116.創世神話
創世神話
「地球には、やがてシュラが再び現れる。それを予知するもの、オロシアーナ。シュラに抗い、そして勝利するものマンジュリカーナ、再び命を生むものクシナーラこの三神がこの星を司っている」
「突然、マイ。何を言い出すの……」
セイレが唖然とした。
「しっ、黙ってシルティがマイに憑依している」
「はじまりのものタオ、軽きもの天空のマナ、重きもの漆黒のヨミ、そして混沌のマルマが生まれる」
それはタオの声なのか、それともマンジュリカなのか不明だ。
「この星ではアマテラス、ツクヨミ、アマオロスである。かの星ではマンジュリカ、サクヤ、ヒドラと呼ばれた」
「それが聖三神と呼ばれた神なのね」
聞き入るのはミーシャ、セイレ、タイスケだ。香奈はシルティの肩をしっかりと抱き、その場に倒れない様に支えていた。マイはルノクスの「創世神話」を続けた。
「ルノクスのマンジュリカ、サクヤは不完全なヒドラを見捨てなかった。そして次の神の誕生となる。バジェス、ノアは原始生命体としてイブを出芽し、虫人を生み再誕を繰り返していく。ヒドラはようやく巡り会えたひからびた手首を使いラグナを生んだ」
いよいよ雌雄異体の神がルノクスに生まれた。地球ではイオナ、クシナ、ヒメカの女神。オロチ、ミコト、マオの創造の神だ。ミーシャもセイレもその記憶を再確認した。
「雌雄異体の神として、バジェスは女神リリナ、ノアは兄弟神ゴラゾムとビートラを残した。そしてラグナは女神サクヤと姿亡き神ビドルを残した」
「ルノクスにシュラは現れなかった、それが私には解らないわ。セイレどう思う?」
「シュラはルノクスにも現れていたのよ、しかしそれは形のないものだったに違いない」
「そうだ、それは虫人を絶滅に導こうとしていた」
マイが話しを変えた。
「シュラは地球に何度も現れた。大規模な地殻変動、気温の変化、恐るべき捕食者、破壊神、微小な殲滅細菌、大量破壊兵器……。ルノクスでは亜硫酸ガスの噴出が虫人を死滅させ、次第に原始生命体のもつ生命力の枯渇を生じさせた」
その姿亡き「シュラ」から虫人を救ったのがリリナ、ゴラゾム、ビートラ、サクヤ、ビドル。ルノクスの創神たちは、虫人の絶滅を回避したのだ。異界に落ち着くとリリナは結界を拡げ、地球の亜硫酸ガスに絶えれるように虫人の呼吸器官が成長する日を待ち続けていた。
「その虫人達を浄化し、新しく生み出そうとするわしに何故抗う、聖三神たちよ」
シルティの体内で美奈と里奈の持つ「ツクヨミ」の力を嗅ぎ分け、ヴィオラとアイリスの糸はすばやくそれをつなぎ始めた。それはパピリノーラの出現のためだ。パピリノーラはツクヨミの力を集める事ができる。戦い続けるなっぴの元へ、マンジュリカの認めたマンジュリカーナ、なっぴの思いがアロマの娘たちを動かしていた。それを知ったマイは自分を取り戻しつつあった。
「私はルノクスのイブになんてならない。もし虫人が不完全であったとしても、私は彼等にまた会いたい」
サクヤがそれを聞きマイに向って話した。
「マイ、もしそれが虫人をもう一度絶滅させたとしても後悔しないの?」
マイは答えなかった、答えはもう決めていたのにも関わらず……。マナとヨミが融合すれば、凄まじいエネルギーが発生する。そのエネルギーをなっぴは上手く「織り込んで」いた。それが虫人の変異細胞「ゴラゾーム」の持つ能力だ。しかし、それは永遠のものではない。「諸刃の剣」まさに「爆弾」を抱えている彼女だった。
ビドルと浄化の戦いを続けるなっぴがモニターに映っていた。
「なっぴ、それでいいのよ。虫人達の遺伝子情報を浄化されても、誰一人あなたを恨んだりしない。むしろ皆あなたの体を心配しているはず、あなたの浄化を願っているはずよ」
サクヤはなっぴにそう言った。
「そんなことない!」
「マイ、なっぴは絶対約束を守る。あんたも知っているでしょう!」
セイレとミーシャの叫びだけが「amato2」の中で空しく響いた。