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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
120/141

120.希望の火

希望の火


「もう無駄に時間をかけるのはやめましょう、その後にいる二人の巫女をご覧なさい。それぞれの力を抜き取っても、人として生きている。あなたもシルティに戻りなさい」

「私は、パピリノーラの力を無くしてもかまわない。でも、あなたにそれができるのかしら。地球の聖三神から続く巫女たちは決して消えさることは無い。この星のある限りね」


「決して、消え去ることはない。この星の巫女は……」

繰り返しそう呟くのは、ミーシャだ。

「なぜ、パピリノーラはあんなことを、もしかしたらここは……」

セイレにパピリノーラが振り返り、微笑んだ。

「この場所は地球、しかもオロスにある異次元の空間。ようやくそれに気づいたのね、クシナーラ」

セイレが、パピリノーラをかばうように外に出ていった。そしてミーシャも進み出る。セイレはサクヤとカグマに、こう言って恫喝(どうかつ)した。


「ここが、地球なら私の思いはきっとアガルタに通じるはず。アガルタの女王をみくびるな!」

それを聞き、パピリノーラは目の前の二人に彼女の持つ力を注ぎこんだ。それは僅かだ、しかし二人に希望の火を、再びともすには充分だった。


「わしにも見えるぞ、ちっぽけな光が。だがそんなものでどうする、お前達の持つ力の殆どが消えた今、抗う術などありはしまい」

カグマが哀れむ様二人に言った。

「エスメラーダの人魚をなめるな!」

「何だと!」


「ミーシャ、お願い。タマヨセを使って!」

セイレが三体の小さな人魚の像をミーシャに手渡した。

「何をするつもりだ、そんな小さな人魚が、巨大な龍にでも変わると言うのか?」

「私にはもうクシナの力は残っていない、そう思っているの?おあいにく様、エスメラーダにはアガルタの人魚がついている。ようやくわかった、人魚の試練の意味が……」


再度セイレが、ミーシャに頼んだ。


「ミーシャお願い、エスメラーダ人魚をタマヨセして、そしてもう一度やるのよ、虫人達の再誕のために!」

「そうこなくっちゃ、あなたの髪、声、足それを何の意味もなく、人魚が取り上げるはずはないと私も思っていた。ようし、この星の最高の巫女、ヒメカよオロシアーナの奥義、とくとご覧あれ!」

アマオロスの力を降ろし、オロシアーナは奥義「アマテラス」を使った。


「オローシャ、フリフノーレ!」


パピリノーラからもらった最後の力を使い、ミーシャは術式を組むとタマヨセを行なった。天空からエメラルドグリーンの光が降り、次々と三体の小さな人魚を刺す。そして再び天空は元のように閉じた。続いておこる沈默は、やがて懐かしい声で破られた。


「エスメラーダ人魚、マーラ!」


アマオロスの力を降ろし、オロシアーナは奥義アマテラスを三体の小さな人魚に使った。振り出される、人魚のひとつから槍を持ち現れたのは、かつて七海の人魚を束ねたマーラだ。


「ついにこの時がやって来たのですね。マーラの槍はこの通り、曇りひとつございません。これであのお方とともに戦いなさい」

マーラの槍を受け取り、セイレはその柄から七海の人魚の力を受けとった。セイレの身体にアガルタの力が満ちて来る。それを確認すると人魚は次第に輪郭が薄くなって行く。


「これで本当にお別れでございます。

「マーラ、今迄ありがとう」

「あら、泣き虫はかわりませんね」

「マーラったら……」

セイレはマーラの槍をまっすぐに構えた。

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