魔法少女☆旅行(11)
二日目です(はぁ)
スイッチを入れた様に意識が覚醒する。
幼少時から寝起きは良い方だ。
全身の倦怠感を瞬時に振り払い、俺はベットから身を起こした。
「おはよう……ございます……」
背伸びをする俺に隣りのベットの舞香から声を掛けられた。
そちらを見やると、何故かベットの上に体育座りをし、やさぐれた眼で俺を見る舞香の姿があった。
「おはよう、舞香。よく眠れたか?」
「ええ、朝までぐっすりと」
「それは良かった。でも、その割には顔色が優れないみたいだが……もしかして俺の鼾がうるさかったとか?」
「いえ、そんなことはありません」
「ならいいんだが」
「あの……あの、恭介さん!」
いきなり声を張り上げる舞香。
「な、なななんだ?」
「き、昨日の事は……」
「昨日?」
「特に昨夜の事は……忘れてください。お願いします……」
羞恥にモジモジしながら頭を下げる。
「忘れるも何も……美味いしゃぶしゃぶを食べた以外に何かあったか?」
「え?」
「ああ、舞香に酒を勧めたのは俺が悪かったな。すまん」
「いえ、それは別に……わたしも興味ありましたし……」
「その他って何かあったか? どうも酒が入ると記憶が曖昧になるからな」
「……その、わたしが変なことを口走ったり……」
「ん? ああ、車とかでも舞香はよく独り言を言ったりするしな。
特に寝言で「パンツ!」とか叫ばれた時は、どうしていいか分からなかったぞ。
取り敢えず笑って携帯に撮っておいたけど……見るか?」
「見ません! っていうか、わたしに無断でそんな動画を撮ってたんですか!」
「可愛い天使の寝顔だ……我が武藤家の家宝にする。舞香も謹んで承りたまえ」
「いりません、そんな家宝!」
勢いよく投げられた枕は俺の顔面を直撃。
すると見せ掛けて、華麗にターンした俺の背を押すのみ。
「ふははははは! 修行を積みたまえ、舞香君★」
俺はその勢いに身を任せ、シャワーを浴びに部屋を出るのだった。
「もう~恭介さんのバカぁ!
でも……ありがと……」
ドアを閉める時、小さいけど感謝する舞香の声が聞こえたような気がした。




