21.ぬけがら
ぬけがら
マルマとリリナによって新たな命が生まれた。しかしそれは感情のない、生き物に過ぎなかった。マルマは、次の瞬間、力尽き倒れ込むリリナを見た。リリナを抱き起こしマルマは言った。
「大丈夫か、リリナ」
「既に申し上げたでしょう、思い残すものはありません。それよりご覧なさい、まだこの子には「感情」らしきものがない。でもやがてはそれも芽生えることでしょう。その日までこの宇宙をさまようことになるかもしれません。いつかこの子が目覚め、本当の女神になる時、その時はマルマ、あなたの『不老不死』の力だけではない、私の『再誕』の力さえ自在に使う、女神として現れることに……」
そう言うとリリナは芥子粒のようになって弾け飛んだ。マルマは、虫人達から女王を奪ったことを後悔し、「それ」に「サクヤ」と名付け、ともにルノクスを離れた。
「不思議なことに、新たな虫人達は次第に生まれなくなっていった。わしとサクヤは間も無くルノクスを離れた、サクヤは宇宙をさまよううちに確かに変わっていった。しかしある日、リリナに劣らず美しい顔のまま、サクヤはただの抜け殻のようになった」
サクヤはルノクスを出発した「レムリア」の中で生まれた「マンジュ」の元へと、引き寄せられるように消えてしまったのだ、ただそれをマルマには理解できなかった。目前のリリナに再びマルマは問う。
「リリナ、何故サクヤは抜け殻になったのだ。わしは絶望し、辺境の星でサクヤとともに果てようとしたのだぞ……」
リリナの顔が次第にゆがみ始めた、そしてイオナへと容姿も変わっていく。
「虫人達の総意がサクヤを欲したのです。新しいイブのために、マンジュのために、サクヤを求めたのです」
その思いが「マナ」に届き「マンジュ」の誕生とともに、再誕の術として受け継がれた。しかしマルマは、現れたイオナにこう毒づいた。
「わしの希望、サクヤを取り上げ、さぞかし面白かろう。だがな、わしはお前達が作ったこの星の生命体を食い尽くすべく「ダーマ」を送り込んだ。すんでのところで、そこの巫女どもに邪魔されたが。クククッ、しかしそれももう終わりだ。イオナ、いやアマテラス!」
そう言うと、マルマはイオナに向かい、激しい衝撃波を送った。
「ギガ・デラード」
閃光と衝撃波に、ガラガラとイオナは崩れ落ちる。しかしそのなかから立ち上がるものがいた。
「なっぴ、なっぴが……」
すでにエスメラーダでもオロシアーナでもない、人魚姫と北の巫女がその姿を見て同時に叫んだ。しかし、なっぴはその両目をまだ開けなかった。
「なっぴ? お前がサクヤをわしから奪い去った、マンジュの末裔か、流石にしぶとい。わしのあの攻撃を受けても、なお生き残ったというのか?」
なっぴは青く薄い衣を着け、目をゆっくりと開いた。そして「amato2」に向かって「アイ・コンタクト」をした。
「ありがとう、セイレ、それにミーシャ……」
なっぴの目は二人にそう告げていた。