど丈夫なシャングリラだったようだ……」
「シャングリラは、アガルタに繋がっている。しかしそれは壊れやすく閉じやすいもの。七海の人魚たちがそれを守っている。それ以外に天界と地上、次元の谷とも繋がっているのよ」
そうアガルタの人魚たちは里香「なっぴの祖母」に話していた。
「まさか」
彼は突然立ち上がった。もし、彼が想像した通りなら見つからない石棺とは、とんでもないものに違いない。彼はそのひらめきを確証に変えようと、塞がれたはずの古いシャングリラへ向かった。
「こ、これは何だ!」
ギラファが見たものは谷の深部、闇の中で明るく輝く、ま新しい「シャングリラ」だった。
「新しいシャングリラが再び人間界に繋がっている、なぜだ」
彼は入り口に近づきその中に入ろうとした。とその時、聞き慣れた声が彼を思いとどまらせた。
「だめ、ギラファ、それ以上進んではいけないわ。今頼れるのはあなただけ、お願い私の言う通りにして」
その声は彼を蘇らせてくれた「マンジュリカーナ」、なっぴの声だった。
「そうか、シャングリラの正体がわかってきた。マンジュリカーナ、わしはこれから何をすればいい。既にこの王国の虫人たちは次元を超えるため、ナノリアに集まっている。もうじき王国は消滅するぞ!」
彼はなっぴとシンクロナイズしていた。なっぴは彼に念波を送り、彼をエレファスのいる「ゴラリア」へ向かわせたのだった。