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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
25/141

25.制御

制御


不思議なことに、マルマはフローレスに近づくのをためらっている。まるで怯えているかのようだ。それを見たフローレスは寂しげにつぶやいた。それはなっぴには信じられない言葉だった。


「さあ、マルマ。この地を喰らい尽くしましょう、そしてこの星の創始をなしましょう」

しかし、マルマはそれに答えるどころか、身体を小刻みに震わせると口をいっぱいに開き紅蓮の炎を吐いた。一瞬の出来事に、なっぴは思わず目を覆う。ミーシャがすかさず、氷結の呪文をとなえる。


「オローシャ・カクテノーラ」

間一髪で炎を凍りつかせたミーシャに、マルマの怒りの攻撃が向かった。それをなぎ払ったのは「バジェスの剣」をふるう「アガルタの人魚姫」セイレだ。思いがけない行動にマルマは誰よりも驚いた。

「ば、馬鹿な! スカーレットの今の言葉、お前たちは聞こえなかったとでも言うのか? スカーレットの中には深い闇『シュラ』が再び目覚めている」


なっぴの口が開いた。

「聞こえたわ、でも彼女の中には私たちの仲間がいる。経験を積んだ巫女の力は侮れないはず。きっと今度こそ『シュラ』を制御できる、かつて巨大神『アギト』を制御した巫女たちの後継者を私たちは信じている」

なっぴの言葉にミーシャもセイレも大きくうなずき彼女の左右を固めた。


フローレスは身悶えるとやがて硬直した。

「ラクテノーレ・フロラノーレ」

なっぴの言葉を待っていたかのように、その身体に幾筋ものヒビが入った。アロマが姉のマンジュの力を借りてもなせなかったことを「ラベンデュラ」の娘「マイ」、虹のほこらの「バィオレット」の娘、リンリンとテンテン。そしてなっぴとともに多くの危険を乗り越えた「スカーレット」の娘「由美子」が行おうとしている。それをマルマは感じとった、しかしマルマはこうつぶやき、ダーマの身体をもう一度ブルッと震わせる。


「無駄だ、スカーレットは俺にしか制御出来ないだろう。お前たちはまた壊れてしまうつもりなのか?」

何度も「フローレス」はそのヒビを修復しようと試みる。しかし、そのヒビは確実に増えていき、とうとう深く一筋の亀裂が入った。そしてフローレスの中の「シュラ」は遂に「制御」された。


「その髪の色、その瞳……、見まがうことなど無い。リリナ・スカーレット・サクヤ……」

シュラを制御し、マルマの前に現れたフローレスはアロマの娘であろう。しかしその姿は「フローラの三姉妹」として再誕した巫女たちに似ているだけでなく、最初のイブ「リリナ」の姿そのものだった。リリナは静かにマルマの前に進み出た。なっぴの時と同様にその身体を数え切れない原始生命体ノアの触手が包み始めた。そして静かに現れたのはなっぴの母「香奈」であった。


挿絵(By みてみん)


「なっび、やっと会えた」

まぎれもなくその声も、その微笑みも香奈だ。なっぴは母の元に駆け出そうとした。

「よせ!なっぴ」

その手をつかみ強引になっぴを止めたのは、タイスケだった。

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