エピローグ
翠華国へ行くゲートがあるロビーは、今日も観光客で賑わっていた。
最近、翠華国の隣の国も観光を受け入れるようになり、一気に観光客が増加したのだ。
私はカウンターの横に立ちながら、参加者リストを確認する。
「エターナルトラベル翠華国ツアーにご参加の皆さん、こちらにお集まりください」
私の声に、ツアー客の皆さんが集まってくる。
初めての人もいれば、リピーターもいる。
あ、木下さん……じゃない、今は大野さん。
今回もご夫婦で参加ね。
木下さんはあれからあの時のカメラ好きの青年、大野さんとお付き合いを始め、今ではご夫婦で翠華国への旅のリピーターになっている。
私ももう何度か行ってるのだけど、毎回リウさんには会えなかった。
そのたびにがっかりした。
異世界観光ツアーは、最近ますます人気が高くなっていた。
まず、ゲートをくぐるだけで行ける気軽さ。飛行機と違い、目的地までの移動時間がほとんどないことも、改めて人気の理由になっている。
そして何より安全管理が徹底されているからだ。
――あの事件のあと、警備体制は大きく見直された。
ゲート付近には王国の魔術師団が常駐するようになり、護衛も増えた。
あの日のことは、公式には「小規模な魔術事故」として処理されたらしい。
もちろんツアー客の皆さんには、何も起きなかったことになっている。
それでも。
私にとっては、忘れられない旅だった。
「それでは皆さん、これから異世界、翠華国へご案内します」
私はそう言って、笑顔を作る。
胸のポケットの中で、小さな石が触れた。
あの時の魔導石。
もうただの石になってしまったけれど、なぜか捨てる気にはなれなかった。
私はそっとポケットの上からそれに触れる。
――また、あの世界に行く。
ゲートの光が静かに揺れている。
「それでは、順番にどうぞ」
ツアー客の皆さんがゲートへ進んでいく。
そして。
最後に、私もその光の中へ足を踏み入れた。
視界が白く染まる。
次の瞬間。
見慣れた広場が、目の前に広がった。
そして――。
「ようこそお越しくださいました」
聞き覚えのある声がした。
そこには。
見覚えのある、真面目すぎる護衛が立っていた。
彼の手には、見覚えのあるハンカチ。
私は思わず笑ってしまう。
「お久しぶりです、リウさん」
彼は、ほんの少しだけ目を細めた。
「ええ」
そして静かに言う。
「また、あなたの旅を守ります」
うん、やっぱり真面目な人だ。
たぶん私はもう一度そんなあなたに会いたかった。
もうちょっと恋愛色強めに出したかったのですが、個人的好みでお仕事色強めになってしまいました……。反省。




