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晩秋にくれた想い


彼と付き合ってから、1週間が経った。まだ夢かもしれないと思ってしまう自分もいる。


そしでどこが黒い影の私もいる。


彼の姿が見れるだけで寒い朝に温もりを感じた。


「おはよう!」

「おはよう、美智也くん」


「美智也くんはどこでお昼ご飯食べたい?屋上にする?それでも校舎裏がいい?」

「今日は屋上がいい!」

「今日は天気いいねもんね」

「ここ最近雨だったもん」


水たまりに一筋の雫が落ちて波紋を広げる。


言葉は無くても、心の叫びがどれだけ彼を思っているのか語っていた。


「ねぇ!」

呼び止められて視線を彼に向ける。少しだけ手がソワソワしている。

「僕と付き合ってくれてありがとう!」


予想外の言葉に何か言わないといけないのに口は震えるだけ、それでも体に迷いはなかった。


そのまま勢いで手を繋ぐ。

「うん!」

幸せは逃げないと分かっていても力を想いの分だけこめてしまう。


朝日と彼の笑顔が重なって、視界が滲んで見えにくくなってしまう。


学校に着くと少しだけ違和感を感じる。

「あ、晶華の席あそこだよ」

指を差した先は一番右後ろの席であった。


「席替えしたんだ…」


先生が教室に入ってくると、ざわめきも次第に無くなっていく。


足を何度も組み直して目線は定まらない。そんな私に隣の席の人が心配そうに耳打ちする。

「大丈夫?ずっとソワソワしてるけど…」

「あ…ごめんなさい…大丈夫だよ」


ただ隣の席が彼では無いだけなのに少し気持ちが落ち着かない。


一つ席の向こうにいる彼はどんな表情をしているのかな。


まるで永遠の距離が空いたように感じてしまう私

そんな事気にしないで隣の席の人と仲良くする彼


些細な違いが大きな違いにならないように願う。


私の黒い影がどんどん光を飲み込んでいく。


お昼休み私はいつも通り屋上に向かう。少しだけ頭が痛いような気がしたが気にしないようにした。


この小さい不安が隣の彼にバレたくない。無理してでも笑うつもりだ。


「やっぱり屋上は開放感あるよね…」

「校舎裏と違っていい景色だからね!」


「今日もお弁当作ってきたよ」

「えへへ…ありがとう」


彼の美味しそうにお弁当を頬張る姿を見ながら食べるご飯が一番美味しい。


「美智也くんは苦手な食べ物とか好きな食べ物ある?」

「揚げ物かな…あとは生魚とか…さっぱりした物が好き」

「意外…そっか…分かった…」


次は唐揚げを入れないでおこう。なるべく野菜とか入れるようにしよう。


「無理にしなくて食べなくてよかったのに…」

「でも君が作るものなら大歓迎だよ!」


空き箱のお弁当を見ながらそっと呟く。


「ありがとう…」

「ごちそうさま!すっごく美味しかったよ!」


そっと弁当箱を片付けて私は彼の膝に頭を乗せる。彼は少しだけビクッとして私の頭を撫でる。


鮮やかなそよ風になびかれて髪型が崩れる。


「いきなりは…びっくりした…」

「恋人だから、いいでしょ」

「そうだけど……」


一生このままでいたいな。でも時間がそれを許さなかった。チャイムが鳴り昼休みの終わりを告げた。

「教室戻ろっか…」

「うん…でも……もう少しこのまま…いい?」


彼は少し迷って口を開いた

「いつまでもこのままでいいよ」

彼はやっぱり、私の予想を超えてくる。


授業開始のチャイムなんて、聞こえなかった。それ以上に私の心音がうるさかった。それか耳鳴りのせいかもしれない。


その後生徒指導の先生に厳重に叱られたのは放課後の空き教室でのことだった。


「疲れた…まぁ…僕達が悪かったけど…」

「ワガママいってごめんなさい…」

「違うよ!それに…楽しかったしさ!」

「優しすぎるよ…怒ったっていいのに…」

「でも…」


いつもの帰り道なのに少しだけ足元はふらついていた。呼吸も荒くなっている気がする。

「また明日…」

「うん!また明日!」


家に着いた途端床に力なく倒れてしまう。思い通りに体が動かせない。


這いつくばりながら自分の部屋に入る。寝れば良くなる。そう思い込んでベッドに横たわる。


一向に体調が良くなる事は無かった。

それでも楠さんからのメールを見て少しだけ元気になった。

耳鳴りだけが私の頭に入ってきた。

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