魔法少女☆回帰
気が付くと、星空が浮かぶ薄暗くて不思議な空間にいた。
時間も、概念も、全てが曖昧な認識。
霞が掛かった様にボヤける思考。
広大な空間にただ独り。
敵は……いや、救うべき哀れなモノ達はどこにいったのか?
逃げ遅れた他の人々は?
俺の疑問に答える者はいない。
「いや、ここにいるよ?」
掛けられた声に見下ろせば、そこにいるのは見慣れた愛玩生物モドキ。
いつの間にか姿を消し、そして今突如現れたコメットだった。
「ここは……?」
「ここはボクの生まれ故郷、星の国。
根源の渦とか事象の彼方とか色々言われるけど、本質は一緒さ。
即ち因果の発生にて唯我の終点、形あるモノのルーツ」
「……何を言ってるか、よく分からない」
「まあ詳しくは知らなくていい事だよ、スター。
君は自らの責務を果たした。
想定外の事例だったけど、君が終末魔法に至ったのは素晴らしい結末だったよ」
「終末魔法?」
「そう、君は自らの力で一つの世界を『終わらせた』んだ」
「終わらせた?」
「本来の分岐に回帰した、ともいえるね。
飽和し腐ってゆく可能性。
あるべき姿から外れてゆく世界。
いつからかその澱みにも似た侵食は始まっていた。
ボク達は守護者を気取る訳じゃないけど、それを良しとしない存在さ」
「お前は……お前達はいったい何者なんだ?」
「ボク達も実は良く分からないんだ。
ただ定められた因果事象に対する道標、とでも言うべき目的意識はある。
旧神と呼ぶモノもいるけどね。
君は本当によくやったよ。
世界を歪めるモノ達を鎮め、人々を救った。
イレギュラーとはいえ、君を選んだのはボクだ。
ボクとしても鼻が高いよ」
「でも、俺は舞香を守れなかった……」
「そんなことないよ。
彼女は最後まで君に感謝してたよ?」
「だが、それでも生きていて欲しかったんだ!」
コメットの慰めを遮り、俺は魂の叫びを上げる。
その声にコメットは肩を竦めながら応じる。
「ラブリー★パフュームか……彼女こそ一体何者だったんだろうね?」
「……どういう意味だ?」
「武藤舞香に力を与え、パフュームとした存在。
それは一体どのような存在だったのだろう?」
「お前達の仲間……じゃないのか?」
「彼女の力は均衡を旨とする君達魔法少女と似て非なるもの。
寧ろ本質的には向こう側の属性……破壊を主体とするもの」
「何が言いたい?」
「何も。ただ、預かり物を返したくてね」
「預かりもの?」
「そう、彼女から預かったのは闘争に対する対価。
彼女が叶えるべき権利を君に譲渡するという事を頼まれてね」
「それは……舞香の願い?」
「うん。想像にて創造たる願望の欠片さ。
これがあれば、大概の事は叶えられる」
「じゃあ……じゃあ死者の蘇生さえも!?」
「死んだ者は還らない。
それは純然たる世界の法則さ。
ただ……」
「ただ?」
「世界は君の最終魔法で分岐点まで回帰した。
ならば結末をやり直す事は可能だよ」
「ならばすぐにでも」
「ただし! その願いには対価が伴う。
失われた損失は何かで補われる。
それは君の命かもしれない。
それでも君は願うのかい?」
そんな事、聞くまでもない。
俺の返事は決まってる。
「勿論」
「やれやれ……これだから人間は。
フフ……ならば願い給え。
君が望む、あるべき世界の姿を」
「 」
その言葉に世界が輝き……全てが改変されていった。
大変長らくお待たせ致しました。
ご愛顧頂いたシリーズもあと数話で終了になります。
次回が事実上の最終回になります。
どうか最後までお付き合い下さい。
後よろしければ勇者シリーズが継続中なので、こちらも御贔屓に。




