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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
33/141

33.アマテラスを超える光

アマテラスを超える光


天の声は続く。


「その予兆はそれ以前にもあった。創神より生まれた聖神の女神、イオナを天界に留めた時だった……。


ー天界に聖三神とその子達がいた頃だった。創神として降臨する前は皆、姿もない神だったー


「さて、いよいよこの星に生命を吹き込もう。ツクヨミ、アマオロス。私たちの創った女神たちは光を、そして男神は闇を持つ。光と闇、それは生と死の象徴として、この星を創るべき使命がある」

アマテラスは、そう厳かに述べた。

「クシナには、私の持つ光の力を全て与え、マオとともに大海原を収めさせましょう」

「ヒメカは少し闇の制御が必要ですがミコトがそれを抑えましょう」

二人の神はアマテラスの言葉を待った。アマテラスの持つ光をそのまま受け継いだ、美しいイオナについての言葉を待っていた。しかしアマテラスは口を閉ざしたままだった。

(イオナを降臨させる訳にはいかない……、あまりにも光が強すぎる。この光はきっとオロチを狂わせてしまうに違いない……)


アマテラスは見抜いていた。

(イオナの光を食い尽くすか、それとも取り込まれてしまうか、いずれにしてもオロチはきっと破壊されるであろう)

アマテラスは二人の役割について、決断しかねていた。そして数日が経った。イオナとオロチはアマテラスの胸中など知らなかった。


「まったくヒメカは変わった女神だ、クシナや君と同じ、光の女神とは思えない」

「そんなことはないわ、ヒメカは光と闇を併せもつ女神。この星の生命体の理想の姿かも知れないわ」

「クシナよりもか?」

「ええ、クシナにはまだまだ光が足りない。ツクヨミ様がそうおっしゃっていた。力の続く限りクシナに光を与え続けるそうよ」

「イオナ、君は? 既にアマテラス様から充分な光の力を与えられているのだろう?」

「ええ、後は最後の仕上げだって」

「最後の仕上げ? なんだそれ」

「さあ、わからない。でも今夜最後の仕上げですって。あっ、そろそろ行かなきゃ」

立ち去ろうとしたイオナを、オロチが後ろから抱きしめた。しばらくした後イオナは笑って立ち去った。


まだ夜といっても、アマテラスがその光を少し弱める程度の白夜の中、四方から神殿に光が集まり始めた。その光を目で追いながら、オロチは一人考えていた。

「イオナは十分すぎる光を既に持っている。闇も完璧に封じ込めている。アマテラス様でもあるまいに。これ以上の力など偶生の神にはもう必要ないのに、まさか……」


挿絵(By みてみん)


オロチは神殿に向かった。


神殿の扉を開けたオロチはタオの制止も聞かず、イオナに近づいていった。苦しみもがくイオナがそこにいた。


「イオナは苦しんでおります」

「イオナの中に封じ込めた闇を取り出しているのじゃ、完全な光の女神とするために」

「完全な光の女神に……」

「そうだ、イオナは偶生の神ではなくなる、わしらと同じ実体のない女神となるのだ」

「それでは、私も同じ様にしてください」

「それは叶わぬ、オロチよお前はこの星の重鎮としてこの星を支えねばならない」

イオナは苦しみの中、オロチに言葉をかけた。


「オロチ様、私はずっとこの星に光を与え続けましょう。その光を受けたこの星の生命が未来永劫に輝き続ける様に。やがて素晴らしい命が産まれることでしょう。海に陸にそして空にまで、私たちに続く命が溢れることでしょう」


それを聞くとオロチは拳を握りしめ、イオナに誓った。

「約束しよう、この星の支えとなることを。イオナ、素晴らしい命を持つ二人の命がこの星に溢れるまで……」

にっこり微笑むと、イオナは美しい姿を次第に消していった。イオナのいた場所にオロチはふらふらと近づいた。そこには黒い真珠が一粒のこっていただけだった。それをつまみ上げたオロチにアマテラスはこう言った。

「それが、イオナから取り出し、封じ込めた闇の部分だ。その一粒はお前たちの持つ、何十分の一の闇しかない。恐るるに足らん程の闇、しかしそれさえもここに残しわしの光を取り込んだ、それがこの星の光となったイオナの意志なのだ」

黒真珠を握ったまま、オロチは天空に向かって叫んだ。


「イオナ、約束しよう。この星の素晴らしい生命体は永遠に輝くことを、そうでもなければお前が創神の中で唯一天界に上ったことが無意味になる」

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