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やっぱり地球は青かった

作者: 鈴木 雅彦

 彼女にふられた。

いや、実際にはふられた気がする、のほうが正しい(と思いたい)。

一昨日まではいつもどおりだった。

むしろ仲が良すぎて周りから見れば『ごちそ〜さまでしたぁ〜、おいしくいただきましたぁ〜』といった具合だったに違いない。

それなのに、昨夜ソファーでテレビを見ていると、突然携帯のメール着信音が鳴り…


『ごめん…距離をおきたいんだけど…』


あぁ、もうこれだから『女心』はわからない。

オセロみたいに表と裏がすぐひっくり返る。

今日は機嫌がいいなぁ、と思ったら、知らない間にムスっとしている。

お前、何枚仮面被ってんだよって聞きたくなる。

怪人二十面相なんか到底かなわない。

その日は、彼女の言うことを、ご主人様に忠実な犬のようにすべて聞き入れ、『ワンっ!!』って泣いてからすぐ寝てしまった。

寝てしまう事で現実から逃げようとしたのかもしれない。


 次の日。朝、陽の光で目を覚ますとそこは後悔のという名の海。

俺は後悔の中を航海する船乗り。波は荒れ狂い、暴風雨の中で前が見えない。

朝なのにお先真っ暗だ。

忘れようとすればするほど湧き出すように思い出す『距離をおきたいんだけど…』の一言。

 

 そもそも『距離』ってなんだ。人と人との『距離』。物理的な距離ではないことくらい当然わかっている。遠距離恋愛でもうまくいっている人たちもいるし、同じ屋根の下に住んでいるのに会話の無い夫婦もいる。

遠距離恋愛世界記録はどのくらい離れているのだろう。日本とブラジルくらい離れているのだろうか。時差にも負けず眠い目をこすりながら愛し合っているのだろうか。


 それに比べたら、俺と彼女は目と鼻の先。もちろん時差なんか無い。なのに、気持ちは同じ世界にいるとは思えない。同じ時間を生きていると思えない。彼女がロケットに乗って星一個分くらいぶっ飛んでいったみたいだ。果たして彼女のロケットは帰りの燃料を積んでいるのだろうか?

 宇宙にいってしまったのなら、燃料の切れた俺はもう待っているしかない。地球で彼女の帰りを待っているしかない。もし帰ってきたら聞いてやろう。


『なぁ…地球はどんな感じに見えた?やっぱり青かった?』



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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の考え方がとても面白くて、楽しく読めました。着眼点が素敵でした。
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