表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/69

転校生来たる!.5


「あれあれェ……もしかして、二人はもうお友達? 

 ああッ、さすがは“霧ヶ島中学の良心”と呼ばれるキョウスケくん!

 道に不慣れな転校生に、さては親切にしてあげたなあ。このこのォ!

 まったくいつの間に……見かけによらず、転校初日に手が早いんだから」


「キョウスケは、絶対そんなことしないから!」



 ムッとしたミーナは、キョウスケと少女を見比べて、

 ニヤニヤしっぱなしのアサギを睨みつける。



「そんなに妬かない、妬かない。

 ただの親切でやったのよねー、キョウスケくん? それで……

 二人の()()めは? 

 この島で、ロマンティックな場所って言ったらどこかしらー♪」


「アサギッ! あんた、イイ加減にしなさいよッ!」

「おお恐い。ジョーダンよ、足立さん。ホント、ジョーダンだから」

 


 それで? と噂好きの女教師はまったく懲りず、

 そこに佇む美少女に好奇な眼差しを向け続けるのだった。





 今、キョウスケの前に居る少女――

 霧ヶ島中学校の制服を着た彼女は間違いなく、

 あの時の『銀の少女』だった――



「はあ……本当に綺麗だよ、ミーナちゃん。

 まるで、物語のお姫様みたいだよォ」


 夢見心地に呟いたのはマキだ。

 彼女はうっとりとして、

 遠い異国の血を引く少女の、整った顔立ちをずっと見上げていた。



「先生」

「ハ、ハイッ!」



 危険を察したようだ。

 アサギは“銀の少女”の声に、過敏に反応する。

「ごごご、ごめんなさいッ! さすがに調子に乗り過ぎましたァァ」

「自己紹介、してもよろしいでしょうか、アサギ先生?」

「ももも、モチロン! ささッ、張り切ってドーゾ!」



 銀の少女がチョークを手に、黒板へ向かう。

 そして流れるように『草守レイト』と記す。



「くさ、くさ……おいキョウスケッ、あれは一体なんて読むんだ?」

「かみ、です。草守(くさかみ)レイト。珍しい名字でしょう?」



 キョウスケの耳元で、こっそり囁いたヤストラの声は、

 はっきりと銀の少女の耳まで届いたらしい。



「草守さん……“レイト”って名前も、とっても素敵。

 女の子なのに男の子っぽくて、まるで物語に出て来る騎士様みたい……」



 すっかり自分の世界に浸っているマキは、

 憧れの視線を“銀の少女”に注いでいる。彼女が愛読する

 少女漫画のヒロインに、どうやら似ているところがあるようだ。

 それを横目にするミーナの表情は、より険しくなる一方だ。



「あらあら、すっかりクラスのマドンナね。じゃあ、自己紹介はそれぐらいで、そろそろ一時限目の授業を始めまーす。草守さんは席に着いて――」



 その広い教室には、

 四つの机と椅子と、古びた教卓があるばかりだ。



「はあ私ったら……草守さんの机と椅子、運び入れるの忘れてた」


 

 アサギは大げさにガックリと肩を落とすと、

 「机とか持って来る」と言い残して、とぼとぼ歩き出した。



「お、俺が行くよアサギ! 

 ほら彼女、ずっとそこに立ってなきゃいけないじゃん。

 それってすっごく気まずいだろ?」



 その提案を聞いたアサギは、驚いたようにヤストラを見ていた。

 それから見る見る満面の笑顔になると彼女は何度も頷いて、

 精一杯の感謝の意をヤストラに示していた。



「じゃあヤストラくんが来るまで、草守(くさかみ)さんは、

 彼の席を少し借りちゃいましょう。さあ遠慮しないで。

 どーんと座っちゃって。ヤストラくんのことだから、

 椅子が少し汗ばんでいるかもしれないけれど、その辺は我慢してね」




 そして銀の少女は、すっと傍を通り過ぎて、

 ごく自然にキョウスケの隣に座った。




 柔らかな風が吹き抜ける。

 途端にキョウスケの隣から、嗅いだことのない花の香がした。



「仲良くしてね、キョウスケくん」



 ――ドクン!


 なんと、

 彼女のか細い左肩に“小人”がちょこんと乗っていた……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ