23.甦りしもの(後)
甦りしもの(後)
「あの時、わしのしたことは余計なことだったのだろうか?」
リリナの先王への思いの深さにダーマン(マルマ)は王を再誕させる。しかしリリナはそれを良しとしなかった。リリナは、娘リカーナを残し遂に死んでしまう。マルマが人型を得たのはその先王の体だった。その体のまま「マルマ」は「リリナ」に接していた。
「日毎リリナはやせ細っていく、再誕した王は女王に何の感情も持っていなかった。リリナはさらに深い悲しみに沈んでいったのだろう……」
「ダーマン、私たちはまだまだ未完成の生命体です。こうしてまたもとの一つの原始生命体に戻っていくのです。しかしそれもやがては終わろうとしています」
リリナは「サクヤ」に「再誕」の力を封じ、原始生命体の集合に消え入り、もう二度と帰らなかった。マルマに最後のリリナの意志が届いていく。そして手にしたのは先王の体だった。
イブと呼ばれる「ルノクスの女王」が虫人を繰り返し生み出すことができるのは、「原始生命体」があってのことだった。まだ未熟な虫人が死ぬと再び「原始生命体」に戻る。新たな虫人が生まれるためには、過去の記憶を全て吸い取る必要がある。その役目を持つのが「シュラ」という「殺奪の神」そして新たな命を与える役目は「生与の神」である「サクヤ」だった。マルマとは男女神を一つの身に持つ「倶生」の神に他ならない。しかもそれぞれが独り立ちし、偶生の神にもなり得た。マルマは「サクヤ」と「シュラ」この二神を残し、遂にその体を消滅させたのだ。
ダーマンと名乗ったマルマの行った「余計なこと」で「リリナ」はついに消え去り、その際彼女の持っていた「生殺与奪の力」がルノクスから消滅する、虫人たちの新たな命のもとが一つ枯渇したのだ。リカーナが「レムリア」の中で「マンジュ」を生んだのは、マナとヨミの力による新たな生命の力からだった。そして同じ頃、地球にはノアという「原始生命体」が生まれていた。その生命体をを生んだ力は、マルマが生まれながらに持つ「生殺与奪」の力によるものだ。
なっぴの力を認めたマルマはこう尋ねた。
「なっぴ、お前はダーマと同様の力を持つはず、何故その『再誕』の力を使わない。何故『生殺与奪の神』になろうとしないのだ」
マルマの問いかけの間にも、なっぴの周りに集まる無数の触手が休むことなく、青いスーツを紡ぐ。そしてなっぴが笑ってこう答えた。
「おあいにくさま、私は神なんてなりたいとは思わない、今一番なりたいのは『優しい母さん』のいる『アカデミア』に通う女子高生よ!」