第十一話
第十一話
俺は今、近くの街へ向かう行商人の馬車に同乗させてもらっている。
何故こうなっているかと言うと、今から一ヶ月位前に遡る事になる。
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俺は村長に言われた一週間後に、村長宅へとやって来た。
「ジン君来てもらって早速だが、君の処遇が正式に決まったと言うか、恐らく君の両親からこの一週間の間にある程度は言われているかも知れないが、正式に儂の口から発表させてもらおう」
確かに俺への処遇がどういったものになるかはある程度両親から聞かされていた。
と言うか、両親から説教されていた時にも言われていた事だが、あの段階ではまだ正式な処遇ではなく、村の一部の大人達しか知らない状態だったのを、正式に処遇を決めてそれを村全体へ知らせる事になったと言う話だ。
この一週間は、大人達から子供達へは細かいところはボカして教えていたり、村全体へは広めていないでくれたみたいだった。
「端的に言うと、一ヶ月後位に村に行商にやって来る行商人と一緒に近くの街迄行ってもらう、つまり、村からの追放処分にするか、初代竜神様の領域で、百年間の領域守護のどちらかをしてもらう事となった。」
思っていたものより重い?
「先ず、村からの追放処分だが、ジン君はずっと冒険者に成りたいと言っていたみたいだしそれが早まったと思ってくれたら良いし、他の仕事を探して好きな職に就いてもらってかまわない。追放期間も百年位で大丈夫だ、それよりも早くに村へ帰って来るつもりなら一流の冒険者に成れば言い訳は出来るだろう。要するに、追放処分と言う名の独り立ちだな。こちらを選ぶなら街に入る時に必要な身分証は作っておこう。身分証の賞罰欄には何の賞罰も記載されないのでそれは安心してくれて良い。もう一つの方の領域守護は、今はある程度戦闘が出来る者達が交替で行っているが、それをジン君一人でやってもらう事になる。一応、初代竜神様の隣に領域を持っている他の竜神様が大部分を守護して下さっているからそれ程大変では無いと思うがどちらにする?」
要するにどっちを選んでもほとぼりがさめるまで村には居るなって事だな。
普通の人族なら一生涯となるが、村に住んでいる者からすると大した期間では無いな。
重いと思ったが、そう考えると意外に軽いのか?
元々(もともと)俺の予定では十五歳になってから村を出て、冒険者になるつもりだったし、それが三年早まったと思えば良いのか。
ただ、一週間前から今日までずっと両親に冒険者のイロハを叩き込まれていたのでスキルの習熟や確認がまるで出来ていないのがネックだが、それは街に着いてからにしよう。
行商人が来る迄の一ヶ月も両親から色々と冒険者や村の外の事を聞いておきたいしそんな感じになるだろう。
それに、その間に親孝行もしておきたいしな…。
そこ!!これは両親が死んでしまうフラグじゃ無いからな!!俺は日本にいる両親の事も今の両親の事も大切にしたいだけだからな!!まぁ日本の両親にはもう親孝行出来ないがな。
それどころか、日本の両親からしたら親よりも早死にしてしまった親不孝者になってしまっているから余計に今の両親の事は大切にしたいだけだからな!!この前、両親との約束を破ったのは両親が許してくれた今でも俺は未だに後悔しているんだからな!!
ゴホン!!話が脱線してしまったな元に戻そう。
領域の方も心配だが、他の竜神様や村の大人達に任せても大丈夫みたいだしそっちは置いておこう。
と言う事は、俺にとっては二択ではなく名目上の追放処分一択だな。
「………ジン君、ジン君大丈夫か?ボーとしていたみたいだが聞いていたのかな?重い処分になってしまって申し訳ないが村の禁止事項を新たに作る事になってしまったのでこれ以上軽くする事は後々(のちのち)の事を考えると無理だった。個人としてはまだまだ子供の君を一人にしてしまうのは反対だったが、儂はあくまでも村長として今回の処分を決断させてもらった。儂の事を恨んでくれて構わん。だが、村の事は恨まんでくれ」
俺が頭の中で考え事をしているのを今回の処遇に対して不満に思っていると勘違いした村長がそんな風に言ってきた。
「ああ、村長違います。考え事をしていただけです。別に村長の事も村の事も恨んでなんかいませんよ。確かに両親別れるのは辛いですが、今回自分でした事の重要性は理解していますし、両親との約束を破った事以外は後悔していません。今回の処遇も妥当だと思います。それを恨むなんて筋違いだと思います。だから余り気にし過ぎないで下さい」
俺は村長にそう言って詫びた。
どうやら俺が考え事に没頭している間に追放処分にしろ、領域守護にしろ俺一人だけの事なので、両親が着いて来る事が駄目である事等を説明しているところを聞き逃していたみたいだった。
その後、俺は村長に細かな内容を確認してからほとぼりが冷めるまで村から出て行く方を選ぶ事を告げて自宅へと帰った。
帰ってから早速両親に自分が村から出て行く方を選んだ事を告げて、残り一ヶ月で出来る事の打合せ等をした。
両親からしても百年は余り気にならない年数だった見たいで特に年数の事には触れなかったが、冒険者になってからの注意事項を何度も何度も言われた。
そして一ヶ月経って、村に行商人が来た時に村長から身分証を受け取った後、俺は両親としばらく別れる事についての挨拶をして、村長は行商人と所に行って、俺を近くの街迄同行させる様に話していた。
一瞬、「えっ、今から交渉するの?」と思ったが、どうやら村から同行する人が増える事は多々有るらしく、更に村から同行する者は近くの街迄の間に出てくる魔物や動物位なら倒せる位の実力が有るのは分かっているし、お金も掛からない、食料も村から出ているので、食料すらいらない護衛が増える事になるので断る事が無いらしかった。
ただ、今回は同行する村人が子供の俺だけだったので本当に大丈夫なのかの確認等をしていたみたいだった。
そして、食料についても本来は村から出してもらう予定であったが、それは俺の方から辞退していた。
一応村からの追放処分扱いになっているので、その相手に食料を村から出すのは駄目だろうと言って納得してもらった。
村長は食料に関しては最後まで村から出すと言ってくれていて、それをおれが固辞し続けていると村長個人から出そうと言い出したので、
それも何とか止めてもらった。
そして、行商人と村との取引が全て終わってから俺も同行させてもらって出発した。
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俺が村を出発した日の夜。
蝋燭の灯りに灯されたジンの自宅の食卓にて。
「二人ともすまん。二人からジン君を取り上げる様なかたちになってしまったな」
「村長、そんなに謝らないで下さい。ジンが出て行く事は分かっていた事です。あいつはもっと小さい頃から冒険者になると言っていましたからこうなる事は私も妻も予想していましたから…」
「そうですよ村長、余り気にし過ぎると禿げますよ」
暗くなりそうな場を少しでも明るくしようと放った一言はその後も村長の心の中に残るのであった。
勘違いをおこしてもらうと困るので注意しておくが、村長はまだフサフサである。
「村長、それにあいつは俺達の子供ですよ、そんなに柔じゃ無いですよ。その内一流の冒険者になると言う条件をクリアして里帰りしてきますよ。俺も妻もそう思っていますし、そうなってもおかしくない位に鍛えて来ましたから」
「そう言ってもらえると助かる。しかし、今後の事を考えるとまだまだ安心は出来んがな」
「そうですね、まさか魔族が初代竜神様達に攻撃をしてくるだけではなくこんな事になってしまうとは…」
「今のところはその後の干渉は無いがまだまだ油断は出来んからな。お主らも本当はジン君と共に行きたかったであろうに、本当にすまなかった」
「村長、その事はもう済んだ事ですからもう謝らないで下さい。それに餞別も渡して有りますし、実は念話の登録もさせてあるので、向こうからの連絡なら出来ますから」
「何度謝っても謝り過ぎると言う事は無いわ、あの時念話にて許可を出したのは他でもない儂じゃからな」
「あの時ここまでの事になるなんて誰も予想は出来なかったのですから仕方がないですよ。それよりも、今後の事を考えましょう」
そう言ってジンの両親と村長は今後の事を話し合っていった。
主人公とその両親との感覚や感情の微妙な違いはわざとですので余り気にしないで下さい。
村長が、主人公の両親とだけ相談していたのはあくまでも主人公の処遇について謝りに行ったついでなだけであるので気にし過ぎないで下さい。
スキルの念話についてはまた後の話で出てくる予定ですので疑問に思った方はもう暫しお待ち下さい。