34.落胆と怒り
落胆と怒り
「イオナに誓ったオロチは根の国に向った。この星のマルマの元で、じっと見守っていたのだ、この星に生まれた生き物たちを……。
ところが、邪神「ヤマタノオロチ」となったオロチは対峙したミコトにこう言った」
「……最初の生命体は女神から分離したものだ。しかしその後の生命体はどうだ、あるものは卵で、あるものは分裂して増える。歩くのも動くことさえ、細い毛がやっと進化して可能になった。約束が違う、こんなゴミたちを産み、守るのが俺たちの役目だと、いいや断じて違う。俺とイオナはこんな出来損ないのために天と地に別れたと言うのか!」
そして天の声はさらに高く響く。
「なっぴ、おまえの祖母たちはそのとき、こうオロチに言ったのだ」
「オロチ、この星の生命体は神に比べて何が劣っているの? 憎しみや殺戮ばかりだとでも言うの? 身を捨てて人魚を守った人間、アマゾンを守るために立ち上がった動物たち、禁を侵してでもアキナを再誕させたマンジュリカーナ、アロマリカーナ。自分の命をかけてオロシアーナを残したヒメカ……」
ラナがそう言いながら立ち上がった。
「この星のために、レムリアを離れ、命を縮めた母さん。傷つきながら今も溶岩流を止めている人魚たち。あなたには聞こえないの? 彼らが何といっているか、彼らの希望と言う光とはいったい何を指しているのかを……」
里香が立ち上がった。オロチの目に再び怒りの炎がともった。
「ええい、うるさい!出来損ないのゴミども、カイリュウの力をなめるな!」
黒龍はそれでも双頭から炎を吹き出し二人に向かった。オーロラの鏡を盾にしてリカを守りながらも、ラナはオロチに近づいていった。
「ラナ、跳ぶわよ!」
そういうと、里香はレンボー・スティックをオロチの足元に刺し、それをを伸ばす。
「レン・スティノール!」
曲げたスティックが伸びる反動に会わせ、今度は里香がラナの手を握り、垂直に跳び上がった。そして手頃な長さに一度縮める。
「ミノ・スティノーラ!」
頭上から一直線にオロチの末魔をめがける二人に容赦なく炎と溶岩弾が吹き上げられる、それをオーロラの盾で防ぎ続けるのがラナだった。
「おのれっ、おのれっ」
しかし吐き続けるオロチの炎は、二人の巫女の髪の毛一本も焦がすことは出来ない。
ラナを握った手をほどき、ゆっくりと舞い降りる天界の巫女はオロチには見覚えのある姿に見えた。オロチはこうつぶやいた。
「……一打で決めろよ、天界の巫女……」
里香はオロチの末魔にスティックを打ち込むと地面にふわりと降りた。マルマを打突され、激痛がオロチを襲った、しかしオロチは満足げにこう言った。
「イオナ、やっと会えたな……」
崩れ落ちる黒龍は、もう何も言わなかった。
「……もう随分昔のことだ、しかしわしはそのとき初めて思いだした。わしが捨て去ったマルマのことを、あいつはどこにいるのかと……」