天使の梯子 (過去編)
早朝に家を出た。それは彼女達に会うために。私は暑い公園でただ待っている。
セミの鳴き声が夏が来たことを知らせている。でもそんな事はどうでも良かった。
気づけばセミの声すら聞こえなくなった。
この世界はなんでこんなにも残酷なのだろうか。ようやく集まった星がそれほど憎いのか。
彼女達が公園に来て沢山話をした。
まず一つ驚いた事がある。椛さんの転校先が私と同じ学校だった事。椛さんの想い人である彼も同じ学校だ。そして楠さんと椛さんは違う学校になること。
そっか。椛さんは一人にならない。けど楠さんは違う。
「そんな…私は晶華ともっと一緒にいたい…」
楠さんはその場で泣き崩れる。
暑い夏に出会いと別れが交差する。私はただ泣いている楠さんの隣にいるしか出来なかった。気の利く言葉もあのときは思いつかなかった
いつの間にか日暮れが暗い海に沈んでいた。私のちっぽけな涙を海に委ねる。静寂が返ってくるだけなのは分かりきったことなのに、彼女の痛みが毒のように体を巡る。
何も出来ない無力な私が大嫌い。美智也くんはどんな反応をするのだろうか。でも病院でしか会ってないし覚えてる可能性はないと思う。
そっと砂浜に座る。ザラザラした感触が今だけ心地よく感じる。
「何してんの?」
「え…白鷺くん?」
「なんで泣いてるの?悩みでもあるの?」
彼は正座して隣に座る。私は少し俯いて口を開く
「ねぇ…椛晶華さん知ってる?」
「なんか…美智也が言ってたような…」
私は思わず彼との距離を詰める
「どんな事?幼稚園とか小学校の時の事言ってた?」
「それは知らないけど……病院で優しい人達に会ったとか聞いたよ」
私は今までの出来事を彼に説明する。小学校まで一緒だったけど、中学校で彼が転校して離れ離れになった事。そして事故に遭って彼が記憶喪失になった事。全て嘘を隠さずに話した。
彼は目を見開いて驚きを隠せていない。
「え?まじて……知らなかった…つまり…椛さんはずっと美智也の事が好きだけど美智也はそれを忘れてるって事?」
「まぁ…そんな所だね…」
「俺も協力するよ。絶対美智也が記憶を思い出させるから!」
彼の言葉が一つの言葉になってとても頼もしく感じる。
「あ!そういえば俺達さ幼馴染らしいよ」
「へ?あ…」
衝撃の事実に言葉が出ない。完全に頭はフリーズして何も考えられない。
彼はそう言って立ち去った。引き留めることすら出来ないほど私は驚いていた。
数分間その場から動けなかった。
私は空白の家に帰る。最近はお姉ちゃんは塾で親も仕事で忙しい。
昔が懐かしく感じる。あんなに騒がしかった家も一人消えるだけでこんなに寂しく感じる事を知った。
暗闇に包まれた部屋に入って電気も付けずに押し入れの中にあるアルバムを探す。
アルバムらしき物を見つけて私は電気をつけて集合写真を見る。
幼稚園、小学校、中学校。私の隣にはどんな時も彼がいた。
なんで、私は彼を忘れてしまったのだろうか。近くにこんなに大切な人がいたのに。
彼とちゃんと話さないと。
今日はよく眠れる気がした。
この度は投稿ミスをしてしまい申し訳ございません
本来は1月15日の六時、七時に予約投稿する予定であった2話分に一部不自然なシーンが見受けられたため修正を行っておりました。しかしながら、投稿していたことに気づかず、読者の皆様にご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。今後はこのようなことがないよう、十分留意して取り組んでまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。




