魔法少女☆弁当
4月に雪とか……(はぁ)
握られた山の上に具材が乗せられ、中身が一瞥できるおにぎり。
鮭、おかか、昆布と種類も豊富だ。
海苔は巻かずに包んで来た為、直前に巻いてパリパリの食感を楽しめるのがいい。
メインとなるのは朝に揚げたであろう唐揚げ。
下味を怠らず前の日からタレに漬け込んで置いたのだろう。
噛む度に肉汁が口内に溢れ、美味さの協奏曲を奏でる。
降りかけるレモンもちゃんと別に用意されていたのもポイントが高い。
俺は自分で適量を搾りたいタイプだ。
付け合せとなるのは出し巻き卵、ポテトサラダ、お浸し。
彩り良く区分けされ、食べる者の視覚を楽しませる。
「どうでしょうか? お口に合いますか?」
フードコーナーに腰掛け、バスケットの中の弁当を俺に勧めながら舞香は不安そうに尋ねてきた。
「絶品だ! うん、舞香はいいお嫁さんになれるよ」
「もう……からかわないで下さい。でも喜んで頂けたようで良かったです」
食欲の命じるまま貪った為、少し噎せ込む俺に、魔法瓶からお茶を差し出しながら応じる舞香。
片手を上げて感謝をしながら、ゆっくりと熱いお茶を飲む。
しかしお嫁さんか……舞香もいつか誰かと結ばれちゃうんだなー(はぁ)
出来るならずっと手元に置いておきたいとは思うが、それは親のエゴだろう。
舞香にはもっと広い世界を見て欲しいし、色々な出会いを経て成長して欲しい。
(でも挨拶に来た男は絶対ぶちのめすがな)
「……どうしたんですか、恭介さん? 突然怖い顔をして」
「いや……いつか舞香もお嫁さんにいくんだな~って思ってさ。
そう思うと少し悲しくなった」
「……まだまだ先の話ですよ」
「そうかな? でも出会った時はあんなに小さかった女の子が、今や中学生だからな。
月日の流れを実感するよ」
丁度始まったフラダンスショーを横目で見つつ、感慨にふける。
色々あったが、最近はやっと舞香とも良い関係を構築できたと思う。
「わたしは……恭介さんと過ごせて本当に幸せでしたよ。
今日もこんなに幸福で……幸せ過ぎて少し怖いくらいです」
「たかがお出掛けくらいで大袈裟な。
舞香が望むなら何処でも連れて行ってやるさ。
海外は……ちょっとボーナスと相談だけど」
「フフ……期待しちゃいますよ?」
「あまり期待しないでくれ」
おどけた様に肩を竦めたその時、
「うわははっはははははははあ!!」
雰囲気をぶち壊す馬鹿笑いがドーム内に響き渡った。
「……舞香、ちょっと席を外していいか?
どうも食べ過ぎたみたいだ」
「奇遇ですね、恭介さん。
わたしも所用が出来たので少し席を外したいんです」
席を立つ俺をすんごく冷めた眼で見やりながら応じる舞香。
(うう……言い訳とはいえ、カッコ悪かったか?)
俺はまだ見ぬ敵に激しい憎悪を抱きながら変身できる場所を求め駆け出した。




