131.宴(うたげ)の日
宴の日
「任しとけって。言っただろう、こいつならは外宇宙だって航行できるって」
丈夫な耐圧穀の「amato2」の改造がその夜から始まった。そして昨日ようやく「amato2」は完成をみた。その名は「天戸」、次元の扉を開き再び地球を目指すように願いを込めて名付けられた。
そして今日、パーティーの日。
なっぴとタイスケの結婚披露パーティーは、虫人達への「天戸」の披露も兼ねていた。各地からルノクス再誕の地、アマトの丘に続々と虫人達が集まる。共に慣れ親しんだ者たち、時には敵対し傷つけあった者たちが一同に会する。それをマイ、由美子、テンテン、リンリンそしてシルティが迎える。その向かい側にはラベンデュラ、スカーレット、バィオレット、ヴィオラそしてアイリスが並び、彼らを迎えている。上座など無い、ルノクスは巫女の星となり、各国の王はその丘に適当に座っていた。
「お二人が、お見えになられました」
ギラファがマイに耳打ちした。輿を担ぐのは、親衛隊の者たち。ギリーバ、ガマギュラス、ピッカーそして赤ムカデのザラム、後ろからヨミ族を代表してドモンも並んでいた。輿は降ろされた、しかしその顔を見て一同は首を傾げた。その二人は、カグマとサクヤだった。
「さあ、結婚披露パーティーを始めましょう」
マイの合図で二人は皆にお辞儀をして、誓いのキスをした。そしてこう一同に言葉をかけた。
「これから、幾多の試練がこのルノクスに訪れるでしょう。地球と同じように高度な機械化も進むかも知れません。つらいこともあるでしょう。しかし再び、ルノクスはここにある。私たちにこの機会をマンジュリカーナが再び与えてくれたことを決して忘れてはなりません」
サクヤに続いてカグマがこう力強く言った。
「この星の未来は、この星の虫人が切り開いて行くのだぞ。私たちの子供達よ、そして愛すべき地球の二人へ、心よりありがとう!」
そう言い残し、カグマとサクヤは煙のように消え去った。
「今のは、二人の体に憑依したカグマとサクヤ。あの時と同じ、トレニアの丘にマンジュリカーナが、カブトと一緒に向かった時と……」
「また、おせっかいなマナの使い方をする」
「ギラファ、今回は無駄とは言わないのね」
「それくらいは、よろしいでしょう、マイ様」
ギラファは苦笑しながらも嬉しそうだった。
「さあ、今度はなっぴとタイスケの番だよ」
すっかり逞しくなったカブ王子が、そうマイに促した。
なっぴは紫のドレスで現れた、タイスケは白いタキシードだ。
一同は一瞬息をのんだ、そして声がわき上がる。
「何と美しい……」
「あれが地球の筆頭巫女様か!」
なっぴを初めて見る、若い虫人も多くあった。
「マンジュリカーナ様お幸せに!」
「お二人に幸多かれ!」
虫人達の祝いの言葉は止まない。もちろん、地球の事は誰も知らない。
「タイスケ殿、姫さまを頼みましたよ」
ギラファは目頭を押さえて、そう言うとタイスケの手をしっかり握った。
「なんだか、なっぴの父親みたいね」
マイがそれを見てけらけらと笑った。
「さあさあ、誓いのキスを」
と、言ったのはなっぴの声だ。
「キスを催促する花嫁ってあるか!」
「だって、今日は結婚披露パーティーよ。いいじゃない、あ・な・た」
照れながら、タイスケがなっぴを抱き寄せた。