第4話 検証と対人戦
検証は終わった。
原因は【経験値ブースター】の暴走だ。
いや、それ以上かも知れない。
そして、【魔力感知】もステータスポイントから逆算してみたところ、俺が取ったのはレベル3で間違いなかった。
多分街で街路灯を感知した時上がったんだと思う……一気にMAXまで……。
兎に角、検証後の俺のステータスがこれだ。
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名前:クウヤ・レナトス
種族名:人間
年齢:15
生命力(HP):998/1270
魔力量(MP):169/180
活力(VP):1867/2149
=基本ステータス=
力(STR):14 *up
素早さ(AGI):16 *up
器用さ(DEX):10 *up
認知力(PER):11 *up
耐久力(END):9 *up
魔力(MAG):14 *up
知力(INT):11 *up
=スキル=
《絵画3》《速読1》《料理1》《魔力感知MAX》 *up《気配探知2》 *new《短剣術・MAX》 *new《物理魔法3》*new《火魔法3》 *new《風魔法3》 *new《水魔法3》 *new《土魔法3》 *new《光魔法2》*new《闇魔法2》*new《付与魔法2》*new《死靈魔法2》*new《儀式魔法1》*new《召喚魔法1》*new《精霊魔法1》*new《魔力隠蔽1》*new《術式転写1》*new
=アビリティ=
《鑑定・MAX》 *up《自動通訳能力》《睡眠効率・MAX》《経験値ブースター・MAX》 *up《魔導の心得4》 *up《恐怖耐性2》 *up《混乱耐性2》 *new《短縮詠唱・MAX》*new《無言詠唱・MAX》*new《思想詠唱・MAX》*new
ステータスポイント(SP):213 *up
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鑑定以外にも、色々上がっている。
理由は実戦を経験した為だ。
俺が頑張って鑑定を繰り返していると、いつの間にかゴブリン10匹が近くまできていた。
当然戦闘になり、短剣一本で圧勝した。
苦戦したのは最初の一匹だけで、残りは短剣で首と心臓の一刺しで作業するように処理できた。
いつの間にか【混乱耐性】も手に入り、パニクることも無かったし、何よりゴブリンが弱かった。
アナウンスとかもなく、ステータス画面を一々開いて確認していたわけではないから、あくまで予想にすぎないが、その戦闘で色々上がったのは間違いないと思う。
戦闘中に囲まれないようにやっていたゴブリンの位置把握から、【気配探知】が手に入り、【魔力感知】の影響で【魔導の心得】もレベルアップし、それにつれて3レベルまでの魔法属性も手に入った。
そして、こんな事になった全ての原因、【経験値ブースター・MAX】。
ゲームではこのアビリティにレベルは無かった。
多分、この世界が作られる時、レベルアップするようになったのだろう。
だが、そうなったお蔭で、『経験値を得る行為』にも経験値が入るようになってしまった。
『経験値を得る行為』は『生きること』にも言い換えられる。
つまり、八時間以上生きてさえいれば、【経験値ブースター】に入る経験値も65536倍になって、経験値ブースターのレベルアップの加速化し、MAXに達しするわけだ。
ちょっとややこしい説明になってしまったけど、こうなった結果【経験値ブースター】は、剣の一振りで256倍の経験値、それを30分間続ければ65535倍、その後はずっと65535倍と言う、この上ないチートになってしまった。(これは短剣で適当に検証して分かったことだが、多分ゲームの基準通りなら間違いないと思う)
しかし、この戦闘のお蔭で、漸くこの世界の仕組みが見えてきた。
いや、仕組みと言うより、創世者である魔道士がどれだけ適当にこの世界を創ったかが分かった。
この世界はゲームと小説の基盤の上に地球のような環境を用いて創った世界ではなく、地球のような環境の上にゲームと小説の設定を上書きして改ざんした世界だ。
同じように聞こえるだろうが、この二つは大きな違いがある。
前者なら、同じゲームのルールが地上の全てに適応されるが、後者はゲームのルール通りに動くモノと地球の法則に従うモノが分かれる。
そのいい例がドロップアイテムだ。
俺がゴブリンを殺して少ししたら、ボブリンの死体が空気に溶けるように消えて、その場所に【魔石】とゴブリンが身につけていた物がそのまま落ちていた。
だが、人間を含む一般動物を殺せば死体が残る。草原で死んだばかりの動物の死体を発見したから、多分間違いないだろう。
ゲームでしか登場しないものは死ねば、消えてドロップアイテムを落とす。地球のものは死体が残る。
こういう仮説が立てられるのではないだろうか?
この仮説が正しければ、消えた魔物は時間が経つか、何かの条件をみたすと再びポップすると思う。
もちろん、後でこの仮設の例外を見つけることがあるかも知れないから断定は出来ないけど、今はこれでも十分な発見だ。
え?俺はどっちなんだって?
それは、分からないよ。俺が死なないと分からないことだし。
どっちか一方の特性だけ持っている可能性もあるし、自然界とゲームの特性を両方持っている可能性もあるし、まるっきり別の基準で動いている可能性もある。
一つだけ俺を特定する基準があるとすれば、転生者ってことだな。
つまり、俺の前に来た転生者を調べてみると、自分の事も分かる……かもしれないってことだ。
だが、自分という存在を定義できないのは、正直ちょっと変な気分だ。
自分が自然の一部ではないかも知れないと思った瞬間感じた感情は……疎外感と言うか、切なさと言うか……ハッキリ言っていい気持ちではない。
それに加えて自分でもコントロール出来ない【経験値ブースター】と言うアビリティー……どんどん人間離れしていくのは、もう決まったようなものだし……。
元の俺の性格だったなら、今頃、パニクっておどおどしていたはずなのに、異常すぎるぐらい落ち着いていられるのは、多分【混乱耐性】と【恐怖耐性】のお陰なのだろう。
心配性だった性格も相当変わってしまったような気がする。
どうやら、【恐怖耐性】が未来への心配から来る恐怖まで和らげてくれているみたいだ。
恐るべし、耐性系アビリティー。
◇
あれから三日が経った。
帰ってきて三日間生活する間、MAXに達した鑑定を使い、都市の人たちを確認してみたが、俺が立てた仮説は間違ってないみたいだ。
予想通り、普通の人は俺のように急成長するわけではなく、ゲームキャラの基本能力である【鑑定】を持っている人すらもなかった。例外なく、平凡な能力値とスキルを持っていたし、ステータスポイントすらもなかった。
【経験値ブースター】はゲーム【アーデロス英雄伝】の初心者向けのアビリティーとして、ステータス画面を開かないと得られないものだから、多分これを持っているのも俺だけだ。
一般人の基本能力値は平均10以下。冒険者、衛兵などの戦闘職でも30以下だった。一番高かった冒険者が平均50ぐらい。
それに比べ、俺はたった三日間で平均100を超えている。
実験がてらやってみてわかったけど、指で自然石に穴を開けることも出来るステータスだ。多分それ以上のこともできると思うけど、実験の必要はないと思う。
これからそれ以上のことも直ぐできるようになるだろうから……。
これでもう諦めもついて、この数字が何処まで上がっていくのか興味さえ出てきた。
何時までウジウジして自分の成長に怯えているわけにはいかないし、これからは特に気にせず、自分の成長を見届けるつもりだ。もう、成長をコントロールするのは諦めたけど、ただゆっくり観察していけば何かいい考えが浮かんでくるかも知れないし。
まずは、250がMAXだったゲームの基本能力値が本当にそこで頭打ちになるのか、からだ。
それと、スキルとアビリティーの中で料理などの知識が必要な物に関しては、知識量が経験値として計算されるらしく、何度か料理をしても……と言っても獣を焼いて塩をかけて食っただけだったが……料理レベルは上がらなかった。
多分、鍛冶とか木工とかの機能が必要な部分もタダではレベルは上がらないと思う。
魔法的部分は未だ殆ど未検証だ。
まだ、この世界の魔法関連常識を知らないから、迂闊に使って人に怪しまれたりしたくないし、すでに魔法属性自体は手に入れて置いたから何時でも使えるだろうから焦る必要はない。
それと、初日の深夜、依頼の品を納品した金とゴブリンの魔石を含む所持品を売った金を足したら銀貨4枚と銅貨13枚になったので、銅貨10枚を払って安宿を取った。
ゲームではメニューも開けて、重さの制限がある(STRで増量できる)インベントリーもあったら物運びの心配など余りしなかったけど、それなしで、物をマントで包んで持ってくるのに一苦労した。
まぁ、俺の準備不足のせいだから、その次の朝真っ先にリュックと大きめの袋を二つほど買ったけど……。
その後三日間、できるだけ色々依頼をこなした結果、俺の手の中に銀貨26枚と銅貨40枚が集まった。
ついに……俺は武器を買える。ダガーを卒業できる。
この国の、いやこの大陸の貨幣は、金貨の【パール】と銀貨の【ロア】、銅貨の【セン】で、1パール=100ロア=10000センだ。
やはり、俺が持っている金はこの国では使われてなかった。
この都市で一般人の月給は5ロア(銀貨5枚)ぐらいで、日本の平均月給を30万円で計算すると、1センは60円位。
今日までは10セン(600円)のボロい安宿だったけど、今日からはランクを上げて20センぐらいの宿も取るつもりだ。本当は風呂が欲しいところだけど、風呂ありの部屋は最低でも銀貨1枚はかかるそうだから、贅沢なことは言えない。
だが、この街は基本物価が安い。
特に食い物と、普段着、他の日用品も中世並の文化からは考えられないほど安かった。
日替わり定食(ここでは【お任せメニュー】と言う)の値段は5セン(300円)。普段着の上下セットで24セン(1440円)。石鹸が3セン(180円)と、本当に予想より遥かに安い値段に、思わずロガンさんたちに尊敬心まで覚えてしまったぐらいだ。
え?石鹸とか、歯ブラシなどのものは、現代の技術と大量生産あって初めて安くなるモノじゃないかって?
そう。それが気になって俺も商人に聞いてみたのだ。
「何故こんなに安いのか?」と。
すると、「大工房がこの街にあるから安い」と言う返事が返ってきた。
そして、その大工房のオーナーが【トーリアス】。つまり、ロガンさんってことだ。
【トーリアス家】がこの街一のファミリーなのは間違いないようで、そのことに気づいて見回してみると街のあちこちで【トーリアス家】の家紋である、サーベルに巻き付く蛇の紋章が目に入ってきた。
他の紋章もあったけど、一番多かったのがロガンさんの家紋だった。
少し話が逸れてしまったが、要はマルパスの物価はとても安いってことだ。
だが、武器とか防具類の値段は、決して安くは無かった。
多分、戦争物資だから色々と税が付いて高く売られているんだと思うけど、料理に使う包丁すらも最低銀貨1枚なのは正直どうかと思う。
兎に角、俺は今日短剣ではない新しい武器を買う。
目当てはバスタードソードだ。
ファンタジーで良く登場する武器だが、案外使い勝手が悪いと言われているその武器の値段は、銀貨20枚。
無論それより高い物もあるけど、昨日下見がてら寄ってみた武器屋で丁度買いたい物が見つかったのだ。
俺の鑑定で確認した所、必要能力値がSTR12にDEX36と言う、一般人には使いづらいその剣は、【放浪剣士ガルバロスの剣】と言う名前のレア度6の武器だった。《攻撃力補正ランク》はDだが、36以上のDEXは5ポイント当り、攻撃力2倍上昇のオプション付き。
ちなみに《攻撃力補正ランク》は、簡単にいえば、武器自体がどれだけの力を持っているかを現すランクだ。
S+からF-まで14ランクがあり、F-は使用者が持つ基本攻撃力のまま、S+まで上がれば1076%の追加ダメージを与えることができる。(ゲームでもS+は一振りしか登場しなかったし、それすらも強制イベントで壊されたけど……)
三日間の経験で、力加減によって攻撃力が変わるなど、完全にゲームシステム通り動いてないのは分かったけど、最大ダメージはかなりゲームシステムに近い感じだったから、多分このシステムも反映されているんだと思う。
鑑定でもしっかりランク表示出てたし。
攻撃力補正が26%しかないランクDだけど、ゲームで最高レア度が10だったことを考えると、とても銀貨20枚で買えるような武器ではないのは間違いない。本当に、願ってもなかった掘り出し物ってことだ。
昨日は手中に銀貨が20枚ちょっとだったから、宿代のせいで買えなかったけど、今日は違う。
今は昼過ぎ、いち早く仕事を片付けた俺は、お金を手にウキウキしながら武器屋に足を運んだ。
運んだのだが……。
「ちょっと待ったぁ!その剣、私が買わせていただこう!」
剣を手に取って金を払おうとした瞬間、いきなり後ろから声をかけられた。
振り返って見ると、防御力高そうな……いやらしい意味ではなく、本当に防御力が高そうに、ついでに値段も高そうに見えるハーフプレートメイルを着た女騎士が立っていた。
ちなみに、美人だ。
ギルドの受付のサナちゃんのような可愛系の美人ではなく、クールビューティーと言う言葉がぴったり当てはまりそうな黒いショットカットの美人だった。薄い灰色の瞳もとても魅力的だ。
だけど、いくら美人でも「買わせていただこう」はないと思う。
何様のつもりかは分からないが、そういう上から物言う人は好きではないんだ。
「断る」
「譲れ!」
譲る理由がない。
少し気分が悪くなってきた。
別に武器に欲を出しているわけではないけど、この女の言い方が気にいらない。
俺は無口な店主に銀貨20枚を握らせて女の目を睨んだ。
「生憎だが、これはもう俺の物だ」
「おまっ!汚いぞ!」
「汚いも何も、あんたが話かけなかったら、元々こうなっていたんだ。だから諦めて他を当たれよ」
「二倍出す!だから譲れ!」
マジで気に食わないな……。
そこそこ身分が高いようだけど、こんな態度見過ごす程俺は人間ができちゃいないんだぞ?
そもそも、使えもしない武器を買ってどうするつもりだ?
俺が鑑定でみた、この女のステータスはこうだ。
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名前:???
種族名:人間
年齢:17
生命力(HP):1412/1412
魔力量(MP):121/121
活力(VP):2129/2237
=基本ステータス=
力(STR):35
素早さ(AGI):23
器用さ(DEX):14
認知力(PER):18
耐久力(END):32
魔力(MAG):6
知力(INT):5
=スキル=
《気配探知1》《長剣術1》《槍術3》《盾術1》
=アビリティ=
《物理耐性1》
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この剣に対して必要能力値が足りない。
つまり、分不相応の物を欲しがっているってことだ。それだけではない。
スキルレベルを見ると、この女の主武器は槍。
剣はせいぜい嗜み程度の腕前。
こんな女に使われてはこの剣が可哀想だ。
「あんたさ……」
「なら三倍だ!!」
ああ、もうだめだ。頭に来た。
人を金に釣られる魚みたいに言いやがって。
「おい。これ持って」
俺は剣を鞘ごと女の目の前に突き出す。
「譲って……くれるのか?」
「違う。実験だ。あんたがこれで俺を攻撃する。10手譲ってやろう。俺に一発でも当てたら買った値段と同じ銀貨20枚で譲ってやるよ。連速攻撃でもなんでも使っていいぞ。連速攻撃はセットで1手扱いしてやろう」
そう、実験だ。
対人戦で、何処までシステムが働いてくれるのか検証する。
無論メインはこの女の勘違いを正し、傲慢な口を黙らせること。実験はそのついでだ。
「……何のつもりだ?まさか、傷害罪で私を軍に突き出すつもりか?」
「そんなことしねぇよ。ここに証人もいるんだ。あんたの罪にはなれない。な、おっさん?」
俺の質問に武器屋のオヤジが無言で一回頷く。
この女より、オヤジの方が何倍も聞き分けがいい。
「……なら、何処でやる?ここじゃ狭いだろう?」
漸く納得したようで、女が俺の手から剣を受け取った。
すると、武器屋のオヤジが「裏庭」と言いながら後ろにある扉を指差した。
このおっさん、マジで気が利くな。
話が分かる人は好きだぞ。
ゲームで回避率はAGI、DEX、PERが関わる。それに比べ攻撃成功率はSTR、AGI、DEX、PERだ。
一般的には回避率より攻撃成功率が優先するのだが、この女のSTR、AGI、DEX、PERの合計は90,それに対し俺のAGI、DEX、PERの合計は311だ。
これぐらいの差があると、油断なくかかれば100%回避できる。
それに、向こうは必要能力値が足りないせいで、足りないポイント当り攻撃成功率が3%減。よって、22ポイントも足りない武器での攻撃成功率は66%減になる。
もちろんゲームシステム通りになるわけではないだろうけど、ここまでいい条件でシステムと実戦の違いを確認できる機会は滅多にない。
良い実験台になってくれよ、女騎士さん。
裏庭の方へ場所を移した俺達は少し距離を開けて場所を取る。
武器屋のオヤジは店番するそうで、参観人はいない。
「構えないのか?」
「必要ないからな」
「見たところ冒険者のようだが、ランクは?」
「知ってどうする?低かったら手加減してその剣諦めるのか?」
「諦めない」
「なら、必要ないだろう。さっさとかかってこいよ。ヘタレさん」
俺の挑発に女騎士が構えを取る。
左利きの片手構えだ。STRは十分なせいか、中々振れのない構えをとっている。
そして、少し姿勢が低くなったと思った瞬間、剣先が俺の右肩の前に現れていた。
俺は、一発目は突きか……と思いながら、肩を逸らしそれを避けた。
「これで1手目のつもりか?連続攻撃でもいいと言ったはずだぞ?」
攻撃を避けられた女が再び距離を取るのを見ながら、そう嫌味っぽく口にすると、女が再び構えを取り、俺を睨んできた。
「様子見だ。素手相手に深手を追わせたくないからな」
「じゃ、今ので様子見なんか必要ないって分かっただろう?どんどん来いよ」
「言わなくとも、そうさせてもらう!!」
その言葉を合図に女騎士の波状攻撃が俺に迫る。だが、予想通りたった一発も俺にかすらない。
正直、拍子抜けだ。
斬撃は刃の方向がズレてるし、距離感も狙いも甘すぎ。
表情を見ると自分の思い通りに動かない剣に、四苦八苦している様子だった。
突きの方はそこそこ見ところがあったけど、やはり動きが剣向きではない。
大目に見てもコーボルトより少し上ってところか……。
色々実験がてら動きを誘導したりしたせいか、慣れない動きで自分の足で引っかかって転んだりしてるし……最初の大口は何だったんだ?
「連携攻撃含めてまだ7手しかやってないんだ。まだ息切らしてんじゃねぇよ」
「ま、はぁ、まだだ。まだ私は……」
「しゃべる前に息整えろよ」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
あ……こりゃ駄目だ。力み過ぎたせいで剣を持つ手が震えてる。今の状態じゃゴブリン一匹にも苦戦しそうだ。
まぁでも、今の7手で良く分かった。
DEXは器用さと訳されるけど、要は頭と体の繋がりに関わる数値ってことだ。頭で自分が思い描いた動きを体で再現する能力とも言い換えれば良いのかな?
PERは感覚器官の精密度に関わる数値で戦闘面で言えば状況把握能力だ。
STRは筋出力、AGIは姿勢制御を含む筋瞬発力。
つまり、DEXでマイナス補正がかかった状態で無理をすると、今の女騎士のように頭で考えた動きが出来なくなり、泥酔した酔っぱらいみたいな動きになるし、STRの出力コントロールも出来なくなって、AGIもまともに働かない。
その上PERの精密度も堕ちて、周りが見えなくなる。
非常に有意義な検証ができた。
おっと!また攻撃してきた。目は死んでないな。でも、息が整ったぐらいでどうこうできる状態ではないぞ?足ガクガクだし、速度も相当落ちてる。
そして、9手を最後に女騎士は俺の前で膝をついた。
「な……ぜだ……な、ぜ……こんなに……はぁ、はぁ」
「槍使いが主武器の代わりに振るう剣なんぞに当たってたまるか」
俺の話に女が顔を上げる。
うむ。やっぱり美人だ。でも、性格が気に食わない。ここ重要。
だから、遠慮なんてしないぞ?
「さっき言ってなかったけどな。俺はFランクだ。三日前に登録した新人冒険者なんだ。そんな人間に一発も当てられなかった。いくら主武器使ってないとはいえ、素手の人間相手に手も足もでなかった訳だ。それだけ、この剣はあんたに分不相応ってこどなんだ。分かったか!」
へっへん!言ってやったぞ!
少しは身の程を知って、鼻っ柱折れたか!
ちょっと子供じみた態度だと思えなくもないけど、俺の時間奪った自分を恨むんだな!
「し……」
ん?し?まさか、切れたか?17歳なのに、こんなので切れて「死ね」ってか?
俺は少し緊張して一歩下がる。
まだ剣はこの女の手にある。降る前に避けることなど造作もないことだけど、用心して悪いことはない。
「師匠!」
って、え?
「師匠?」
現在(実験の後)のクウヤのステータス
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名前:クウヤ・レナトス
種族名:人間
年齢:15
生命力(HP):8011/8011
魔力量(MP):622/641
活力(VP):13810/13899
=基本ステータス=
力(STR):98 *up
素早さ(AGI):151 *up
器用さ(DEX): 177 *up
認知力(PER):86 *up
耐久力(END):63 *up
魔力(MAG):72 *up
知力(INT):71 *up
=スキル=
《絵画3》《速読1》《料理1》《魔力感知MAX》 *up《気配探知MAX》 *up《短剣術・MAX》《物理魔法3》《火魔法3》《風魔法3》《水魔法3》《土魔法3》《光魔法2》《闇魔法2》《付与魔法2》《死靈魔法2》《儀式魔法1》《召喚魔法1》《精霊魔法1》《魔力隠蔽1》《術式転写1》《投擲術MAX》*new《追跡術4》*new《瞬歩2》*new
=アビリティ=
《鑑定・MAX》 《自動通訳能力》《睡眠効率・MAX》《経験値ブースター・MAX》 《魔導の心得4》 《恐怖耐性2》 《混乱耐性2》《短縮詠唱・MAX》《無言詠唱・MAX》《思想詠唱・MAX》《呼吸効率・MAX》《魔力自動制御1》*new《見切り4》*new
ステータスポイント(SP):745 *up
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《魔力自動制御》:魔力70で自動取得。大まかな魔力制御を無意識にできるようになる。レベルが上がるごとにその制御力が高くなる。
**魔法使用時に必要魔力が少なくなる。
《呼吸効率》:無呼吸運動可能時間が増えて、疲労度が半減する。
**MAXで10分。
《見切り》:女騎士との戦闘で手に入った能力。相手の動きが良く見える。PER70以下は取得不可。レベルアップすることにもっと良く見える。
**見切りのレベルがMAXに達するとアビリティー《???》自動取得。
《投擲術》:物を投げる技。《投槍術》とは別物。主に片手に収まる小物を投げる技。レベルが上がるごとに威力と的中率が上がる。
《追跡術》:足跡などの痕跡から色んな物が分析できる。PER30、INT20で自動取得。後は使用しないと成長しない。
《瞬歩》:STR、AGI、DEX、PER、ENDが各40以上で自動で取得。活力を消費して超高速で動く事ができる。レベルアップすることに、使用できる時間が増える。
《短縮詠唱》:詠唱を短縮できる。
《無言詠唱》:言葉なしで詠唱を唱えられる。
《思想詠唱》:思想が詠唱化する。決まった詠唱ではなく、魔法の現象を思うだけで詠唱に変わる。
《光魔法2》:聖属性とも言う。治療、治癒、呪いの解除などができる。【魔導の心得】の3で習得。
《闇魔法2》:影魔法とも言う。精神系魔法と空間系魔法を含む。ただし色んな場所で禁術使いされている。【魔導の心得】の3で習得。
《付与魔法2》:生物と無生物に魔法を付与できる。属性魔法レベル2まで。【魔導の心得】の3で習得。
《死靈魔法2》:アンデッドを召喚し使役できる。レベル2はゾンビとグールと骸骨兵を2体まで。ただし、死体が必要。【魔導の心得】の3で習得。
《儀式魔法1》:各属性の魔法を組み合わせて、複雑な現象を起こす大儀式を行うことができる。ただし、術式構成の知識が必要。組み合わせる魔法は属性魔法レベル1まで。【魔導の心得】の4で習得。
《召喚魔法1》:生物を召喚できる。レベル1は契約を交わした魔物1体だけ。【魔導の心得】の4で習得。
《精霊魔法1》:精霊の力を借りて魔法を使用できる。MP消耗なし。ただし、精霊契約が必要。【魔導の心得】の4で習得。
《魔力隠蔽1》:自分の魔力を隠すことができる。レベル1の時はレベル2の魔力探知で効果なし。【魔導の心得】の4で習得。
《術式転写1》:魔法をスクロールに転写する事ができる。レベル1はレベル1の魔法まで。【魔導の心得】の4で習得。