ただいま (過去編)
新しい朝日のおはように私は目を覚める。
今日は清々しいとは言えない、それでも彼に会って話がしたかった。早く自分に素直になりたかったから。
あのアルバムを見たら思い出してしまった。彼は私が悲しくても楽しくても側にいた。もちろん美智也くんも大切な人だ。
それでも私は――
海沿いの公園に白鷺くんと待ち合わせする。
今だけ夏の暑さが私たちを歓迎していた。波の音色が子守唄のように聞こえる。
私は白いワンピースに身を包み赤い髪飾りを付けている。正反対な姿に彼はどんな表情をするのだろうか。
「ごめんね。待ったかな」
彼はふとした瞬間に現れる。当たり前でありきたりそんな関係だった。それでもこの感情を抑えるには彼に会うしかなかった。
付き纏う言葉を私はそっと口ずさむ
「会いたかったよ…」
彼はニコッと笑って優しくあの頃のように手を握ってくれた。
「昔ここでよく遊んでたね…」
彼は思い出を噛みしめるように公園を眺めている。
「白鷺くん………私の事を覚えてたんだ」
彼は頷く
「君は当たり前だけどそうじゃない。気づけば隣にいる。それが当たり前だった。離れていても君を見つけ出せるよ。大切な人だから」
彼の言葉に私は顔を真っ赤に染める
「いきなりそんな事言われたら…どうしたらいいか…わからないよ…」
少し沈黙してから私は言葉を切り出す
「私も…白鷺くんが…大切だよ…」
まず見渡せれるタワーの展望台に向かった。少し大人びていた彼もこの絶景を見て子供のように気持ちが高まっているように見える。
そんな姿を見てしまうと笑顔が絶えることが無くなる。昔の彼も今の彼も愛おしく想っている。
「大きい船だ」
彼が指を差した先には巨大なフェリーが停泊していた。
彼は昔から船が大好きだった。理由は自由に海を旅できるかららしい。
なんでだろう。いつもよりニコニコしてしまう。彼に変だと思われてないかな。
タワーから出ると少し気持ちが落ち着いてきた。
「お腹空いた」
「なら私が作ったお弁当食べよっか」
「え?本当?!やった!」
彼の無邪気な笑顔が私の心に突き刺さる。なんでこんなに状態になるまで気づかなかったのだろうか。私の気持ちに。
この日に私は全ての関係に答えを出す。長年の壁をを壊すために。自分の棘を完全に浄化させる。
「美味しいね」
彼のモグモグ食べる姿も可愛くてつい何度も見てしまう。
「良かった…」
サンドイッチを作るのは初めてだったから少し不安だった。
昼食を終えて向かった先はこじんまりとした遊園地だった。
私は浮かれていた。それでも彼が私の左手を握ってくれている。地につかなくても支えてくれる人がいる。
「観覧車乗りたい」
「いいね、乗ろっか」
私は隣に座っている彼にそっと身を預けた。彼は少し驚いた様子だった。それでも受け止めてくれた。優しく頭を撫でてくれた。
新しい希望を持つことを彼は許してくれた。
「ねぇ…心配事ある?」
「大丈夫……大丈夫だよ…」
ぎゅと二度と離れないように彼に抱きついた。
気づけば夕方だった。夏の日差しも少し弱まっていた。それでも私の想いは溢れ出すばかりだった。
隣を歩く彼が夕日に照らされている。隣に私がいる。それが昔から私の理想だったかもしれない。
「そろそろ疲れただろうし帰る?」
手を詰めて手を絡める。
「もう少しだけ一緒にいさせて」
そよ風が私と彼をそっと包み込んだ
「……ふふ…アハハ…うん!いいよ!いつまでも一緒にいたいよ」
そして気づけば日も暮れていた。公園のベンチに座ってただ空を見つめていると
「花火!」
彼は突然大きな声を出した。彼の見つめる先を見ると大きな花火が空に咲いていた。
「今日は花火大会だったね!」
「そうだったんだ…知らなかった」
夕方ぐらいから人集りが出来てきたのはそれが理由だったのか
散っていく花火と星空がまるで私の心を見透かしているように早くしろと急かしてくる。
それでもこれだけは言っていいのか分からなかった。
私の心臓は花火の音すらかき消すようにドキドキしていた。
「綺麗…」
彼がそう呟いたとき私の心は限界だった。
そっと彼の手を取る。
「あの…」
「どうしたの?」
私は何度も心の中で練習をしていたはずなのにいざ言おうとなると声に出せなくなる。
最後の花火が空に上がったとき私は言った
「好きだよ」
誰にも言ってない。私の初めての言葉。私は彼の表情を見るのが怖くて下を向いてしまう。
そして最後の花火が空を彩った時彼が言った
「僕も君が好きだよ」
花火の余韻が辺りを支配するはずなのに。私はそんな雰囲気などどうでも良かった。
少し驚いていたが私は勢いよく言葉を続ける。
「私と付き合ってください!」
これが私の全ての心の叫びだった。彼は最高の笑みを浮かべて言う
「喜んで」
なによりも熱い抱擁を交わして私は初めて人と感情をつながれた気がした。大切な人はすぐ側にいてくれた。
告白の余韻が残っている中、これは夢なのではないかと思いながら家に入ると家族が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
真っ先にお姉ちゃんが抱きついてきた。
「もう!こんなに遅くなるなら電話ぐらいしてよ!心配したんだから…でもおかえり…無事で良かった」
私は意外と色んな人に大切にされてたんだな。きっといつかこの笑顔は忘れられる。それでも永遠に消えるものではない
「ただいま」
これが私の幸せへの第一歩だった




