124.天女
天女
「何かが現れる、この感じは!」
「セイレ、ミーシャよく見ているのよ。あなたたちの待ち望んでいたなっぴの姿を」
香奈も天を仰ぎ見た。七色の光に包まれ、二人の巫女たちがゆっくりと舞い降りる。コマンドスーツでは無く、青く薄い「羽衣」をまとっている。
「あなたがパピリノーラ、そしてクシナーラ、オロシアーナ」
「なっぴったら、改まって変なの」
「いや、なっぴは既にマンジュリカに変わっている。あの姿はモニターに浮かんだ、ルノクス最後のイブ、リリナに近い」
「タイスケの言う通り、静かに聞きましょう」
マイが妙に落ち着いている。パピリノーラが口を開いた。
「マンジュリカ、あなたの願いは分かっている。星の再誕、ルノクスを創造するつもりなのですね」
「はい、ツクヨミの力をお貸しください。このマンジュリカに」
「タオ様の力を手に入れて、虫人と星を同時に再誕させる。そうすれば虫人は、次第に亜硫酸ガスにも順応できるかもしれないと……」
マンジュリカが答えた。
「既に、この星で芽生え始めた虫人の進化に期待したい」
「創始の三巫女が集まった今、それは不可能ではない。だが、ここではツクヨミは使えない。あなたはこの大地とともに、彼の地に飛ばねばならない、それに……」
「承知しています。私は彼らに約束をした、全て覚悟しています」
「ならば今更言うまでも無い。われらの力を抜き取れ、その七龍刀で」
マンジュリカは、七龍刀を振り上げ、パピリノーラを斬り裂いた。続いてクシナーラ、オロシアーナの力を抜き取った。香奈とタイスケ、マイを残しamato2の中に動くものはない。香奈はマンジュリカに声をかけた。
「なっぴ、その七龍刀には一度きりのツクヨミが確かに込められている。ルノクスを再誕するのを止めはしない。でもあなたをこの星に呼び戻す力は、もう母さんには残っていないの、わかるでしょう」
「覚悟しています。お母さん」
親娘が抱擁をし、そしてしばらく時が経った。パピリノーラは里奈と美奈を残しシルティに戻っていた。マイは初めてamato2の外に出た。シルティもその後ろに続く。
「なっぴは最初からルノクスを再誕させるつもりだったのね」
「アマトをもう一度開きます。ほんの少しの時間しかないわ、必ず戻って来るから、少し待っていてね。セイレ、ミーシャ、母さんそしてタイスケ……」
なっぴの声が響く。それは古い言葉、扉という意味……。
「クッティース」
アマトが開き、その向こうに緑の大地が広がっていた。オロスの平原に相違ない、しかし誰一人としてそのアマトをくぐろうとしない。それを見て、里奈がセイレを叱った。
「クシナーラの意思を受け継ぐ、エスメラーダがだらしない。そんなことだと七海の人魚に笑われるわ、セイレさあ行きましょう」
美奈も同様にミーシャを叱咤する。
「ヒメカ様はためらうミコト様の剣に自ら飛び込み命を絶った。そしてオロスにオロシアーナが産まれたと伝えられる。命をつなぐことの意味がわかるのなら、母とともにオロスに戻りましょう」