117.ともに…
ともに…
次元の谷のシャングリラが復活したのは、再びレムリアを動かした事に起因する。結界が解かれ、マルマの力も解放された。タオでさえもそれは踏み止まっていた、異なる次元の「創造神」を融合することはこの宇宙さえ消滅しかねない。なっぴはそれをしようとしている。
タオは認めない、マナとヨミから生じた「ヒドラ」はタオが作った「マルマ=ラグナ」とそっくりなことを、そして「マルマ」とはタオが再誕した姿なのだということを。ヤマタノオロチ、シュラ、スサノヒドラを相手に、マンジュリカーナは戦う。その結果生じたイト、ラグナ、ヒドラ(ナナ)。最後に現れた「ビドル」は、浄化されるべきは「マンジュリカの力」により、集められたなっぴの「虫人達の遺伝子情報」だと言う。「ビドル」はマンジュリカーナを守っているはずなのに?
「タオでさえ、それは控えていた。なっぴが、マナとヨミの融合で生じる凄まじいエネルギーに到底持ちこたえられるはずがないからだ。カグマが粉々に砕け散ったように……」
ビドルはなっぴに最大の危機が訪れた時、なっぴを救おうと現れた。すでに浄化されつつあるなっぴには抗う術も尽き始めていた。しかし、なっぴは由美子を回復させた「インディゴ・ソード」を見て思った。
「まだ可能性はある、虫人達はここにある」
なっぴは胸を押さえた。
「マンジュリカよ、私が間違っているのならこの体を存分に引き裂くがいい。しかしそれでも一分の可能性があるならば、この私とともに戦え!」
「無駄だ、すでにお前には虫人達の遺伝子情報は残っていない。ただの人間に何が出来る、いや……?」
ビドルも気が付いた、なっぴが叫んだ言葉を思い出した。
「マンジュリカよ。この私とともに戦え!」
シルティ=パピリノーラのもとに集まったのは、アマオロスの意思を今に受け継ぐ者達の力だった。地球の生き物を生み、守りそして育てたのは「聖三神」中でも「アマオロス」だった。「アマオロス」は時にはマナの光を借り、またヨミの闇をも操る、その二つの力がこの星の生命力として永遠に続くように、ツクヨミはヒメカに「オロスの術」を授けた。
再誕の術「タマヨセ」「タマフリ」「タマムスビ」一連の奥義「アマテラス」と違い、創造の術を「ツクヨミ」と呼ぶ。だが、この術は一人では使えない。しかも一度きりのものだった。「ツクヨミ」は「天・地・海」の女神の意思を集めねばならない。
「赤く燃えるこの星が天と地と海とに分かれ、ようやくその形も固まり始めた。ツクヨミはアマオロスに後を託した。天空族、キョウリュウ族、カイリュウ族、その生命の元を分け与えた女神の名がオロシアーナ、クシナーラ、そしてパピリノーラだった」
「マンジュリカ」以外にそれを知るものはいない。異次元のなっぴもおそらく知っているだろう。アロマの持つ力は香奈と、シルティの姿をテンテンに送った。
「あれは、香奈様とシルティ。それにあの藍色の光は、たった今浄化された藍色の宝玉」
テンテンは確信した。
「やはりルノクスは同じ地球の別の次元にある。アマトとは次元を超える扉のことだわ。そして未だなっぴの肩で輝く宝玉は私の守護色……」
彼女は、何故「インディゴ・ソード」がビドルに一太刀あびせることができたのか、何故由美子に吸い込まれていったのか、その理由を考えた。
「きっと、守護色は今でも由美子や私を守っている。あの宝玉は私そのものなのかもしれれない」