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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
123/141

123.アマトの向こうへ

アマトの向こうへ


最期に現れたエスメラーダ人魚、それはルシナだった。ルシナはセイレに人魚の試練についてこう告げた。


「マンジュリカーナ様がお二人の力をその身に取り込むことは、想定しておりました」


「シュラを、そしてヒドラを倒すためにサクヤが地球に持ち込んだ再誕の力は再びひとつに集まった。そして新鮮で力強い生命エネルギーはアマトによってルノクスに送られた。それは母なる星、ルノクスのため。虫人たちはラグナ・マルマが示した通りの経験を持っている」

そう聞いてセイレはルシナに問うてみた。

「なっぴの体の中には虫人たちの情報が残っている、それを(コア)として虫人を再誕させるために……」

「セイレ様、それは叶わないかもません。元々虫人たちもプログラムのひとつのコマンドでしかないのですから」

ルシナがそうセイレに告げ、石化したサクヤとカグマをもう一度確認すると笑顔のまま、消え去っていった。


「薄々は気付いていたけれど、ルシナにそうはっきり言われるとやっぱり辛いね……」

「ルシナ、あなたはサクヤ・プログラムの事も知っていたのね。なっぴがこの星に虫人達がやってきた理由も、なっぴがその罪を引き受ける事も、そして彼女が虫人たちをどうしても見捨てる事が出来ない事も」


サクヤもカグマも虫人の遺伝子情報を全て吸収したところで、その動きを止めた。氷結の呪文と吹雪の呪文がセイレとミーシャから同時に放たれたのだ。ゴラゾーム細胞は活動を停止し、凍りついた。それが石化のように、サクヤとカグマを包んでいた。


「ひとまず、これでいい。後はなっぴの方だ」

タイスケがほっとした。

「だけど虫人たちが再誕しても、この次元から出ることはできないわ。サクヤの言う通り、カゴの中には変わりない。それが、住むべき星を失った虫人たちの運命……」

「まだ、そんなこと言うのマイ。あれを見なさい、なっぴの手にしたバイオレット・キューは真っ先に浄化されたアイテムのはずでしょう」

「本当だ、どうしてなっぴの元に?」

マイは不思議でならなかった。アマトの向こうでは、彼女の手にしたキューが背丈程に伸びる。


「レン・スティノール!」


ビドルの腹部に開いた宇宙空間。その中に「レムリア」がある、そう確信したなっぴの打突がビドルを捉えた。ビドルはそれを再度飲み込むことが出来なかった。後ずさりするビドル、何故このまま虫人たちを放っておかない。何をしようとしているのか、ビドルは由美子に命を分けたヨミ族、バイオレット・キューに変異した虹色テントウに驚愕さえした。


「マンジュリカの元に、再び集まる虫人たちは、一体何を待っているのだ。この娘は、まさか。いや、間違いない。あれをするつもりなのだ……」

ビドルは、なっぴの「計画」がわかった気がした。


「マンジュリカーナ、まさかタオ様を超える気か?」

「やるっきゃ、ない!」

「なるほど、そのために虫人たちの遺伝子情報をわしにレムリアまで送らせたのか。なんと賢い娘だ……」

なっぴに笑顔が戻る。

「でも、時間はそれほど残っていない。ぐずぐずしているうちに二人の石化が溶けてしまう」

彼女の背後から力強い声が聞こえた。

「私たちもなっぴについて行くわ、ねっ、リンリン」

由美子が、天を仰ぎこう叫んだ。

「メタモルフォーゼ、アゲハ」

彼女のブルー・ストールがリンリンを幾重にも包む。次の瞬間、アゲハの手には漆黒の剣が握られていた。リンリンがテンテンと同じく、変異をし、新たな「黒龍刀」が現れた。レインボーとアゲハ、その二人をビドルはじっと見つめる。

「あきらめぬ者たちだな……」


ほんの一瞬、ビドルの目には二人が「マンジュリカ」と「サクヤ」の姿に重なった。


「マンジュリカーナ、そろそろこのアマトは閉じてしまう。再びアマトを開くには……」

「大丈夫、ビドル、任せといて。由美子行くわよっ!」

「オーケイ!」

長く伸ばしたバイオレット・キューが地面に突き刺さり。大きくしなる、由美子の手を握り助走するなっぴの両足が、ふわりと地面を離れた。


「いざ、レムリアへ!」


ビドルの体内の異次元空間へ、最後の訪問者が吸い込まれていった。

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