魔法少女☆旅行(19)
ハードボイルドよりハーフボイルドな主人公……(はぁ)
大きな音を立てない様、慎重に扉を閉める。
(少し遅くなったな……心配してないといいんだが)
そう思いながらマンションのクローゼット前でジャケットを脱いでいると、
「恭介さん……」
背後から声を掛けられた。
驚き振り返ると、寝室の前にパジャマ姿の舞香の姿があった。
「あ、悪い。起こしちゃったか?」
俺の問いに答えず無言のまま首を振る。
「どうした?」
近付き目線を合わす。
舞香は何か切なげな顔をして涙を浮かべると、勢い良く抱きついてきた。
「まままままま舞香さん!?」
「ごめんなさい。少しだけこのままで」
震える舞香の身体。
華奢な肢体が小動物の様に小刻みに震えてる。
俺は動揺した自分を恥じ、瞬時に落ち着きを取り戻すと舞香の髪を撫で宥める。
「いったいどうしたんだ、舞香。遅くなったのは謝るが、何かあったのか?」
「怖い夢を……見たんです」
「夢?」
「恭介さんが……深い闇に囚われちゃう夢。
わたしの為に懸命に足掻こうとするのに、それを嘲笑うかの様な」
「おいおい。随分ひどいな」
「真剣に聞いて下さい! わたしの夢、昔からよく現実になるんです。
もし恭介さんがあんな風になったら、わたし……わたし……」
胸元に顔をうずめたまま嗚咽を洩らす。
やれやれ。
つい先程摩耶に誓ってきたばかりだというのに、さっそく泣かせてしまっている。
「大丈夫だ、舞香。俺はそんなにヤワじゃない。
俺の好きな言葉はなんだっけ?」
「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない……」
「そうだ。俺はまだまだ未熟だが、そういう自分でありたいと思ってる。
それだけは信じてくれないか?」
「……はい、信じます」
「よし。それじゃ寝よう。もう午前様を越えたぞ」
「でも……まだ寝つけるかどうか……」
「なら添い寝でもしてやるか?」
「ふえっ!?」
「なんだ、変な声を出して。
舞香が小さい時、寝付けない夜は俺が添い寝してやったろ?」
「それはそのぅ~そうですけど……わたしももう年頃ですし……覚悟は必要ですけど……無論嫌ではなく……不束者ですが……(ごにょごにょ)」
「あ。嫌ならやめるぞ」
思春期の少女の心情を鑑みて、小声で呟く舞香に提案する。
そんな俺の言葉に舞香は柳眉をキッ! と逆撫でて、
「お願いします!」
と顔を赤らめながら頭を下げるのだった。




