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魔法少女☆旅行(23)

 身内に不幸があったので少し更新が停滞します。すみません。

 トリックアート3館を巡り大分時間が過ぎてしまった。

 俺達は予定を繰り上げ、本日最後に訪れる予定だった那須テディベア・ミュージアムへ向かう。

 那須テディベア・ミュージアムは、姉妹館である伊豆テディベア・ミュージアムが生みだしたテディベア文化の芽を、さらに大きく育てるために世界各国100人のテディベア・アーティストたちのテディベアを展示しているとの事。

 英国のマナーハウスの様な佇まいをした展示館。

 洒落たティーラウンジ。

 だが何より目を惹きつけて離さないのは内部に所狭しと鎮座するテディベア達だろう。

 愛らしい造形。

 心を癒す瞑らな瞳。

 舞香でなくとも口元が緩む。

 その舞香だが……

「はわわ~」

 だの、

「はうー」

 だのを洩らす機械となり店内を歩いている。

(かなり駄目娘となってるな)

 俺は溜息を尽きながら、クールな装いがどこかへ飛んでる舞香に苦笑するのだった。

 だがそんな舞香の足取りが急に止まった。

 疑問を抱いた俺は近くに歩み寄ってみる。

 展示場の一角に設けられた宝飾の工房。

 鮮やかに煌めくアクセサリーの数々。

 その中でも一際目立つ、銀色に輝く指輪に興味を惹かれてるらしい。

「欲しいのか?」

「ふえっ!? いや、そんなわたしは別にそんあsdfghj」

 言葉にならない言い訳で弁解し、両手を振る舞香。

 だがそのゆでだこの様に真っ赤に上気した顔が何よりも雄弁に語っている。

 俺は無言で指輪を取ると会計を済ます。

「ほら、舞香」

 呆然と俺の行動を見ていた舞香だが、慌てて拒否をする。

「そんな恭介さん! そんな高価な品、わたし受け取れません!」

「いつも舞香には世話になってるしな。

 こんなことで本当にお礼になるかどうか分からんが、ささやかな気持ちだ。

 舞香に受け取ってほしい」

「恭介さんの気持ち……?」

「ああ」

「受け取っていいんですか、わたし……?」

「ん。舞香だから受け取ってほしい」

 俺の言葉に頷き手を伸ばす。

 まるで灼熱に触れるかのように恐る恐ると。

 だが躊躇いを打消し、繊手が指輪を握り締める。

 そして舞香はその手を胸に抱いた。

「ありがとうございます、恭介さん……。

 わたし、わたしずっと大事にしますから!」

「そんなにされると俺も照れくさいから」

 手を振り舞香から目線を逸らす。

 純粋な好意って時として暴力的な圧力を持ってると思う。

 だがそんな俺を無視しながら舞香は勢い込んで尋ねてきた。

「あの、あの! さっそくつけてもいいですか!?」

「うん? ああ、どうぞどうぞ」

「じゃあ恭介さんの許可も出たところで……」

 舞香は右手で指輪を摘まむと、綺麗に伸ばされた左手に寄せていく。

 指輪はまるで吸い込まれるように、その薬指へ……ってちょっと待てぃ!

「ちょっ待て、舞香!」

「待ちません。もうつけちゃいました」

 小悪魔っぽく笑い俺に左手を見せる舞香。

 シンプルながらも舞香の誕生石が飾られたその指輪は確かによく似合っていた。

 銀の下地に生えるその蒼色。

 サファイヤ。慈愛と誠実を象徴する、蒼の輝き。

「お前、そこにつける意味を知ってるのか!?」

「さあどうでしょう?」

「絶対知ってるだろ!?」

 焦り近寄る俺から素早く逃れながら舞香は悪戯じみた表情を崩さない。

「わたし子供なので詳しくは知りませ~ん。

 あーあ、でもこれで予約済みになっちゃいました」

「おい予約って!」

「ねえ恭介さん?」

「ん?」

「ちゃ~んと責任、取ってくださいね?」

 蠱惑の眼差しで俺を見詰め、返事を待たず身を翻す。

 まったく女は幾つになっても魔性だ。

 俺は出口へ駆けて行く舞香の嬉しそうな後姿を見送りながら苦笑するしかなかった。


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