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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
16/141

16.光


「なっぴ、なっぴ……」

聞き慣れない声がなっぴを揺り動かすように、身体中を包む。

「………」

なっぴは声が出なかった、それは姿形のないまばゆい光だった。

「なっぴ、なっぴ……」

少し大きな声がもう一度、なっぴに届く。


「その声は誰?」

「忘れたの? 私の声を」

なっぴは遠い記憶をたどり始める。しかし、思いあたる相手がなかなか現れない。

「コポ、コポッ」

なっぴはどうやら液体の中に沈んでいるようだった。その中で身体とともに、今迄の記憶が凄まじい速さで、戻り始めていく。


挿絵(By みてみん)


初めて「虹色テントウ」のテンテンに会ったこと。不思議な転校生、由美子そして最初は「黒崎舞」と名乗り、なっぴたちの敵として現れたリンリン。もちろん昆虫王国での記憶ばかりではない。祖母の持っていたシャングリラやアガルタの記憶の数々。嵐の夜「日本アカデミア」で初めて目の当たりにした、人魚姫「セイレ」。そして母を救うために出会った多くの仲間たち、なっぴは「インセクトロイド」シュラとの戦いまでの試練さえも余すことなく思い出していく。


マルマは目を疑った、茶色の消し炭と化していたなっぴが明らかに生命体として活動し始めていく。数億年もかけて進化していった原始生命体をずっと眺めていたマルマにとって、なっぴの成長はそれまでの時間を縮めて再現している様にさえ見えた。


「そうか、この中で……」

もうはっきりと解る、それは「なっぴ」のためのマユなのだとマルマは気付いた。

「わしのエネルギーがあの娘を生み出すきっかけとなったと言うのか」

たちこめる水蒸気の間から光が差し込んだ、細い木もれ日のようなそれはやがてその数をひとつひとつ増やし始め、その間をオーロラがつなぐ。なっぴのマユを包む虹色のベールには、信じられないことに大宇宙に生まれた虫人の星「ルノクス」と「ゴリアンクス」の青く輝く姿が映った。


「馬鹿な、既にあの星は滅んだはず。わしは何を見ている……」

それは過去の歴史だった、やがてその中に浮かび上がったのは一人の女神だった。

「ヒメカ様……」

ハッチが開き、「amato2」から出たミーシャがつぶやく。続いてセイレが目を潤ませた。

「クシナ・エスメラーダ」

タイスケは声が出なかった。


「リリナ、まさしくおまえはリリナではないか。こんなことがあるのか?」

マルマはそう叫ぶ。それぞれの目に映る女神の姿は、それぞれの心にある「光」だと気付いたミーシャは思わず叫んだ。

「創始の神『アマテラス』とは一つの神ではなかったのね!」


マルマはその声に振り返り、再び現れたこの星の巫女を見た。

「オロシアーナにエスメラーダか、確かにアマオロス、ツクヨミの力をもつものだ」

ミーシャは、もう一度言った。

「アマテラスを私たちはいつも心に持っていたのね。虫人たちが原始生命体『バジェス』に戻ってまで守ろうとした『イブ』もきっとアマテラスの姿の一つに違いない」


「ギガ・マルマ」

マルマはしかしさらに強烈な閃光を放ち、リリナごとオーロラをかき消した。

「何をするの?」

「まやかしのリリナはもう要らぬ、それにノアとバジェスが創神として、この星の新たな神になるのだ」


マルマはシュラの姿のまま、羽を広げると上空に舞い上がった。狙うのは「なっぴ」のマユに違いない。今度はオーロラさえ吹き飛ばした最大級の攻撃が放たれた。


「ギガ・マルマ」

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