22.甦りしものたち(前)
甦りしものたち(前)
きりりとマルマを見据え、なっぴは両手を広げそして天を指差した。それだけではない「ノア」に近づくとその体にそっと触れた。それにより再び生命を吹き込まれたノアは、触手を伸ばしなっぴを包み込む。はらりとなっびの薄い衣が落ちた、なっぴはまるで産まれたままの姿だ。
「なっび、綺麗……」
セイレが言う通り、ミーシャもタイスケもいや、マルマさえそう思った。なっびは次いで変色した「レムリア」に近づく、その中では王国の虫人達が「原始生命体」としてひとつに融合していた。
「あなた達をこのままにしてはおかない」
なっびはこう唱えた、その言葉は厳かにそして、高らかにオロスに響き渡る。
「レム・バジェス・アクテオーヌ」
その呪文こそ、リリナが一度も使うことのなかった「再誕の術」。この星では、オロシアーナだけが、使える「アマテラス」に匹敵する奥義だ。「バジェス」が輝き、鼓動が聞こえ始めた。突然、再誕が始まったバジェスは邪魔になる異物を外に吐き出した。それはシュラ、地球に最初に届いたシュラだ。そしてそれに続きバジェスから飛び出してきたのは「ヒドラ・ボール」だ。やがてヒドラ・ボールの天頂から一本の糸が解けはじめたその紐状のものは、複雑な塩基配列の二重らせんの構造をした「ミトコンドリア」だった。
虫人たちはたった一人の女王から生まれた。その女王の名は「リリナ」である。しかし王の名は伝えられていない。王が死ぬと女王「リリナ」は再誕をし、生まれ変わり再び次の王の妃となる。ルノクスでは、蜂や蟻たちの様に一人の女王と複数の王によって成り立っていた。偶生には違いないが、地球の創神たちとは少し違う「神」だった。
三種の龍刀はイオナ・アマテラスをして、サクヤを呼び寄せ依り代とする。サクヤは黒龍刀、白龍刀、万龍刀を縒り合わせ「クサナギ」を振るう。この生殺与奪の剣「クサナギ」を振えるのは、聖三神「アマテラス、アマオロスそしてツクヨミ」という「倶生」つまり雌雄同一神だけなのだ。自らの身体に次代の命を内包している神、それがタオの求めた「神」の姿だった。
しかしマルマは早く生まれてしまった、その「神の子」は原始的だが身体まですでに持っていた。その身体の「女神」の半身に、リリナが再誕を繰り返す度に、リリナの過去の思いが溜まっていった。アガルタの「エスメラーダ人魚」として生まれた、ルシナと全く同じように。
そのためリリナは、今まで再誕を繰り返しても過去を振り返ることはなかった。先王への思いは、「涙」に込め、それを流し切ると「女王」は次の新しい王の妃となる、それが代々の儀式だ。しかし、ある日、深紅の神の子「ダーマン」は「先王」を生き返らせようと言う。「ダーマン」はその時の尋常ではないリリナの訣別の感情に心を動かされたのだ。