8/8
#8『化け物』
黒いソイツの真っ赤な目からは涙が流れていた。
「アナタ…ヒトリニ……シナイ………デ…」
「く、来るなっ!化け物!」
「…ッ!!」
急に化け物はうずくまり、嗚咽をもらした。
その隙に俺は化け物の横を走り抜け、どこかも分からない部屋に逃げ込んだ。
「はぁ…はぁ…いろは…大丈夫か?」
抱きかかえていたいろはを床に降ろしながら聞いた。
「…うん」
「どうした…?」
「おとーさん、ひどいよ…おかーさんにあんなこと言うなんて」
化け物。俺は確かに言った。
「でも、アレはもう愛子じゃないだろ!」
「姿は変わっても心はおかーさんなんだよ!おとーさんのくせにおかーさんだってことが分からないの!?」
いろはは、泣きながら部屋を出て行ってしまった。
「おい!いろは!」
俺の言葉は届かず、いろははどこかへ行ってしまった。
* * *
「また……おかしくなっちゃうんだ…おかーさんも私も…」
私は、自分の部屋の隅に座りながら呟いた。
「もう、繰り返したくないよ…おとーさん……」