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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
138/141

138.想定外

想定外


「ありがとう、タイスケ。でもここは私たちの星ではないわ。それに、それじゃあ今までと何も変わらない」

「そうだな、地球に戻ろう。なっぴ」


ルノクスに残る、そんなことできる訳もない。しかし、なっぴはそう言ってくれたタイスケに感謝した。もう時間はない、タイスケの言った通りだ、二人が無事に地球へ着いたとしても、二人の知っている地球だという保証などないのだ。なっぴの脳裏にもう一度「未来の地球」が浮かんだ。彼女は操縦席を静かに立ち上がり、その席を彼に譲った。そうだ、地球に戻らなければならなかった。ミーシャとセイレの待つ地球が私の居場所なんだとなっぴは改めて思った。


「オーケイ、タイスケ。地球に進路を取れっ!」

「やれやれ、今度はいっぱしの船長かよ」

席を代わったタイスケは苦笑いをすると「amato2」の「方向舵(ラダー)」を調整した。


「フィーン」

独特の振動とともにルノクスの軌道上に浮かぶ「amato2」は加速を始めた。「スィング・バイ」で加速をし、正確に軌道を離れるためにAIは「シリウス型エンジン」を起動させる。それまでの間、なっぴはぼんやりとハニカムモニターをのぞいていた。


日没までもうじきだ。「アマテラス」の光を浴び、ようやく「ツクヨミ」も完全に起動するはずだ。その際の強力な「紫外線」がなっぴや人間たちの記憶を何も知らず集まってきた虫人たちから永遠に消し去ることになる。虫人は彼女の言いつけ通りにアマトの丘に集まって来るだろう。そして「生まれ変わる」のだ、ツクヨミの光によって。


「アマテラス」の「スペクトル光」をそれぞれの色の発電パネルに集めて蓄積する。外宇宙航行では光速を超えるためにシリウス型エンジンだけでなく「スペクトル光」から取り出した「タキオン粒子」が必要になる。そしてそれは恒星「燃える星、太陽」からしか採取できない。

「フル充電マデニハ、ルノクスノ軌道ヲ一周、ソノ後離脱可能デス」

AI「サクヤ」がそう計算した。


「なっぴ何してる?」

「うん、ちょっとね……」

虫人たちの感謝の品の数々は、これからのルノクスに必要なものがほとんどだった。なっぴはその多くを残してきていた。テンテンたちのくれた「ブルーストール」とラクレスとコオカのくれた「ペンダント」をなっぴは見つめていた。「ペンダントトップ」は小さな「ニジイロテントウ」が付いていた。

「どうやら、虫人たちは元気そうだぞ、なっぴ」

「えっ、本当?」

ハニカムモニターにいくつかの人影が映った。まだツクヨミの光は弱い、だがその光に浮かび上がる影は

これからのリーダーたちであった。虫人たちを地下壕に残し、一番に様子を伺いに出てきたのだ。


「ダメだって、まだ早いのに……」

その影はカメラに近づいてきた。それは各国の王たちの集団だ。キングに続きラクレスとコオカ、エレファス、スタッグ、バイス、ドルク、ダコス、ドモンそしてヨミ族の戦士たちが集まってきた。そしてテンテン、リンリン、由美子、そしてラベンデュラ、バイオレット、スカーレット、ヴィオラ、アイリスの巫女たち、そしてシルティとマイが現れた。これは想定外だ、なっぴは最も残酷な別れをこのモニターで見ることになるのだった。

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