魔法少女※独白
「はぁ……」
わたしは恭介さんが台所に戻ったのをドア越しに確認すると、溜息を洩らした。
そして制服が皺になるのも厭わず、恭介さんのベットへ腰掛ける。
今日は本当に色々な事があった。
初めてのアレもそうだけど、話に聞いていた彼女の印象が随分違うのにも驚いた。
「人の事は直接ぶつからないと分からない事がある」
いつだったか恭介さんがしたり顔で言っていた言葉を思い出す。
(ふふ……本当ですね)
ドヤ顔なのに全然締まらない彼の顔を思い浮かべ苦笑する。
武藤、恭介さん。
母の連れ子だったわたしを本当の娘の様に愛してくれた。
わたしも彼を本当の父の様に慕っていた。
だが、彼に対するその気持ちが変化していったのはいつのことだろう?
多分ママとの離婚が決まった1年前だ。
あの日、恭介さんとママが別れると告げられた際、わたしの心を奔ったのは悲しみより歓喜だった。
ママの恭介さんじゃない、ただの恭介さんになる。
その時、わたしの奥底に何かが蠢いた。
そしてそれは今も変わらない。
わたしは身体を倒しベットへ身体を預ける。
(恭介さんの匂いがする……)
まるで彼に抱かれているかのような錯覚と、変態じみた自分の行為に赤面しつつも衝動が止められない。
(昔みたいに素直になれたらな……)
小さい時は良かった。
喜怒哀楽、思うがままをストレートに表現できた。
今は駄目だ。
ふとしたことで恥ずかしくなってしまう。
だからわたしに出来るのはクールな装いの仮面をかぶるだけ。
それも徐々に崩れそうになってる。
特にこないだ通い妻みたいだ、と言われた時は一番危なかった。
嬉しさのあまり泣きそうになった……咄嗟に憎まれ口を叩いて切り抜けたけど。
「はぁ……恭介さんの馬鹿……女心が全然分かってないよ……」
普通の娘は別れた父親の御飯を毎日作りに行きません。
鈍感で不器用で……でも大好きな人の顔を思い出し、わたしは涙を浮かべ苦笑した。
せっかく彼が腕を振るって御馳走してくれるんだ。
わたしとしては今の自分に出来る最高の自分で招かれたい。
涙を拭い背徳感を抱きながら枕に口付けを一つすると、わたしはメイクと着替えをすることにした。