47.エレファスの肩
エレファスの肩
「実はわしもラクレス、コオカと同じように赤い翡翠に撃ち抜かれていたのだ」
「赤い翡翠に撃ち抜かれた……」
ラクレスが繰り返した。
「そうだ、しかしそれは二人のものより闇の力が弱かった」
「弱かっただと?」
コオカが不思議そうに言った。
「ああ、知っての通り、わしはその時すでに武を捨てていた。国民にはゴラリアの大僧正『ゴライアス』と呼ばれておった。
「存じております、私の眠り病を王の祈りで祓ってくださったのですから」
「おお、フランヌ。そうであったな」
「その赤い翡翠はこの地に落ちる途中、時空のシャングリラをねじ曲げ、大半の力を使っていた。ナツメの石の力はその赤いオーロラとともに失われた」
「赤いオーロラに変わった……」
「そのナツメの石とは、マオ様がアガルタに持ち帰った『再誕の石』のことですね」
「そうか、リンリン。すでにテンテンとシンクロナイズしておるのか」
「はい、姉を介して、なっぴの記憶も今の私にはあります」
「話を続けよう、わしを誘った赤い翡翠は、わしに断られるとこう言った」
「そうか、それならいい。この星に生まれたものは、お前たちだけではない。お前たちの知らぬ古き虫人にも異界のものにも、この世に闇はいくらでもある。ここで飽きるまで祈っていればいい。わしはそれ以上の新たな闇を作ってやろう、ククククッ」
「次に狙うのは、ダゴスあるいは人間界、わしはそう思い赤い翡翠をこの左肩に封印しておったのだ」
すでに再生した肩を右手でさすりながら、エレファスが話しを続けた。
「なぜそれを今更話す。エレファス」
キングが呟いた。
「エレファス王はゴラリアに残りそこで消滅するおつもりでございました」
シルティが皆にそう言った。沈黙を破ったのはマイの声だ。なっぴの舞いが華麗なものに変わろうとしていた。
「なっぴはとうとう、私たちの力をすべて取り込んだわ。でもまだ舞っている」
「おかえり、マイ。わかるでしょう、なっぴが次に再誕させようとしているのは誰なのか」
「テンテン、あなたじゃあないことは確かね。あの目はすでに虫人の目、でもそれがあの子だったら相当手強いわよ」
「あの子?」
由美子がマイに尋ねた。ダゴスが口を挟んだ。
「七色テントウの精のことだろう、マイ」
「おそらく、でもあの子には私には隠している秘密がまだある……」
「シンクロナイズしてもあなたに心を開いていなかったということですか」
「お母様、いえ、マイにはよくわからなかったということです。光と闇が別れた頃の記憶ですから」
「そうか、ヒドラがギラファをゴラリアに呼んだのか、それであんなことを」
「ギラファ、そうだあいつはどうした」
初代ドルクがエレファスの側のシルティに尋ねた。
「ギラファ様はゴラリアに着くと、エレファス様に戦いを挑んで王の肩を….…」
「なんと、あいつが狂ったと」
「いや、ドルク。そうではない、あいつはわしの代わりとなったのだ」
「詳しく話してくれ、皆に」
「そうだな、少し話そう、あの日のことを」