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其の島に伝はる民話
『愛』とか『青春』とか、たくさん入れて、もっと爽やかな話にしたかった(泣)。
なぜ書き始めると、こんなに“おどろおどろしく”なってしまうのでしょう…トホホ。
夜に気配を感じたら、立ち止りなさい。
しかし、そちらを決して振り向いてはいけない。
じっと眼を閉じなさい。
そして、こう言いなさい。
「おとうりなさい」
するとあなたは、傍を通り過ぎる何者かの気配を感じるだろう。
覗いてはいけない。
それは海へと向かって歩く、神様なのだから。
ぞろぞろと続く気配を感じたら、ぎゅっと瞳を閉じなさい。
こちらは粗相があってはならぬ。
こちらは激しい気性の持ち主だ。
「おとうりなさい」
ただ、通り過ぎるのを耐えなさい。
なにごとも無く、通り過ぎるのを彼らに向かって祈りなさい。
それは山へと向かって歩く、神様たちなのだから。
『其の島に伝はる民話』