第六話
第六話
俺は、木刀の一本を無限収納に仕舞ってから、早速達磨状態にした魔族に話を聞く事にした。
「おい!お前達魔族は何が目的で初代竜神達に攻撃を仕掛けたんだ?」
俺がそう尋ねた (問い質したになるかも)のだが、魔族は両手足を切り落とされた痛みでのたうち回るばかりで、答えようとしなかったと言うより答えられなかった。
「五月蝿い!さっさと答えろ!それとも死にたいのか!」
助けるつもりは更々(さらさら)無いが、面倒臭くなった俺は、殺気を込めた威圧を魔族に向かって放ちながら再度丁寧に (あくまでも俺の主観ではあるが)、そして、優しく (これもあくまで俺の主観ではある)尋ねた (一般的には問い質したに入るかも知れないが、これ相手では仕方がないと思う事にしよう)。
俺の殺気で、少し冷静さを取り戻したこの魔族 (いい加減、神眼で確認した名前を言えば少しはこちらの話を聞くかも知れないが、向こうは名乗っていないし、神眼の事も知られたくないと言うのもあるが、「もうこいつの事は、クズで良いや。」と思ってしまっているので、この魔族の事を名前で言う事は生涯無いであろうと思う。)は、自分の所属している上級魔族の事ぐらいしか話さなかった。
と言うより、どうして初代竜神達に攻撃を仕掛けたとか、一切知らなかったし、自分が仕えている上級魔族の名前すら知らなかった。
この魔族の仕事は、死にかけている竜達がドラゴンゾンビに堕ちるのを見届けるか、促す事と、ドラゴンゾンビに堕ちる事なく死んでしまった竜達の死体を集めて、一度仕えている上級魔族の所に持って行く事であった。
上級魔族が竜達の死体を集めて、何をするのかも聞かされていない様だったが、恐らくは、他の竜神達の領域に攻め込むなり、人間や俺達の様な亜人と言われる種族に攻め込む時に使う装備品の素材として使うのが一般的であると俺個人はそう思う。
もし、死体を集めて、魔族自身の手で、何らかの方法でドラゴンゾンビを造るかも知れないし、死霊魔法で使役するかも知れないが、それはこの魔族が仕えている上級魔族のスキルが分からないので、今は分からないとしか言えない。
どのみち、初代竜神の領域の竜達の死体も、ドラゴンゾンビに堕ちてしまった竜達の死体も、俺が回収してしまったので、余り考えすぎてしまうのも良くないと思っておくとしよう。
さて、この魔族から聞き出せる事は聞き出せたであろうから、さっさと始末してこの場を離れるとしよう。
さもないと、この魔族の帰りが遅いと言う理由で、上級魔族やらに来られても面倒になるだけである。
まあ、レベル的にも負けない確率は高いであろうが、今の装備や、把握しきれていない自分のスキルやステータスの確認もあるので、今回の事の詳しい報告も兼ねて村に帰るとしよう。
一応、村長には初代竜神からの念話で少しは事情も分かっているだろうが、俺からの詳しい報告による村の今後の予定も早めに決めたりしないと、万が一にも魔族の襲撃が村にあると大変だから急ぐとしよう。
広さはある程度ある村だが、人口的には同じ面積の人間の街の方が多いし、魔族の被害も、村を攻めるより、人間の街の方が少なくて済む可能性が高い様に思う。
端的に言うと、俺の住む村は攻め込む価値がほぼ無いと言うのが正しいであろうが、魔族共がそこまで考えているかどうか分からない以上、早く帰ってしまうのが一番だと思うので、とっとと帰ってしまおう。
ステータスに対する身体の力加減は、帰りながらでも出来るし、スキルや新しい装備品等は帰ってからゆっくりじっくりとすることにしよう。
そう言う訳で、自分の知りうる全ての情報を喋ったこの魔族はさっきから、やれ「これで俺様の事を殺せばお前も破滅だ!!」とか、「どうせお前の様な小僧には、殺す勇気も無いだろう」とか強がったり、間接的な助命嘆願の様な事を言っているが、これ以上こいつの声を聞きたくない俺は、何の躊躇いもなく魔族の首をはねて死体を無限収納の中に、新しく 〔クズ〕と言うフォルダを作り、その中に収納した。
この魔族の死体を、俺の無限収納の中に収納しておけば、こいつ(クズ)の仕えている上級魔族も直ぐには殺されているとは思わないであろうと言う判断で収納した。
初代竜神の領域は結構な広さがあるし、上級魔族もこの魔族以外にも同じ様な命令を他の最下級魔族にしているであろうから大丈夫だと思っておこう。
一応、マップで領域内を検索してみたが、領域内にはこの魔族以外の魔族がいなかったのが少し不安になったので、狩りをしていた森と、村にも検索をかけてみたが、そのどちらにも今の所は魔族がいなかったので、村に帰る道中も度々(たびたび)検索をかけるとしよう。
この魔族の死体は、そのうち、適当なスライムでも見付けて、そのスライムの餌にでもしようと思う。
しかしそれは、スライムに対して悪いかも知れないなとも思ってしまった。
俺は、マラソンしている位のペースで、自分のステータスに身体を慣らしながら村に帰っていた。
竜達のお陰で俺のレベルもかなり上がったし、ステータスもかなり上がっているだろうし、スキルもかなりの数習得出来たであろうから、スキルと称号に関しては夜営と言うか、野宿と言うか、取り敢えず夜、寝る前に確認しよう。
その他、無限収納に収納されたアイテムや竜達の遺体 (敢えて死体よりも遺体と言ってみたが、後で武器や防具、その他のアイテムに加工出来る様になればしっかりと素材として利用はさせてはもらいますがね。)の仕分けは村に帰ってからか、スキルや称号の確認が終わってからになるだろうな。
夕方、ずっと走り続けているが、未だに初代竜神の領域の中心部にたどり着いた位だ。
「さて、そろそろ夜営 (野宿)の準備でもするか」
誰に言うでもなくそう言うと、初代竜神の遺体を無限収納に収納した時に、一緒に収納していた元々持っていた荷物を出して、夜営 (野宿)の準備をした。
辺りは森の中のために、木々やシダ植物系統がある程度繁っているが、すぐ近くに水深が浅く、幅が5m程度の川もあるので、夜営に適していた。
マップで確認してみたら、森と森との間にこの川がある状態だった。
この川から少し森の中に入った所位に、狩りが終わってから使う予定だったテントを張ってから、薪にするための倒木を探してから、無限収納の中に収納して、解体機能で薪を大量に作ると言う作業を何度か繰り返してからテントに戻り、火起こしをして保存食を食べたりして、一休みした。
一休みして落ち着いたので、ステータスや称号と、キルの確認を始めた。
「な、な、なんじゃこりゃ~!!」
自分のステータスを確認した俺は、思わずそう叫んでいた。
思わず叫んでしまった俺のステータスは、とんでもない事になっていた。
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とある国のとある街のとある屋敷
「御主人様、竜神領域の件を命じていた者からの連絡が一切ございませんが、宜しかったのでしょうか?非才の私で宜しければ、確認に行かせていただきますが?」
背中から小さく、黒い蝙蝠の様な羽を生やした、綺麗なストレートの銀髪のメイド服を着た、15,6才位の少女が自らの主に問い掛けていた。
「その必要は無い。竜共の素材が手に入ろうと、入らなかろうと、どちらでも構わないし、竜共がドラゴンゾンビ成ろうが成るまいが、それすら私には、どうでも良い事だから捨て置け。そんな事をする位なら紫茶でも淹れてくれ」
メイドの主は、そう言いつつ目線をメイドから目の前にある、空になったカップに移した。
「畏まりました。只今お淹れ致します」
主にそう言われると、メイドの方も、竜達の事を頭の中から消し去り、主の為にお茶を淹れる事にした。