108.もうひとつのルノクス
もうひとつのルノクス
「サクヤから私に伝えられたのは、虫人のイブとなるだけではないの。この星は別の次元に存在する『もうひとつのルノクス』だということなの」
「そんな馬鹿な!」
「そんな事があるわけない」
タイスケ、そしてミーシャが叫ぶ。
「第一、私たちは、たった今地球から……」
セイレが落ち着いた声でミーシャに言った。
「……でも、私たちの地球から、このルノクスは近すぎる。ここが地球だとすればその謎は解けるわ」
セイレは落ち着いてそう言った。
「マイ、一体この次元は誰が作ったものなの、やはりサクヤ?」
「いいえ、マンジュリカーナ様。この次元はなっぴによって作られたものなのです」
「なっぴが?」
「ルノクスは、ゴリアンクスが星の寿命を終えると、それまでのバランスを崩して一気に動き出しました。そしてその先にある『ブラックホール』に吸い込まれる運命が待っていました」
「それをなっぴが知ったのは、いつのことだったの」
香奈が問い続ける。
「なっぴはもう、随分前からルノクスが消滅する事を知っていたのだと思います」
そう香奈に答えたのは、セイレだ。
「随分前から、何故そう思うのセイレ?」
「私がヒドランジアに覚醒した時、イオナ・アマテラス様がおっしゃっていました」
マイが、こう言った。
「おまえもあの娘と同じ様に、滅んでしまう運命の虫人達に加担しようとしているのか。お前たちの生命を縮めてまでも……」
「その時は何のことか私にはわからなかった。でも、次元を超える力を持って、ここへ訪れる度に私は気づいたの。この王国はルノクスになるために次第に成長していると」
次元の谷に葬られたはずの「ヨミの戦士」達が「ラグナ」によって蘇った。それを目の当たりにしたマイはこの次元の谷の存在理由を考えた。
「次元の谷は、きっと何かを成そうとしている。時間が急速に流れているその中で、王国だけが頑丈な結界に包まれていのは、この国を時間の経過から守っているのではないかしら。そう私は考えてみた、王国を『時間の経過、絶滅の未来』から守るためにリカーナ様が作ったのだと」
「あなたのいう通り、リリナはルノクスがやがて消滅することを知っていた。リカーナも同じ、そしてこの星に着きレムリアは異次元に落ち着いた。しかし……」
王国はやはり永く持たなかった、いや滅び去る運命だったのである。
「なっぴに試練が課せられ、時に傷付き倒れる。なっぴが息を吹き返す度にこの異次元の『ルノクス』には再生の力を与えられる」
「それって『この星のためになっぴが存在している』ってことと同じじゃないの!それはまるでイブの役目と同じ……」
「それが、マンジュリカーナ、マンジュ一族の務め。ただ、なっぴは急ぎ過ぎている、私も知らないうちにここまで巨大な『ルノクス』を作っていたなんて。これはなっぴだけの仕業ではないわね、これだけの結界とこの緑の大地、白状しなさい共犯者たち!」
香奈が恫喝した。「amato2」の中は一瞬、沈黙した。