表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

似て非なる海人くんたちの話(なぜ続いたし)

作者: 漣 涼人

続いちゃいました。


 海美は14歳のクールな少女である。胸はまだ無い。彼女はショッピングが人並みに好きなのだ。

「いってきます」

森を抜けて買い物に出掛けるのが好き。

「いってらー」

今日、邸にいるのは彼女と哀音、メールと白雪の四人だった。邸に必ず12人いるわけではない。個人が好きなときに好きなように過ごす。邸はメールの持ち物なのだが……。

彼女が哀音からのお見送りを受けて外に出ると、見知らぬ少女が立っていた。

 誰かの面影を残す幼い顔立ち。紫色の瞳。橙色で左わけの前髪、漆黒のツインテールの後ろ髪。海美より身長が高く、胸もある。まるで青春漫画やアニメのヒロインみたいだった。

「あなた、この邸の人?」

爽やかな女の子の声だ。

「そうですが?」

「哀音の妹か何か?」

「違います。あと哀音なら中に居ますけど、何かご用ですか?」

「ちょっとね…」

するとドアが勝手に開いて白雪が顔を覗かせてきた。

「え…哀音?」

少女が少し引いている。

「白雪です!君が…あやめちゃんだね!」

白雪はニコニコと突然の来客に挨拶を交わす。少女――あやめは戸惑いながらも、白雪の笑顔につられていった。

「じゃあ、買い物に行きたいんだけど…」

海美が言う。白雪は止めずに手を振ってくれた。

 今日の来客はこれで二人目である。一人目はメールのお客さん。彼の時空に住んでいた修道士。その美しい姿と声、すべてを包み込む優しさをもち、まわりからは聖女だと持て囃されたらしい。白いロングドレスにはたくさんの十字架。ルビィのような赤く長い髪。翡翠のような深緑の瞳。

「あら、お客さん?」

メールに不釣り合いな美しい聖女は言った。

「ああ。今日は哀音の彼女が来るって言ってたな…」居場所は邸の二階。日が当たって過ごしやすい部屋で二人、アフタヌーンティーを楽しんでいた。玄関が丸見えの場所で、しっかりとあやめの姿が確認できた。

「彼女によく似てる」

“彼”とメールの物語。それはそれは悲しい運命をたどっていった。

 聖女はあの日、少女の求婚を断り、我が儘な彼女によって磔刑にされる。

「君もまた、聖書に出てきた彼と同じく十字架につけられて光栄だろう?」

最後に聞いた言葉だった。

メールは名前を変え、森の奥の邸に閉じ込められる。親友の処刑にも行けず一人、邸で泣くこと以外できなかった。磔刑にされた彼は亡霊となり、森をさまよい続ける。そんな物語を背負った二人がこうして幸せな時間を過ごせるのはこの世界の素晴らしいところだろう。

 無駄話が過ぎてしまった。彼らの現実へ戻ろう。

 「別の時空の彼女と他の男との子供…だったかな。あやめっていうらしい」

「会いに行ってみたいな…」

「別の時空のその男は、君の弟らしい。君も素晴らしい女性と結婚して、彼女の伯父にあたるから、伯父さんって呼ばれるぞ?」

少し焦っているのか、メールの話し方が速い。

「別に気にしないんだけど」

「ダメだ!!」

突然立ち上がるメール。机を叩いたので、カップがカタカタと震えていた。一瞬だけ二人の間に沈黙がおこる。メールは自我を取り戻したらしく、

「……すまない」

と言った。

「じゃあ、行ってみよう!」

性別がわからない姿の聖女の手は小さい。本当に自分と同じ性別、年齢なのだろうか。メールはそう感じていた。


「僕の姫は今日も死んでいるだろうか」

青い王子服を着た少年が言う。漆黒の髪、前髪は左わけ後ろ髪はひとつに縛ってある。鮮血の赤の瞳。物騒なことを言うのは白雪姫の王子さま。それが彼だ。方向音痴の彼が関わってくるのはまた別のお話。

「それで、哀音はどこなんですか?」

あやめが訊く。

「逃げたよ」

答えたのは、白雪でもメールでもなく、聖女だった。

「お、伯父さん?」

「違う。彼は聖女だ」

メールの言葉にあやめが困ったような顔を浮かべた。

「あ、君は初めてだったね!」

白雪が続ける。

「この空間には俺たちに関する人物、物なら何でも行き来するんだ。俺たち一人の物語を時空といってね…それを飛び越えられる空間なのさ♪」

「簡潔に言えば、パラレルワールドを全部一緒にした感じ」

聖女の言葉にあやめは「なるほど」と指をパチンと鳴らしながら言った。

「しっかし…大きな邸ね…家よりは小さいけど」

「愛蔵の家?」

「紅の家よ」

「そっか」

メールは一瞬悲しそうな目をした。

それがわかったのは聖女だけだ。

もうすぐ海美が帰ってくるだろう。

優しい彼女のことだ、こちらのためにお茶菓子を買ってくる。

そのあとに子供たちを迎え入れて、あやめにこの世界を知ってもらわねば。

白雪の待ち人はいつ来るのだろうか。

続きはまたの話に。

海美の話で哀音の彼女が出てきたのに別のお話がでしゃばってる!!おかしい!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ