表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一発逆転  作者: 及出智紀
1/1

濁流

 「打った~!やりましたアベ!一発逆転!ジャイアンツサヨナラゲーム!」

 実況アナが感情ムキ出しで絶叫する。そこには打たれた側の投手、ファンの気持ちなど微塵もない。カズキはテレビに映るサヨナラホームランを打った選手がホームベース上で、楽しそうにみんなにもみくちゃにされるシーンをぼんやり眺めながら、リモコンのオフボタンを押した。

 (一発逆転か・・・)

 ソファーから立ち上がり、テレビ本体の主電源を押すと欠伸が出た。時計を見るとまだ午後10時を過ぎたばかりだが、カズキは寝室へ向かっていた。

 「また明日から仕事か・・・・」

 ワザと声にだしたのは、胸に溜っている暗い気持ちを吐き出したかったからだ。寝室に入ると、ダブルベッドで妻に子供が抱きついて二人で寝息を立てていた。カズキは二人を起こさない様にゆっくりベッドに近づき、そっとシーツの中に入った。

 その夜カズキは夢を見た。昨年、35年ローンで建てた注文住宅が突然襲ってきた洪水で流されるのだ

 。実際には小高い場所に建っているし、海も川も近くに無いのだが、夢はそんな現実はお構い無しだ。家が壊され、妻と今年3歳になる息子が濁流に呑み込まれていく。しかし、カズキ自身はその夢には登場しない。第三者的な目線で、それを眺めているのだ。夢とはそう言うものかもしれない。

目が覚めると既に朝になっていて、妻も子供もベッドにはいなかった。

カズキも、まだ冴えない頭へ必死に気合いを入れて、起き上がりリンビングへ向かった。

ダイニングテーブルの上には既に朝食のパンとコーヒーがあったが、妻と子供はどこかに出掛けたのかいなかった。


 カズキは朝8時に家を出て会社へ向かう。その足取りは重い。

 12年前に大学卒業後、今の会社に入社して、それなりに出世もしてきたが、昨年人事異動になりつまずいた。つまずいたと言うよりは泥沼に嵌ったと言う表現の方が合っているかもしれない。異動した先の上司とうまくやっていけてないのだ。

 異動して1ヶ月程は、カズキも必要以上に気を使っていたのもあり、うまくいっていたが、2ケ月、3ヶ月となると。気疲れもピークになるし、上司のイジメも酷くなっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ