第十二話
皆さん、明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いします。
※2016年元旦 硬貨の種類を増やしました。
第十二話
俺は今、馬車の荷台に乗せてもらいながら辺りをボ~と見ていた。
一応護衛として同行させてもらっているので、スキルの【危機感知】、【気配感知】を使い、ダメもとで辺りの魔力を探って二日目で【魔力感知】を覚えてしまった。
その後は特に魔物に襲われる事もなく平和な道中であった。
同行を許してくれた行商人さんは名前をタイトさんと言い、年齢は三十代との事であった。
タイトさんは行商人としてはまだまだ駆け出しに分類される程度の者でしかないと笑いながら教えてくれたが、村からしたらなくてはならない人なのでこれはこの人なりの謙遜なのかと思ったら、実際に行商人としてはまだまだだと言われてしまった。
タイトさんが行商人になってまだ十年位だと聞いた時にはビックリしたが、行商人の前は冒険者をしていたらしい。
然し、冒険の最中(依頼の内容は聞いていないよ)におった怪我が元で冒険者を早々に廃業し、行商人になったとの事であった。
行商も冒険者と同じ位と迄はいかないがかなり危険を伴うので大丈夫なのかと聞いたら、冒険者になってまだ経験の浅い冒険者達を経験を積ませるのを口実として格安で雇っているので大丈夫だと笑いながら教えてくれた。
因みに今も荷車の周りを十代と思われる四人の冒険者達が護衛として周囲を警戒していた。
ただ、タイトさんの話ではこの辺りは殆んど魔物が出ないし、山賊の類いも出ないとこそっと教えてくれた。
この辺りは、行商人もあまり通らないので、山賊達も根城を作らないと言うのもあるが、竜の生活圏が近いので寄り付かないのではないかと言っていた。
真実はどうであれ、新米の冒険者にはうってつけのルートであるらしい。
然し、その事は、タイトさんは勿論、うちの村人達も、冒険者ギルド側も、先輩冒険者の人達も皆が黙っていた。
何故なら、その事を新米冒険者達が知ってしまえば周囲を警戒したり、野営等を安全にかつ緊張感を持ってする事が無くなるからである。
この真実を新米冒険者に教えるのは冒険者ギルドの役目であり、その他の者が新米冒険者に教えてしまうのは駄目らしい。
以前、このルートとは別のルートを護衛していた新米冒険者達にうっかりと教えてしまった先輩冒険者がいたそうだが、その事を聞いてしまった新米冒険者達が、周囲の警戒を怠ってしまった為に、偶然他の地域から移動してきていた山賊の一団に襲われて、三人の行商人の内二人が殺されて、生き残った行商人も片腕と片目を失い、片足も不自由になり、護衛をしていた新米冒険者達も、十二人の内十人が殺され、生き残った残り二人も片腕を失ったり、片足を失い冒険者を廃棄してしまったと言う事があったらしい。
その一件が有ってから冒険者ギルドは勝手に新米冒険者達に話してしまう事を禁じたそうだ。
一瞬、タイトさんが冒険者を廃棄したのもそう言うのが原因なのかなと思っていたら、その感情が顔に出ていたらしく、「僕が冒険者を廃棄したのは単純に魔物に襲われた時の怪我が原因で、その時の依頼内容も護衛ではなく、素材の採集依頼だった」と教えてくれた。
今回護衛として雇っている四人の新米冒険者達は、護衛依頼そのものが今回が初めてとの事だったので、今言ったこのルートが安全である事は絶対に言わないようにと釘を刺された。
勿論そんな事を言うつもりは更々(さらさら)無い。
そんな事をしても良い事など何もない。
それどころかそんな事をしたらデメリットしか無いので態々(わざわざ)言うなんて事などしない。
しないったら絶対しない。
そこ!!それってフラグをたてているんじゃないかって疑うんじゃない!!
その後は特にとりたてて取り上げる様な事は無く六日が過ぎていった。
「ジン君、順調に行けば明日には街に着くよ」
タイトさんが夕食を食べ終わってからそう言ってきた。
「タイトさん、ここまでありがとうございました」
俺がタイトさんにお礼を言うと、タイトさんは
「お礼を言ってくれるのは有難いけれど、それはまだ早いよ。お礼は無事に街に、アルスに着いて、アルスの城壁の門の内に入ってからにしてくれないか?」
タイトさんにやんわりと油断をするなと言われた様な気がした。
「そうですね、街に無事着いたらその時に改めてお礼を言わさせてもらいますよ」
「うん、そうしてくれ」
ニッコリと良い笑顔で言われた。
その後、色々と話してからその日は寝むりについた。
翌日、特に特筆すべき事もなく順調にアルスの城壁が見えてきた。
昨日の晩タイトさんから聞いた話だが、これから向かうアルスの街は特徴らしい特徴が無い街であるそうだ。
特に特産品も何も無い極々普通の平凡な街らしい。
強いて特徴を挙げると馬車で一週間程、徒歩で約二週間行けば、竜の棲息域になるが、そこまで離れているのであれば、もうアルスの街の特徴 とは到底言えない。
そうなるとやっぱりアルスの街は特徴らしい特徴の無い街であると言える。
そんな事を思い出しているとアルスの街の城壁が見えてきた。
城壁の高さはおよそ十五m、幅は見えないのでわからないが、それでもかなり頑丈そうだった。
一応魔物等に備えているのだろうと思われる。
これもタイトさんに聞いた話だが、街に入るなら、城壁にある入り口の門で衛兵さんからの質問に答えたり、身分証の提示をしたり、犯罪の有無をチェックされるそうだ。
質問に対して嘘を言えば魔道具の水晶玉に反応が出るようになっているそうだ。
質問に対して本当の事を言えば水晶玉が青く光り、嘘を言えば水晶玉が赤く光るのだそうだ。
そして街に入るなら、身分証を持っているのであれば、税金として一人頭銀貨一枚、身分証を持っていなければ金貨一枚かかる。
税金を払えない場合は街に入れないか、衛兵さんの監視がつくが領主への借金扱いにしてもらう事も出来るそうだが、タイトさんはそれを勧めなかった。
後は、お金の代わりに物納と言う方法もあると言っていた。
因みにこの世界のお金だが、全ての国で同じ硬貨が使われている。
使われている硬貨の単位はシンで、一シンが一円位である。
そして、硬貨は次のような種類がある。
石貨・木貨…………1シン
大石貨・大木貨……5シン
鉄貨…………………10シン
大鉄貨………………50シン
鋼貨…………………100シン
大鋼貨………………500シン
銅貨…………………1,000シン
大銅貨………………5,000シン
銀貨…………………10,000シン
大銀貨………………50,000シン
金貨…………………100,000シン
大金貨………………500,000シン
白金貨………………1,000,000シン
大白金貨……………5,000,000シン
光貨…………………10,000,000シン
大光貨………………50,000,000シン
虹貨…………………100,000,000シン
大虹貨………………500,000,000シン
石貨と木貨、大石貨と大木貨はそれぞれ同じ硬貨である。
国が変わると硬貨の呼び方が変わるだけらしい。
理由としては、石貨と木貨の素材としてダマスカス鉱を使用しているのが原因らしい。
タイトさんの話では、白金貨以上の硬貨は大商人や貴族、もしくは国が使用するらしい。
後で知った事だが、一流の冒険者達も収入的には使用する事が出来るが、単純に店側がお釣りを用意出来ないので使えないだけらしい。
そんな事を思い出しているうちに城壁の門の前に着いた。
さぁ、いよいよ街の中に入って冒険者登録だ
すみません。
まだ街の中にすら入れませんでした。