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なっぴの昆虫王国 イブ編  作者: 黒瀬新吉
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10.フローラル

フローラル


「リリナはリカーナを産んだ後、わしの『マルマ』の力を使い二つの『原始生命体』を創った。ひとつは『ノア』そしてもう一つを『バジェス』という」


「虫人は、やがて進化し、『イブ』はすでに必要がなくなった。『生殺与奪の力』は『マナ』と『ヨミ』の双方を持つ女王『マンジュ』が産まれると、その身体に封じられたとされている。そのためこの星では、虫人は他の知的生命体と変わらなく新たな生命が生まれるようになった。


 マルマは話し続ける。ダーマは自分の身体に『ノア』を創り出す力があることを「神の子」の力だと思っていた。だが、それは『イブ』となった「リリナ」のもたらしたものだった。しかし、ダーマはもう驚きはしない。「香奈」の持つ再誕の術も「シルティ」の持つカンブリア族の力も、ゴラゾームをまとった「サクヤ」の攻撃さえ包み込む「マナ」の力や「巫女」たちの術を、今までダーマは目の当たりにしていたのだ。リリナいやイブは「宇宙創始」の女神を産み終えると、やがて、娘リカーナの前から消えてしまった。


「そのリカーナと、ゴラゾムの間に産まれたのが、マンジュ(マンジュリカーナ)なのだと、王国の言い伝えにもある。マンジュは宇宙を航行中『レムリア』の中で産まれたのだと」

その声が聞こえた方向にマイは振り返った。


 テンテンがようやくコマンダーから元の姿に戻り、由美子に肩を貸し立ち上がる。由美子は死んではいなかった。その代わりに空色シジミの「パピィ」が持つ力を振り絞り「闇のなっぴ」の破壊光線を受け止めていた。由美子は散らばった小さな羽を見て、これまで由美子に力を与えてくれた空色シジミの最期を悟り、天空を仰いだ。

「今、涙は必要ない、パピィ、ありがとう」

天空の一部が渦を巻き始めた。由美子はフローラルとして、初めて人間界に立った。まさにその姿は、「フローラ国の女王」の姿だった。


挿絵(By みてみん)


「マイ、何か来る、空間が大きく歪むわ、早くヒドラ・ボールを使って!」


オーロラの光


「わかったわ、ヒドラ・ボール!」

由美子の指差す方向、マイは次第に空間がねじ曲がるのを見た。マイは次元を超えた経験はない。母、筆頭巫女「ラベンデュラ」が、その時は次元の扉を開いたのだった。「次元の谷」の強烈な流れを渡れる者はごく限られた者しかいない。彼女たちの感じた、この異常なほどの次元の歪みは、おそらく王国の消滅を意味している。それを否定する材料は残念ながら見当たらなかった。


 ヒドランジアことマイは、フローラルとして巫女となった由美子をヒドラ・ボールで包んだ。そして自らもその中に入ろうとした、ヒドラ・ボールは二人を気づかうマイをも素早く、吸いこんでいった。すでにレムリアは、その姿を現し始めている。二人が消えたあとには「ブルー・ストール」にくるまれたダーマだけが取り残された。マルマはそれに気付くとこういった。

「そこで、じっと眺めていろ『われ』につながるものよ」


そう言うとマルマは再度コマンダーの中のナナにこう促した。

「さあ、ヒドラよ、わしのもとへ来る決心はついたか?」

その声にようやくテンテンがなっぴに目を向けた。

「あれが、なっぴの姿……」


ナナはその言葉に誘われるまま、コマンダーから出ようとしている。その手をテンテンが強く握った。

「行ってはだめ、ナナはもう私たちの仲間じゃあないの。それに、まだ私たちは負けてはいない」

しかし、ナナを引き止めるためにどうすればいいのか、テンテンには答えが見えなかった。


「今度は私たちがなっぴを救う」

「amato2」の中から白装束の「オロシアーナ」がしっかりと立ち上がった。


「マルマ、あなたは蘇るべきではない。すでにこの星はタオ、マナ、ヨミ、そしてマルマ、あなたたちの手を離れてしまっている」

立ち上がった白装束の「オロシアーナ」は押し潰れたタイスケのカプセルを握りしめていた。

「オロスの巫女は、この星の神より生まれた。この星のすべてのオーロラの光をここに集める!」


「おや? まだ生きていたのか、この星の巫女めが」

「あいにく、もう一人いるみたいよ」

それに呼応したかの様に、巨大な水柱が海底から次々と吹き上がる、それに押し上げられるように「エスメラーダ」が現れた。その側には二頭の龍が控えていた。緑輝く「エスメラーダ」は澄んだ声で言った。

「七海を預かる、カイリュウも同じよ」

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