29.創三神の思い
創三神の思い
アマテラスは二人の前に立ち、その輝きをさらに増す。女神の周囲は金色から白色に輝き、その光がすべてを包み込んでゆく。時間さえも動きを止めたかのような錯覚をミーシャもセイレも覚えた。その光を放ちながら、アマテラスはタオにこう言った。
「マルマとは、あなた自身であることを……」
「何を言うかと思えば、お前までくだらぬたわ言を。ええい許さぬ!」
嵐とともに、光の女神「アマテラス」もその姿はかき消されてしまった。呆然として立ちつくすのは、シルティだった。創三神の進言をタオはこうして一蹴した。
「本当、素直じゃないわね」
声の主はタオに遅れて地上に降り立った「虹の戦士」なっぴだった。少し疲れたのか肩で息をしながら「タオ」にそう言った。
「なっびの言う通りよ、創三神の思いはたった今、私たちが受け止めたわ」
ミーシャはヒメカの仗を持って、なっぴの右に並んだ。そして、もう一人。
「このグリーン・エメラルドこそ、この星の生命の源。クシナは私にこれを託した」
セイレもなっびに寄り添う。なっびは二人を交互に見つめた。
「お前たちもたった今、見たであろう。この私に進言さえ、できぬことを……」
「そうね、でも私達は進言なんてするつもりは無いわ」
「なんだと?」
タオの言葉が終わらぬうちに、今度はシルティが天空を遠く仰ぎ見た。そしてこう言った。
「アマテラスはやはり、この星に降りていた。そしてその女神は永くこの星を見守っていた。時には天かけるオロチの姿、また時には美しき人魚となって。そして最初に天空から舞い降りたその姿こそ、マンジュリカーナ……」
「ほほう、その通り。アマテラスはイオナとともに『人型』を持たなかった女神。寄り代なくしてその姿は見えない、今更のことだ」
「宇宙を作り上げたあなたは、次に生命を生み出そうとした。最初に生まれたのが『マルマ』それがあなたのもう一つの姿だった」
「おぞましいことを……」
「あなたは、神に似た人型ではなかった。皮肉なものね、造物主の方がその後の神たちに見劣りするなんてね……」
なっぴがそう言ったのを聞くと、タオは震えながら叫んだ。
「わしは、造物主。得体の知れないグニャグニャの『あんなもの』ではない」
「だから、辺境の星に逃げ込んだのね。マナとヨミにその後を任せて」
「わたしの落胆がお前たちに解るものか。しかも永遠に死なない、死ねないまま、ただ深い星の底でじっと待つだけだ」
「それを救ったのはあなたが辺境の星で出会った虫人の女王リリナ・スカーレット」
なっぴはキューを握り直した。
「そして、ムシビトたちの運命を救ったのはあなたの生んだヨミとマナの力。その時ようやくこの星にはあなたの思い描いていた生命が生まれていた」