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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
133/141

133.出発前夜

出発前夜


パーティーが終わっても夜遅くまで、なっぴはテンテンたちとアマトの中にいた。テンテンとは、生命を救ってくれた小学生の時からの付き合いだ。そして、由美子に出会い「メタモルフォーゼ」を知ることになった。リンリンはテンテンの双子の妹だが、闇に操られ、「漆黒テントウ」として長く敵対していた。そうした思い出話は尽きることもない。なっぴは今になって思った。

「あのラクレスたちを狂わせたのも、タオの与えた試練、シュラのひとつだったのね」


「テンテン、由美子、リンリン元気でいてね。私、頑張るから……」

「もちろんよ、ね、リンメイ」

「お土産忘れないでね、お姉ちゃん」

リンリンは既に母になっていた。娘のリンメイが明るい声をなっぴに投げかけた。

「うん、任しといて!」

その約束が叶うとしても、それは遠い日になるだろう。そして由美子がなっぴの手を取るとこう言った。

「なっぴにお礼言わなきゃ。約束どおり、ドモンに合わせてくれた事。それに私がこの星で生きることに決めてくれた事」

「良かった、由美子がそう言ってくれて……」

由美子たち三人を虫人として再誕させた事は、間違ってはいなかったと彼女は確信した。

「なっぴ、本当に地球へ帰るのね。あなたらしいわね」

「そう、帰らなきゃ。きっと何とかしてみせる、ミーシャもセイレも私の帰りを待っている。だって約束だもんね」


なっぴの見た未来の地球は何を示していたのだろうか。地球のエネルギーの枯渇、それはすぐそこまで来ているのだろうか、それとも地球に莫大なエネルギーを使う事態でも起こったのだろうか。しかし遠い地球のミーシャとセイレの二人は決して諦めてはいないだろう。


「結界が消えてしまうと、私たちのどれくらいの虫人が、このルノクスから消えて行くのかしら」

テンテンはなっぴの杞憂を知っていた。そしてそう尋ねた、その現実は彼女がルノクスを離れた時必ず訪れるのだ。残酷な事に彼女の予知能力は、それをすでになっぴに伝えている。しかし、それをテンテンに告げる訳にはいかない。彼女の顔がたちまち曇っていく、それを見てテンテンが笑った。

「うそうそ、未来は知らない方がいいことだってあるものね……」

(その通りなの、テンテン。私は実はそれを知っている……)

なっぴはその「力」を初めて呪った。皆に悟られてはいけない、すぐに彼女は笑顔を作った。


「もうすぐ生まれるテンテンの赤ちゃん、見れなくて残念だけど、きっと可愛いでしょうね?」

「もちろん、でも知らないでしょう。なっぴの知っている赤ちゃんとは全然違うけどね」

「ええっ、そうなの?」

「生まれた時は、そうね地球の昆虫そっくり。そして脱皮を続けてやっと虫人になる、ルノクスの虫人たちはみんな変態(メタモルフォーゼ)するのよ」

「じゃあ、テンテンの赤ちゃんが見れるのは先のことね」

「そう、地球で言えば2〜3年先のことかなぁ」

「ふうーん、そうなんだ。テンテン、バイスといつまでも仲良くしてね」

「うん、なっぴもね」

「もう、テンテンたら冷やかしたつもりだったのに」

「えっ、そうなの?」

「駄目駄目、姉さんの鈍感な所は変わってないって」

「こらっ、リンリン!」


艦内の笑い声が収まった頃、外が騒がしくなった、タイスケと一緒にテンテンたちのお迎えが来たようだ。

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